エレクトロニクス工作室
No.79 RF MATE
1.はじめに
レベル計と周波数カウンタは高周波の工作を行うにあたって、まずは必要な3種の神器です。とすると、残りはSGになるのでしょうか。この2つを同時に測定する、RF MATEのキットがサイテック(http://sug.dip.jp:8080/tokushima/cytec/)から出ています。なかなか面白そうですので、早速入手して写真1のように作成しましたので紹介します。
写真1. 作成したRF MATEです。周波数をカウントしながらレベルを測ります。
2.回路
図1のような回路になっています。これはキット添付の図面です。カウンタ入力とレベル計入力が別になっていますが、これはショートして一つにしても構いません。カウンタはハイインピーダンス入力ですからレベル計への影響はありません。逆にカウンタの感度は下がってしまいますが、それで問題がないとすれば大丈夫です。下がるといっても電力で3dBですから、それほど気にする事はないと思います。どちらにするかは選んで下さい。私の場合はケースが小さくなったという事情もあって、一つにまとめてしまいました。
レベル計はAD8307を使ったものです。この出力をPIC16F876のA/Dコンバータに入れてLCDに表示させます。AD8307はICによっての個体差を吸収できるように、外付けのVRで調整できるようになっています。
周波数カウンタはRFアンプの後でPIC16F876に入ってゲートタイムによってカウントされます。
図1. 回路図になります。(※クリックするとPDFが開きます。)
3.作成
キットですので説明どおりに作れば大丈夫です。写真2のように基板と抵抗等の部品だけでなく、スイッチやBNCコネクタ、またLCD取付け用のネジが入っています。ケースはキットと同時に入手したもので、他の用途からの流用したという写真3のケースを使うつもりで進めていました。ところが、3月11日の東日本大震災で作業用パソコンが棚から落下してしまい、製作途中で置いていた上蓋を直撃してしまいました。そこで急遽タカチのKB-S1(W110×H40×D70)に入れる事にしました。このケースとすると、電源は乾電池ではなく外部からとなります。しかし後になってですが、このシリーズは廃止になった事に気が付きました。パネルが青色ですので、LCDとマッチして見栄えがするのですが、同じケースは入手し難いかもしれません。
写真2. キットに入る部品です。
写真3. 入手していたLCDの穴あきケースだったのですが・・。
作成は、基板作成の前にコイルを巻きます。FB801に4回巻いて中央からタップを出します。バイファイラ巻きより簡単です。コイルは右回り、左回り(ちょっと表現が難しい・・)どちらでも同じです。巻いた後で中央にハンダゴテをあてて、被膜を溶かしてハンダメッキします。それからセンタータップをハンダ付けします。写真4がこのコイルです。
写真4. バイファイラ巻きより簡単な4tのタップ出しコイルです。
LCDにバックライト用のジャンパーと抵抗を取り付けます。写真5のJ3がジャンパーで、少々ハンダを盛るだけです。R9が取付けた100Ωになります。
写真5. J3に盛っているハンダがジャンパーです。R9には100Ωと取り付けます。
基板は写真6のようなシルク印刷済み基板です。部品表と合わせながら半分位ハンダ付けをしたところが写真7です。ICソケット、コネクタ、コンデンサ、抵抗と付けて行くと、気が付くと終わってしまいます。チェックを良く行い、LCDを取付けて、写真8がバラックで動作テストをしているところです。写真9はケースに穴あけをして、少しずつ部品の位置決めをしている段階です。写真10が全ての配線を終わったケース内部の様子になります。このとおり、ギリギリに押し込んでいます。
写真6. このようなシルク印刷付きの基板です。
写真7. このように部品をハンダ付けして行きます。
写真8. 基板のままで動作チェックをしました。
写真9. ケースが狭いのでパネル面の穴あけを行い、その後で基板の位置決めをしているところです。
写真10. 完成後の内部の様子です。ギリギリでした。
キットには20dBのアッテネータと、それを使ったときの補正用のスイッチが付いています。他にも使えるアッテネータが結構転がっているという事もありますが、20dBを加減算するのは暗算でしますので、補正用のスイッチはつけませんでした。ケースが小さくて入らないという事もあります。
4. 校正
これがこのキットの特長です。簡単な校正用治具を作って、直流的に校正をするというアイデアです。この治具は空中配線でも良いのですが、せっかくなので写真11のようにジャノメ基板上に組んでみました。最初はラグ板で作るつもりでしたが、どうも配置がしっくりせずジャノメ基板にしました。まず、この出力をデジタルテスターで1Vに調製します。この1Vをテスト端子に入力し、+3.89dBmを表示するようにVRを調整します。これはやってみると簡単です。次にSGを入力してみると、ほぼ合っている事が確認できました。
写真11. 1Vを出力する校正用冶具です。
ひとつ注意しなくてはならないのは、本体と同じ電源を使うと正しく調整できません。最初試した時には+3.89dBmまで下がらず考えてしまいました。元が同じ電源だとマイナス側が共通になってしまい、ICに意図とした電圧が加わらないようです。
周波数カウンタは、他のカウンタか周波数の正しい発振器を使い、表示が合うようにトリマーを調整します。
5.使用感
周波数カウンタは快調にカウントしますし、レベル表示も全く問題なく表示します。カウンタは50MHz以上では感度が多少下がるようですが、50MHz帯の自作の測定には問題ありません。レベルが高ければ70MHzくらいまでカウントするようですが、あまり使う事は少ない周波数になってしまいます。
同じ入力でレベルと周波数を測るようにしたため、そのまま周波数カウンタの感度測定のような感じです。周波数が上昇すると感度が下がるのがすぐに解ってしまいますが、これはこれで便利ともいえます。
写真12のように掌に収まってしまう、楽しいRF MATEです。ケースが狭かったので20dBのスイッチなどを省略してしまいましたが、もう少しゆったり入れてスイッチ類をフル実装しても良かったかと思います。
写真12. このような小型のRF MATEです。