1.はじめに

 以前No.56で「らじおくん」を紹介しました。これはAMでしたが、今回は写真1のようなFMバージョンを紹介します。初心者用のキットには違いありませんが、AMは周波数が低くストレートラジオでした。FMは周波数が高くなりますので、技術的には何段階も難しいものになります。しかし、難しいものを簡単に作らせるのがキットで、エレキットは特に入門向けに重点が置かれているようです。

 FMらじおくんはスーパーヘテロダインになりますが、ICを2個使った簡単なキットに仕上げています。それでも感度は普通のFMラジオと同等でしょう。

photo

写真1. AMの「らじおくん」と同じスタイルの「FMらじおくん」です

2.このラジオについて

 写真2がこのキットです。内部の部品は写真3のようになっています。No.56で紹介したAMの「らじおくん」はストレートラジオでした。この「FMらじおくん」は、スーパー受信機になっています。2つの理由があり、FM放送は周波数が76〜92MHzと高いため、ストレート受信機は困難になります。また、周波数変調のためAMと比べて復調が難しく、一度中間周波数に下げてから復調するのが一般的です。従ってICを使ったスーパー受信機とするのが、一番作りやすい方法となります。使っているICはAMの「らじおくん」と同じLA1800です。元々AM/FM兼用のICですから、AMの場合にはAMの回路を使い、FMの場合にはFMの回路を使っているのです。可能な限り簡略化し、作りやすくしているように思います。

 スピーカを鳴らすアンプはTA7368Pで、AMの「らじおくん」と同じICです。

photo

写真2. このようなパッケージです

photo

写真3. 部品の様子です

3.製作

 AMの「らじおくん」の場合には、印刷した紙に部品が貼り付けられていました。このFMの場合にはプラスチックのトレーに収容されており、印刷がありませんので自分で読み取る必要があります。ちょっと迷ったのが47Ωでした。普通は「黄紫黒」とカラーコードが並びます。ところがどうしても、「黄茶黒」しか見つかりません。41Ωなどという妙な値は、普通は使いませんし、部品表にもありません。テスターで測ってみるとこれが47Ωで、カラーコードの印刷の加減のようです。無理に紫と読もうとしても茶色にしか見えないのですが、実は紫と読むようです。もう少し迷わない抵抗が望ましいのですが、注意して下さい。

 基板は写真4のようになっています。製作は簡単です。取説のとおり抵抗からハンダ付けします。ICは方向がありますので、注意して入れます。LA1800についてはピンが2列ですので、ピンの幅を少し調整する必要があります。特にピン間が狭いICですので、慣れないと手こずるかもしれません。力ずくで入れようとせずに、丁寧に扱います。ICのハンダ付けは指で押さえながら、中央付近を一ヶ所だけチョンと仮ハンダします。その後で、端の方からハンダ付けをして行きます。仮付けをするようになると、工作もスムースに進みます。

photo

写真4. プリント基板のハンダ面になります

電解コンデンサは極性がありますから、プラス側に長い足を入れます。部品の数はAMのらじおくんよりも、多少は多くなっています。写真5,6がICまで取り付けたところです。

photo

写真5. 取説どおりにICまで取り付けたところです

photo

写真6. そのハンダ面です

 ボリューム、スピーカ、ポリバリコン等を取り付けたところが写真7,8になります。ボリュームは基板への固定を兼用しますので、ガッチリと余分にハンダを流し込む感じでハンダ付けをします。

photo

写真7. 概ね部品の取り付けを終わったところです

photo

写真8. スピーカはこのように取り付けます

4.調整

 スーパーラジオでは調整が必要です。このキットは、初めての方でも問題ないように、アンテナの同調回路が省略されています。取説の図にある位置にトリマーを回せば良いようになっており、実際には調整と言えるものではありません。これで受信する周波数を決めている事になります。本来の調整は同調回路との連携を合わせるトラッキング調整が必要なのですが、なるほど、確かにFM放送の受信には必要はないかもしれません。

 調整次第ではTVの音声も聞こえるのかも知れませんが、地方では放送がないので試せませんでした。アナログ放送もあと一年で終了しますので、聞けてもあまり意味はありません。

5.使用感

 使用感というよりも製作感ですが、FMはAMに比べて作るのが難しいのが一般的な考えです。ところが、それをいかに簡単に作るか、確実に作るか、という努力の結果がこのキットかと思います。昔のキットでは有り得ない簡単な構造ですし、簡単に作れます。だから対象年齢が10歳以上となっているのでしょう。ちなみに30年以上前、私が18歳の頃に作ったFMチューナーのキットは全く動きませんでした。原因は今となっては不明ですが、6石ラジオより遥かに複雑だったように思います。

 らじおくんは、最近では貴重な教材キットとも言えます。AMもFMも「らじおくん」には末永いキットであって欲しいと願っています。例えICが枯渇するような事があっても、他のICに変身して復活させて下さい。