1.はじめに

 測れる周波数は低いのですが、デジタルオシロもキットで作れる時代になりました。使い道などは全く考えず、ただ「面白そう」と思って作った写真1のような秋月電子のキットを紹介します。遊ぶにしては4800円のキットですのでちょっと高いのですが、技術的興味の湧いて来るものです。

 思えば随分前にはLEDを100個くらいを並べたオシロのキットがありました。さすがにこれは作りませんでしたが、こんなオシロが作れるようになったのかと関心した記憶があります。それから考えると技術も進歩したものです。

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写真1. このようなLCDを使ったオシロスコープです

2.構成

 入力信号をオペアンプで増幅し、CPUのAVRに入力します。AVRでA/D変換を行いLCDに表示するだけのものです。ほとんどがソフトで処理されますので、アナログオシロと違って帰引回路とかの概念はありません。そういえば、オシロという名前もおかしいような気もします・・

 とにかく、CPUと表示用LCDからなる構成で、他は制御用のスイッチ等の周辺部品です。LCDは128×64ドットのグラフィックタイプのものを用いて表示します。普通のパソコンのLCDに比べるようなものではありませんし、更に細かくしたいところですが、なかなか見やすい画面です。

3.作成

 このキットにはSMD部品、つまり表面実装部品を予めハンダ付けしてあるタイプと、ICも自分でハンダするキットの2種類があります。私は自分でハンダ付けする安い方の4800円のタイプにしました。ちなみに取付け済みのキットは5700円です。しかし、全部ハンダ付けしようと気合を入れて購入したのですが、CPUのATmega64だけはハンダ付けしてありました。ちょっと拍子抜けです。最近はこのような表面実装のキットも多くなって来ましたので、ぜひチャレンジしてみて下さい。私もあまり上手ではありませんが、無事に取り付けできました。

 一応キットには基板を利用したケース?も付いていますので、他に必要とする部品は何もありません。組み立てに必要なのは工具類だけとなります。電源と電源コードは用意する必要があります。写真2がキットに入っている部品になります。

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写真2. キットを開けた段階です

 最初の設計では±がフリーになるように、全波整流用のダイオードが入っていたようです。逆接防止用のダイオード1個に変更となり、ジャンパーもありますので注意が必要です。取説は全て英文ですが、秋月のWEB上に和訳の説明もあります。但し、お世辞にも立派な取説とは言えませんので、和訳を見ても・・という気もします。先々を自分で考えながら作らないと、基板の反対側に部品を付けてしまう事になりそうです。

 組み立てが進んで気が付きましたが、実装しない欠番となる抵抗やコンデンサがいくつかあります。間違いやすいので注意が必要です。チップのコンデンサと抵抗類は写真3のように紙に貼られていますので、見つけ難いことはありません。但しセロテープでベタっと貼られていて外し難いので、飛ばさないように慎重に作業します。無くした場合には予備の部品はありません。そのような時には、強引にリード線付きの部品にしてしまえば動くはずです。ちょっと見栄えには問題がありますが、周波数的にもチップ部品である理由はありません。

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写真3. チップ部品はセロテープで止められています

 フラットパッケージのIC、チップ抵抗、チップコンデンサの取り付けから始め、コネクタ、スイッチ類の取り付けを行います。基板を3枚並べてケースにするような構造になっていますので、仮組を何回か行いながら組み立てました。写真4は基板ができたところです。写真5がその反対側になります。

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写真4. 基板完成したところです

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写真5. その反対側はLCDとタクトスイッチが付きます

 写真6がケースを組み立てているところです。もう一枚を上から被せて完成です。ところが、パネル側のネジを締めるとタクトスイッチの動きが渋くなってしまいました。どうもカラーが少しだけ短いようで、ネジの締め付けによって基板上の部品が何かと接触して反ってしまうようです。カラーにスプリングワッシャーを入れる事で少しだけかさ上げをしたところ、全く問題なくなりました。チャチそうと思って組み立て始めたのですが、完成してみるとしっかりしている感じです。

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写真6. LCDを取付けてタクトスイッチにカバーを付けたところです

4.使用してみて

 慣れないとボタンの意味が良く解らず、なかなか思ったようには設定できません。電源をOFF/ONしても、直前の設定に戻るだけでリセットしません。解りにくいのですがひとつずつ操作して行き、慣れる必要があります。何も見ずに操作を始めると袋小路に迷い込みます。

 写真7が1kHzのサイン波を見たところです。このようなオシロとしては優れたものと思います。なかなか上手に表示するものだと関心してしまいました。

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写真7. 1kHzを見ていますが、ギザギザに表示するのは仕方ありません

 ボタンを長押しすると周波数カウンタのモードになったりします。ソフトの詰め込み過ぎ、という気がしなくもありませんが、なかなか楽しめたキットでした。操作が解り難い面は確かですが、機能が多いためですので仕方ないのでしょう。下段のボタン3個はトリガー関係、中段は画面関係と覚えれば良さそうです。また、取説にない隠しコマンドが出てきますが、とても把握できなければ説明もできません。EXITの位置がコマンド毎に異なるようで、その度に探してしまいます。

 パネル面には「9V DC」と表示してあるのですが、取説では「9〜12V DC」で、図面では「9〜12V AC or DC」となっています。この一貫性の無さは何なんだ!と思ってしまいます。9VのDCでもレギュレータICが、かなり熱を持ちます。ハンディタイプですので、手に触れる事があり熱いです。レギュレータICで5Vを作るほかに、±8.5Vを作ってオペアンプの電源としていますので、最低でも9Vくらいは必要なのでしょう。

 少し試しただけなのですが、ボタンの表示が擦れてきました。本格的に使うとすぐに完全消滅しそうです。

5.おわりに

 このようなキットですので、単3を並べて動かせるようにハードが作られていると良いのですが、入力は電源コネクタのみとなっています。強引に電池を付けても、今度は電源スイッチをどうしようとなってしまい、結局バッテリー駆動は考えていない作り方です。屋外で使えると、使い道が増えるので残念です。

 何に使うのか、全く考えずに作り始めたキットですが、新しい発見があったり、結構面白いキットでした。今度はこのような、グラフィックLCDのソフトも作ってみたくなりました。