1.はじめに

 JK1AFI大和田さんにQSYして頂いた、写真1のような14MHzのDC受信機キットを紹介します。サトー電気のキットで、以前はいろいろな周波数のキットがあったようです。最近ではWEBで見ると7MHzのキットだけになっていますが、周波数が変わっても回路は同様のようです。ですから、7MHzのキットと読んで頂ければ良いかと思います。

 なお、基板キットですので、キットの他にケースやツマミ類を別に集める必要があります。

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写真1. このようなDC受信機です

2.構成

 3SK114Yの高周波アンプを通した後で、NE612で検波します。NE612では14MHzのLC発振も兼ねており、これとミックスを行うことで14MHzの信号を一気にオーディオ周波数に変換します。この信号をオペアンプの4558でアンプとLPFを行い、TA7368Pでスピーカを鳴らします。DC受信機としては極めてオーソドックスで、安心感のある構成です。

 DC受信機ですので、ビート音が上側と下側の両方で聞こえてしまいます。また感度は良いのですが、AGCが無いため信号の強弱がそのまま音量となって現れます。クリスタルフィルタなどの狭帯域フィルタが使えず、オーディオ段でのフィルタとなってしまいます。従って切れの良いフィルタはあまり期待できません。これらは方式上止むを得ないところです。

3.作成

 写真2がキットを開けたところです。VR3個やコイルの線材も入っています。VRの配線用に3色の線材とアンテナの配線用に1.5D2Vまで入っています。

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写真2. キットに入っている部品です

 製作する上で一番のネックになるのが、コイル巻きではないでしょうか。発振コイルはT25-6に23回巻きします。このようなトロイダルコアに巻くコツは、巻き数との兼ね合いを考えながら、線の間隔を「狭め」に「固め」に規定数を巻いた後で、全体の形を整えながら間隔を広げます。そして写真3は巻き始めと終わりをマジックハンダで固定したところです。逆に狭くしながら整えようとすると、しまりのない緩んだコイルになってしまいます。

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写真3. コイルを巻いてマジックハンダで固定したところです

 仕上げには写真4のように高周波ワニスを塗りました。数十年ぶりに探し出したもので、少々固まり気味ですが問題なく使えそうです。ところで、このコアに23回巻きするには20〜30cmのワイヤーがあれば十分ですが、何個も巻けるだけのワイヤーが入っていました。他のコイルはFCZコイルを使っていますので、ハンダ付けをするだけです。

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写真4. 高周波ワニスを塗って乾燥しているところです

 写真5が基板に部品を取り付けたところです。部品数は結構ありますし、ちょっと図面が見にくいのですが、半日程度もあれば基板は完成するかと思います。写真6が、そのハンダ側になります。

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写真5. 基板の完成です

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写真6. そのハンダ面です

 写真7は基板が完成し、バラック配線で動作を確認しているところです。自分で設計した怪しい回路では必須事項ですが、キットですのでパスしても大丈夫です。この状態でSGを入力してみると、どうも周波数が低いほうにずれているようです。トリマーコンデンサを抜いて一番高い周波数にしても13.7〜14.1MHz位になります。ケースに入れる前ですので、「ざっと」としてケースの加工に入りました。

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写真7. このように接続して動作確認をしました

 ケースはリードのPS-1を用いてみました。基板が入るギリギリの大きさで、VRも3個まででしょう。電源は006Pをホルダーを使って、ケースの裏側に取付けました。スピーカを前面に出すスペースは全くありませんので、下側に付ける事にしました。写真8が穴あけをしたところです。パネルの表示にはパソコンを用いて、写真9のようなシールを作りました。テプラ等のテープワープロでも良いのですが、VR等の目盛を作るにはパソコンを使うのが一番良いと思います。これを貼ってVRの軸に合わせてカッターで穴を開けたところが写真10になります。逆にシールを貼ってから穴あけをする方が良いのかもしれません。全ての部品を取付けたのが写真11になります。このように、内部は余裕がありません。

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写真8. ケースに穴あけをしたところです

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写真9. パソコンを使ってパネル面のシールを作りました

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写真10. 貼り付けてカッターで穴を開けるとケースの完成です

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写真11. 基板を固定して配線も済んだところです

4.調整

 前述により周波数を再度チェックすると13.7〜14.115MHzとなりました。VRの回転する270度のうち、半分以上がアマチュアバンド外というのでは面白くありません。そこでC17を変更する事も考えたのですが、全バンドをカバーしても角度あたりの変化が大きくなり過ぎてしまい、使い難くなるように思いました。そこで図1のように、VRと直列に120kΩを入れて変化幅を少なく、下限だけを上げるようにしました。これで13.995〜14.115MHzをカバーするようになり、これで良しとしました。もちろん問題が無ければ変更する必要はありません。C17を小さくしたり、L4の巻き数を増やす方法もあります。

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図1. このように抵抗を追加して周波数を調整しました(※クリックすると画像が拡大します。)

 FCZ14のコイル2個は感度が最大となるように調整します。基本的にはこのコイル2個とトリマーの調整だけで済むはずです。

5.使用感

 使ったスピーカが小型のため、ちょっとピーキーな音になってしまいました。あまりに大きいケースも使い難いので仕方ないところですが、もう少し大きいスピーカにすべきでした。せっかくLPFが入っているのですが、効いているようには聞こえません。

 VRを使ってチューニングしますので、メカ的には簡単にできる利点がありますが、バンドを広くとり過ぎると使い難くなる事もあります。安定度も感度も良く、キットとしては完成度の高いものです。