1.はじめに

 今までDDSの制御のためにCPUを使い、表示にはLCDを使って来ました。このLCDはキャラクタタイプのLCDで、基本的には文字を表示するものです。塗り潰した四角を並べてグラフィックらしく使う事も出来ますが、そこまでが限界です。

 この先、特性の曲線や、スミスチャートとかの様々なものを表現しようとすると、写真1のようなグラフィックタイプのLCDを使う必要があります。もちろんフォントを設定して、大きい文字も小さい文字も表示する事ができます。

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写真1. このような128×64ビットのグラフィックLCDです。

 そこで、写真2のようなグラフィックLCDのテスト用のボードを作成し、ソフトやハードの基本的な実験ができるようにしました。もちろん、このままでは何も動きません。ブレッドボードで使うジャンパーピン等で配線を行い、更にCPUにソフトを入れる必要があります。CPUにはAVRを使っていますが、もちろんPICでも何でも発想は同じかと思います。この形にすると、グラフィックLCD+α程度の物が実験しやすくなります。

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写真2. 作成したテスト用ボードで、ジャンパーピンで配線をします。

 写真3は他のテストボードに付けることを前提に作った、簡易型です。DDSとかロータリーエンコーダが絡んで来ると、このような簡易型をNo.2で紹介したようなテストボードに付加する形式の方が使いやすくなります。

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写真3. 簡易型です。ジャンパーピンを切って直付けしてしまいました。

2.作成

 グラフィックLCDには秋月電子で購入した、SG12864を使用しました。基本的にはCPUとグラフィックLCDとだけです。他に単3ニッケル水素4本用の電池ホルダーと電源スイッチ、ISP用端子とクリスタルオシレータです。CPUはピン数の多い60ピンのタイプとしました。グラフィックLCDは、データが8ピンと制御用が6ピンで、合わせて14ピンが必要となりますので、入出力の少ないタイプのCPUでは使い難くなります。実験の制約が少ないように、とりあえず40ピンのソケットを設けています。

 写真2のようにCPUのソケット周辺を端子で囲み、接続が簡単にできるようにしています。そのため、特に配線というほどのものはありませんが、図1のようになっています。実際に実験する場合にはジャンパーピンで接続を行います。

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図1.写真2と比べて下さい。このように配線できるように端子を作っています。(※クリックすると画像が拡大します。)

 工作はアルミ板上に、LCDユニットとCPU用ジャノメ基板を載せているだけです。使っているLCDは4.5〜5.5Vが使用範囲です。単3×4本の電池ボックスで使うのはニッケル水素の専用になります。電圧が高過ぎてしまいますので、乾電池の使用はできません。AVRを使っていますが、ISP用の端子は必需品でしょう。これもジャンパーピンで配線します。

 クロックにはXTOやTCXOを使う事を考え写真4のようにし、ICソケットを利用しました。XTOを抜いてみると写真5になります。正方形でも長方形のものでも、TCXOでも差し込めます。3端子のセラロックでも良かったのですが、ICによって位置が変わると処理が面倒です。とりあえずXTOにしてしまえば、ジャンパーピン1本で済みます。クロックの変更はヒューズビットで簡単に行えますので、実機にする時に変更すれば良い事です。ジャンク箱に転がっているXTOを使って下さい。

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写真4. XTOを使う事を前提にしてみました。この方が実験が楽です。

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写真5. XTOは下にある絵のようにICソケットに入れます。

3.簡易型の作成

 簡易型にはTG12864を使用しました。これもピン番号は共通ですが、ピン間隔が2mmですのでジャノメ基板には使えません。つまり差し替える事はできません。なるべく使いやすいように考え、ユニット内で配線を済ませるようにしています。これが図2になります。ジャンパーピンで他のユニットに接続しますが、中継用に端子を設けました。これは左右が接続されており、中継できるようにしました。

 作成は写真3のとおりで、直接ジャンパーピンをハンダ付けしています。特に説明するようなところはありません。

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図2.写真3の簡易型を図面にしたものです。(※クリックすると画像が拡大します。)

4.使ってみて

 例ですが、図3のようにジャンパーピンで接続します。写真6のようなデータ用に8ピンのジャンパーピンも作成しました。ホットボンドでハンダ部分を固めています。あまり綺麗ではありませんが、ビニールテープよりはマシでしょう。プログラムは、ISP端子からテストプログラムを入れてみました。写真7のようにグラフィックの表示が簡単にできます。

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図3.テストプログラムを動かすように配線をした基本的な接続です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真6. DB0〜7用ジャンパーピンは、一度に配線できるように自作しました。

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写真7. グラフィックを表示してみました。これが第一歩です。

 これで様々な表示ができそうです。キャラクタLCDでは不可能な表示もできるようになりました。例えばパソコンのペイントで作ったグラフィックも変換して写し出す事ができます。128×64ドットで荒いのですが、それでもキャラクタタイプのLCDに比べると、表現できる情報量には雲泥の差があります。

 ついでにA/Dコンバータを動かして、電圧表示が出来ることを確認し、時間と共に変化させる事もできました。思わずNo.70で紹介したようなオシロスコープも遠いものではない・・と思ってしまいました。

 写真8がジャンパーピンで接続している様子です。写真9は簡易型をDDS用のテストボードに接続して試しているところです。どちらのLCDもソフト的には全く同じものが使えます。しかし、元々のドット数が128×64と少ないので、大型だと荒く見えてしまいますので、小型の方が綺麗に見えるかもしれません。大は小を兼ねますが、小の方が良い場合もあります。

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写真8. このようにジャンパーピンで配線します。

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写真9. 簡易型をDDSのテストボードに接続し、SGの実験をしているところです。

5.使用感

 おかげで、グラフィックLCDのソフトが一気に進んでいます。CPUを制御用として使うときに「窓口」となるのがLCDです。このLCDが文字だけでなく、グラフィックで表せるというのは、ソフトの幅を広げます。従って、制御するもの自体の幅を広げます。とりあえずNo.68で紹介したダイオード用カーブトレーサの表示をLCD化した、PART IIでも作ってみようかと思っています。