1.はじめに

 最近になって知ったのですが、私の住む那須塩原市にスズキデザインという、部品の販売やキットを作っている会社があります。このような地方でも、部品が購入できるのはありがたい事です。WEBサイト(http://www.bbweb-arena.com/users/suzudes/photo1/photomaster/)もありますのでアクセスしてみて下さい。このスズキデザインで、マイクアンプのユニットを見つけました。単なるアンプではなく、VUメータとLEDによるレベル表示をダブルで行う事ができる、なかなか面白いユニットです。

 このマイクアンプのユニットを用い、スタンバイ回路を追加して写真1のようなスタンドマイクにまとめましたので紹介します。

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写真1. 自作らしい雰囲気のスタンドマイクです。

2.マイクアンプのユニットについて

 前述のスズキデザインで見つけた、写真2のようなユニットです。キットで売れば良いのにと思ったのですが、キットではなかなか売れない上に後々のケアが大変のため、完成基板として売っているそうです。アンプの完成基板にVU表示のラジケータとコンデンサマイクが付いて980円とでした。なお、上記のWEBサイトには出ていませんので、メール等で問い合わせてみて下さい。

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写真2. 写すのを忘れたので既にケース内ですが、このようなマイクアンプのユニットになります。

 本来は基板では販売していないそうですが、特別に基板を一枚購入させて頂きました。これが写真3です。私は失敗しましたが、「キットで作りたい」と交渉すると特別にキットになるかもしれません。ラジケータも立派なものですので、高いものではありません。

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写真3. 基板です。普通は販売してないようです。

 図1がスズキデザインさんから頂いた、ユニットの回路図になります。回路の説明については、コメントを貰っていますので、以下に紹介します。

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図1. スズキデザインさん作成の説明用の図面です。(※クリックすると画像が拡大します。)

(1)マイクノイズ軽減回路

 ノイズ対策にはこだわった回路です。コンデンサマイクに9Vくらいかけているものも良く見受けられますが、一般的に2〜3Vが耐圧限度です。

(2)1/2Vcc回路

 OPAMPに仮想GNDを生成しています。358の使っていない方の+INをGNDへ接地してしますが、KIT基板では5ピンとパラにして空き端子処理しています。

(3)D1

 逆接防止用のダイオードです。

(4)D2

 マイク用のVcc(2〜3V)を作っているZDですが、若干大きめのVfをもった緑のLEDで代用出来ます。

(5)C1

 電源入力のためのリプル平滑コンデンサです。

(6)C3

 無極性1μ電解か、0.22μくらいのセラコンなどがお勧めです。

(7)C6

 アンプとして100Hz以下も増幅するように最初は47μでしたが、ポップ音(息などの風を)増幅してしまったので、4.7μか、2.2μ程度にして低域カットオフを上げました。そうでないと無線機には向きません。

(8)C10(ラジケータの両端)

 6.3Vの47〜100μF程度を加えると、動きが滑らかになります。無くても可です。キットには入っていません。

(9)R7、R8

 GAIN設定用抵抗です。現在22000/470=約47倍しています。お好みに応じて増減して下さい。

(10)R11

 LEDのぱらぱらノイズが減って、マイクアンプに飛び込むことが少なくなるので入れた方が良いのではないかと考えます。KIT基板には入っていません。

(11)R12

 メーターの感度が大きく変わった場合は調整する必要が出て来るので、自分で回路を組む場合は5k半固定+1kの抵抗くらいがベストです。

(12)LB1423

 メーカー回路図と同じ感じです。別段変わったところが有りません。7番端子が低インピーダンスエミッタフォロワになっているのを利用して、400μAのラジケーターを同時駆動しています。

(13)電源

 5V程度から動きますが、メーター駆動系で少し電圧が有った方が良いので8〜9V程度あると理想です。14Vくらいまでは問題有りません。

 無線機のマイクGNDとつながるため、無線機の8V系や12Vの同一電源を接続すると誘導を起こす場合が考えられます。無線機家、数人にこのKITを渡しましたが特に問題は起っていない模様です。電源GNDを無線機内部から取った場合、電源コード外側のGNDから取るよりも安定するようです。例外的場合も考えられます。

3.振れの検証について

 アナログのメータは速い変化に追従できず、平均値的な表示となります。そのかわり人間の感覚に近くなりますので、違和感なく見る事ができます。LED表示は速い変化に対応できますので、歪の発生を抑えたいような用途には便利です。そこで、試しに写真4のようにバースト信号用のSGでAF信号の断続を入れてみました。メータの表示は写真5のようになります。アナログのVUメータとLEDの表示状態は表1のようになりました。これは1kHzの連続信号を入力し、アナログVUメータは90%程度の位置、つまり+4.5に合わせました。この時LEDは全部点灯するレベルになります。その後に断続信号を入力して試験したものです。アナログのVUメータでは、短い信号は振れる前に終わってしまうので、低く表示します。また、機械的に振らせますのでオーバーシュートもあり、アンダーシュート(正しい表現か?)もします。従って振動する時間も長く、立上がりも立下がりも安定するまで700msもかかっています。振動は無視しても、それらしき値になるには100ms程度の幅が必要です。10ms以下の信号には全く追従できません。それに対してLEDは速く、3ms程度でもほぼ追従できています。もちろん、振動するような不安定な時間はありません。普通に話すと解りませんが、特性の相違を考え両方の表示をそのまま使っています。なお、実験に使ったバースト信号用SGは、今後この場で紹介させて頂くつもりです。

