エレクトロニクス工作室
No.76 LM386アンプ
1.はじめに
今まで数多くの自作品を作りました。そして、このBEACONや雑誌で紹介して来ました。目立たないのですが縁の下の力持ちとして地味に活躍し、これらの作品を支えてきたツールを紹介します。写真1のようなLM386を使ったアンプで、トランシーバーや受信機の実験回路を組んだときに、AF出力以降を一手に請け負うという便利で頼りになるツールです。今までの自作品は、このようなツールが支えていました。
写真1. このようなLM386を使った実験用のアンプです。
電池を内蔵していますので、クリップで入力を入れるだけて音を聞くことができます。簡単で良いのですが、欠点としては実験中の回路と電源が別になるため、本来は出て来て欲しいトラブルが隠れてしまう事があります。つまり、LM386の消費電流によって発生する電圧変動が、どのように他の回路に影響を与えるかが解りません。これは最初から解っている欠点ですので、承知の上で実験に使って下さい。
なお、ここで言うLM386とは、もちろんNJM386、JRC386等のセカンドソースを含めています。どのICを使用しても基本的には同じですが、本家よりもNJMの方が性能が良いというウワサを聞いた事があります。真偽のほどは解りません。
2.回路
図1に回路を示します。特に珍しいものではありません。電源には006Pを用いています。以前に作ったものですのでLM386を使っていますが、これからであればTA7368P等にするのも良いかと思います。いずれにしても、これから先の自作を考えてICの選定すれば良いと思います。TA7368Pを使うなら、図2のような回路になるでしょう。この場合なら単3乾電池2本を使うと良いでしょう。
図1. LM386を使った回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)
図2. TA7368Pならこのような回路になるでしょう。(※クリックすると画像が拡大します。)
現代的に考えるなら、PC用のスピーカーを用いる方法もあります。そうするとアンプもそのまま流用してしまえば、このようなアンプを自作する必要もありません。ただ、実際に無線機等に使うのと同じICを使って確認するという目的の一つができませんが、音さえ出ればOKと考えるならそれも良いかと思います。ちなみに、私は音に対しては鈍感ですので、耳の良い方の意見は当然違うと思います。
このあたりはポリシーですので、何が良くて何が悪いということはありません。自由な発想で作成して下さい。
3.製作
まずはスピーカー付きのボックスを探して下さい。私のはかなり昔のモービル用の外部スピーカーを利用しています。実験用ですので、あまりに小型のスピーカーにすると音質がチェックできないかもしれません。HiFiにする必要はないとしても、普通に使っている以上のスピーカーを使っておけば間違いないでしょう。また、電池を納める必要がありますので、写真2のように裏面に電池ホルダーを固定させるスペースがあると作りやすくなります。このようなツールですので、電池はケースは交換しやすい裏面に取付けるのが一番です。丸まった形状のスピーカーボックスでは取り付かない事もありますので、単純な形状の方が工作的には楽です。あるいは100均で小型のボックスを探しても良いでしょう。
写真2. 電池ホルダーは裏面が一番です。
入力に端子を用いる方法もありますが、使う時に別にクリップを用意する手間がかかります。スペース的にも無駄になると考えて、ワニ口クリップを直結しています。考え方ですので、使う方が使いやすい入力方法を選んで下さい。
内部は写真3のようになっています。基板は以前も紹介したことがあるのですが、モービルハム誌に書いた記事のVR一体型アンプの基板です。LM386の基板をVRの端子に直結したものです。10年以上前の記事ですが、今でもこの基板は残っていて使っています。スペースに余裕が無いわけではないので、ジャノメ基板でも何でも良いと思います。サイテック(http://sug.dip.jp:8080/tokushima/cytec/)でこのアイデアを使った基板がありますので、問い合わせてみて下さい。
写真3. 全く珍しくも何ともありませんが、内部の様子です。
4.テスト
無線機の類ではないので、調整等は一切ありません。試しにAF発振器の出力でもモニターできればテストは完璧です。入力するものが何もないと困ってしまいますが、クリップを手で触ってみるとブーンというハム音がしますので確認し、VRで音量が調整できれば問題ないでしょう。
歪等についてはオシロスコープで波形を確認してみて下さい。いずれにしても、自作品の音質を担うツールですので、問題点があったりしては良くありません。
5.使用感
いつもお世話になっているツールで、自作には欠かせなくなっています。実は机の上から落とした事があります。ゴンと音がして、その後鳴らなくなってしまいました。ところが聞こえる場合もありました。内部を見るとスピーカーの磁石が外れており、磁石の転がった位置が良いと音が出るようでした。固定は無理と判断し、別のスピーカーに交換しています。そのためスピーカーにべっとりと接着剤が付いています。その位に使い込んでいるアンプです。
試作段階の最初にはこのようなツールを使い、最終的にはAFのアンプまで実験回路を組み立てるのが良いかと思います。省略してしまい、後でボリュームを上げると発振するというトラブルには、何度も遭っています。いずれにしても便利に使っているアンプです。
6.終わりに
極めて地味なアンプの紹介でした。自作をしていると、このような試験用のツールやユニットはとても便利で、気が付くと山のように作ってしまっています。同じようなアンプを自作されているOM諸氏も多いことかと思います。