エレクトロニクス工作室
No.78 白色LED投光キット
1.はじめに
普通LEDは数V以上の直流電圧を使って、数mAの電流を流して点灯させます。従って1.5Vの乾電池1個では簡単には点灯させられません。何らかの方法で、電圧を上昇させる回路が必要となります。しかし電池1個でLEDが点灯させられると様々な意味で用途が広がるという、自作の応用のためにも面白いキットと思います。
最近は「ミニライト」的なものは幾らでも入手できますので、カテゴリー的には特に珍しいものではありません。写真1のようなミニ懐中電灯という感じの地味なキットですが、作成してみましたので紹介します。
写真1. このような、結構明るいミニ懐中電灯です。
2.このキットについて
このキットは、タイマーICの発振回路で500kHzを発振させ、パルスでLEDをドライブします。スペアナで見るともっと低い周波数で発振しており、ざっと250kHz位のように見えます。
LEDは一般的には、電流制限用の抵抗と共に直流電圧を加えて点灯させます。白色LEDも同じですが、データシートが無いとどの位の電流を流しているのか良く解りません。試しに電圧を変えながら点灯具合を見ると、5〜6mAで同じ程度の明るさとなりました。このキットはパルスでLEDを点灯させる方式となっていますので、直流の場合とは単純な比較はできません。人間の目は暗くなった事に気が付くのに時間がかかります。従って、パルス駆動は省エネの方法となります。
使っているLEDをNo.68で作成したダイオード用カーブトレーサで見ると、写真2のようになりました。電流的に目一杯でカーブが測定しきれませんが、横軸は1divが1Vですので2.3V程度から電流が流れるようです。
写真2. 白色LEDの特性をカーブトレーサで見てみました。
3.作成
写真3がキットの全部品です。説明書どおりに電池ボックスの加工から始めます。基板も簡単なのですぐに完成するでしょう。LEDの足は区別が解るように印をしておいて、同じ長さにします。このままではショートしますので、プラスの方にチューブを被せました。取説にはセロテープでとなっていますが、あまりセロテープは使いたくないと思いました。危険というほどの事もないので、あまり気にする事はないのでしょうけど。
写真3. キットの全部品になります。
写真4が基板を作成したところです。そして、写真5のような電池ボックスの一部に基板を入れ、残りに電池を入れて電源SWはそのまま使います。これは巧みな作り方と感心しました。
写真4. 基板はこんな感じで、すぐに完成します。
写真5. 単3×2本用の電池ボックスですが、片方に基板を入れるというアイデアです。
4.使用感
結構明るく光ります。遠くを明るく照らそうなどという目的には全く不十分ですが、停電時にはそれなりに活躍する程度の明るさはあります。まあ、もっと明るければとも言えますが、乾電池一本ではこのくらいが良いのかもしれません。
発振させてパルスで駆動しますので、ノイズが出ないかを調べてみました。まず、スペアナにピックアップ用のコイルを付けて探索すると、写真6のように「スプリアス」が見えます。極めて曖昧な方法ですので、「発振している」と解る程度です。気になっていたのですが、アマチュアバンドでノイズは感じませんでした。発振周波数は安定しているようなものではありませんので、場合によっては妨害波を受ける可能性はあります。ためしに中波ラジオを直近で聴いてみると、ノイズの嵐という事もありませんでしたがビートの出る周波数はありました。中波ラジオには影響する場合がありそうです。
スペアナで周囲を探るとスプリアスが見えます。
特長として、ダイソーの電池チェッカーでレッドゾーン(REPLACE)の乾電池でも十分に使用できます。つまり、普通ならリサイクルボックスに直行するような電池でも使えるので、トータルとしてもエコという事です。このような電池は山ほどありますので、使い放題です。しかも、電圧の高い電池でも低い電池でも明るさに差はありませんでした。
5.終わりに
懐中電灯としては持ち運びに便利なように、携帯用のストラップでも付けられると良いのですが、電池ボックスの目的外使用ですので仕方ありません。
拙宅の付近は落雷が多く、年に何回か停電を起こします。このような場合に、家庭で使うのに便利で面白いでしょう。
東北関東大震災による計画停電では、12畳のリビングをこれ一つで過ごしました。決して明るくはありませんが、目さえ慣れてしまえばどこに何が在るのか解ります。もちろん電球式の懐中電灯もポケットには入れていました。何台かあると便利そうです。