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写真4. AFのバースト信号を作り(これもバラックですが)、振れ具合を比較してみました。

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写真5. メータの様子です。

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表1. AFの断続信号を入れた時の表示状態です。(※クリックすると画像が拡大します。)

 これはザックリの測定で、入力レベルが変われば様子も違ってきます。また周波数によっても振れ具合は変わりますので、単なる参考として考えて下さい。VUメータによっても変わりますが、LEDでの点灯が早いという事だけは不変でしょう。

 また前述のように、ラジケータの両端にC10を取付けると、振動する時間が短くなるはずです。

4.全体の回路

 購入したのは図1のようなユニットになっていますが、全体の回路としてはスタンバイ回路を設け、図2のようにしました。マイクに接続する部分については使用するトランシーバによりますので、合わせて作って下さい。コンデンサマイクも付属のものを使っています。

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図2. スタンドマイクの回路として書き直しました。(※クリックすると画像が拡大します。)

 マイクアンプ用の電源は、外部から取る事にしました。といっても結果的にトランシーバと同じ電源になる事もあるため、モロモロのトラブルを防止する事を考え、内部に8Vのレギュレータを入れました。回路説明のとおり、8Vにする必要はないのですが、入れておきなくなるというのは習性でしょうか。

 考えてしまうのは、PTTを押下した時にマイクアンプの電源を入れるのか、それとも常時入れておくのかです。私はあまり深く考えずに、常時入れておく事にしました。この方がテストがやりやすいかと思っただけです。

 VUメータは、R12,C10を調整する事で、振れ具合も変わってきます。恐らく何が「正しい」のか、とフィーリングとの間でベストの値を探るのかと思いますが、簡単には結論は出ないでしょう。

5.作成

 このようなスタンドマイクにした場合、マイクをどのように取付けるかがデザイン的な課題になります。ちょっと前までは、専用のフレキシブルマイクなどが入手できたのですが、最近ではジャンクで見かける程度のようです。そこで、何らかの工夫が必要になりますので、同軸の外皮を使い、内部にスズメッキ線とシールド線を通し、片方にイヤホンプラグ、もう一方にマイクを取り付けました。写真6がこれらの材料です。写真7〜12が組み立ての順序になります。マイクのカバーにはヘッドホンのプラグの外側だけを使ってカバーにしてみました。その上にヘッドホンステレオの耳あてを被せてみました。

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写真6. マイクの材料です。大小イヤホンプラグ、3C2Vの外皮、スズメッキ線、それにヘッドホンステレオの耳あてです。

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写真7. プラグ(大)はマイクのカバーにしますので、本来のプラグ部分は使いません。コンデンサマイクをシールド線にハンダ付けして3C2Vの外皮を被せます。

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写真8. プラグ(小)はスズメッキ線とシールド線をハンダ付けし、3C2Vの外皮に入れます。スズメッキ線はカーブの形を整えるためです。

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写真9. このままではプラグ大のカバーがガタガタ動いてしまいます。適当な位置で紐を縛って出過ぎないようにします。

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写真10. 逆に戻り過ぎないように縛ります。

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写真11. これで、このようなマイクができました。

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写真12. 更にヘッドホンステレオ用の耳あてスポンジを被せてみました。無くても大丈夫です。他に何か代用できるものは無いでしょうか?

 ケースにはタカチのYM-100を使用しました。写真13が穴あけをしたところです。写真14が組み立てているところです。部品を取付ける時に保護用のビニールは剥がしましたが、ケースにキズをつけないように、写真15のように養生のテープを貼っています。写真16は配線が終了したところです。また、茶色系のアクリルを窓に貼り付けて、表示を見やすくしました。マイクを付けて写真17のように出来上がりです。

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写真13. ケースに穴あけした状態です。

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写真14. 配線を始めているところです。

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写真15. 工作中にはいつも養生を考えましょう。

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写真16. 内部の配線が終わったところです。ワイヤーの引き回しがありますので、ほとんど余裕が無くなってしまいました。

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写真17. これで完成です。

6.使用感

 普通に話している時には、ラジケータとLEDとの違いはまず解りません。試しに手を叩いてみると、明らかにLEDの方が振れる事が解ります。このように地味ですが、結構面白いスタンドマイクができました。

 今回はスタンドマイクにまとめましたが、コンプレッサやLINEレベルの調整VRなどと組み合わせるのも面白いかと思います。わざわざ別電源が必要というのがネックだ、とスズキデザインでも話していましたが、電源を使う事によって可能になる事もありますし、アイデアはいくらでも出てきます。