1.はじめに

 東日本大震災の被災者の方には、心から御見舞い申し上げます。東北の復興と、新しい街づくりを微力ながら応援したいと思います。余分な買占めはしない、風評被害のものがあれば買い支える、落ち着いた頃には観光する、程度のものですが・・。

 さて、関東地方では計画停電が実施実施され、この夏に不安を持つ方も多い事と思います。4月は避けられたようですが、夜間に3時間も停電するのは明るさに慣れた現代人にとっては恐怖です。せめて一家に一部屋は明るさを、と作ったLED照明システムを番外編として紹介します。もちろん、普通の停電や災害に備える事にもなります。

2.LEDランプ

 懐中電灯やランタンも良いのですが、照らす範囲が限られてしまうので3時間も停電が続くと疲れてしまいます。この場合、天井から部屋を照らすような、少しだけ本格的な照明があると便利です。そこで急遽写真1のような自動車用のルームランプらしきものを、秋月電子の通販で5個入手しました。1個400円のものです。裏表は写真2のようなLEDです。12Vで60mAですので、トータルで300mAとなります。これを天井に配線し、4個をリビングに1個を台所の手元灯に設置しました。中央に穴が開いていますので、ネジで写真3のように軽く止めています。

photo

写真1. このような12VのLEDを使いました。

photo

写真2. 12個のLEDと定電流回路が入っているユニットです。

photo

写真3. 中央の穴を使って木ネジで天井に固定しています。

 このLEDはユニットになっており、12個の白色LEDと60mAの定電流回路が入っています。つまり12Vを加えるだけで、発光させる事ができるものです。もちろん、更に高輝度のLEDでも良いのですが、電源やワイヤーの容量と放熱を考える必要があります。

3.電源

 電源には12V1.5Ahの鉛蓄電池を用意しました。300mAで使用すると単純には5時間となりそうですが、鉛蓄電池の容量は放電電流によって変わります。カタログ上で5時間で放電する場合には255mAとなっており、多少ですが短くなります。3時間程度は軽くクリアするでしょう。

 この鉛蓄電池は、電気を全く知らない家人が触れる事も考えられますので、それなりの対策をしておく必要があります。ON/OFFスイッチを解りやすくする。ショート対策をする。充電は別の部屋で行う。この3点に尽きると思います。そこで電池には図1のようなアダプタを付けておくことにしました。このままQRP用の移動運用にも使用できるでしょう。

photo

図1. アダプタの回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)

 出力にはヒューズの代わりに0.3Aのポリスイッチを付けています。0.6Aで遮断し、過電流状態を取り除くと復帰します。ガラス管のヒューズでは一度切れると交換する必要があり、真っ暗の中で作業しなくてはなりません。ポリスイッチは、このような用途にはちょうど良いと思います。

 このアダプタにはセンターがゼロのメータを利用した、充電と放電の状態を見るメータも付けました。これはこのようなラジケータがあったので使ってみただけで、特に無くても問題ありません。充電中は左に振れて放電中は右に振れますので、状態がひと目で解ります。センターゼロのラジケータなど、このようなときにしか使い道がありませんので、使ってしまいました。

 なお、充電には、ずいぶん前にモービルハム誌で紹介した充電キットを使っています。基本的にはNo.15の充電器と同じです。鉛蓄電池が1.5Ahですので、10分の1の0.15Aが充電電流となります。この充電を作業場で行い、リビングに移動して使用するという作戦になります。

4.作成

 タカチのプラスチックケースSW-75Sにアダプタとして保護用回路を入れています。写真4のように穴あけをしました。これを両面テープで電池に貼り付けて写真5のようにします。ラジケータの目盛は、それらしきものを作成しました。使用時は60mAが5個で0.3Aになります。充電時は1.5Ahの鉛蓄電池を0.1CAで充電するので、0.15Aとなります。目盛は写真6のように-5〜+5の10等分にしましたので、充電時の0.45Aで5振れるようにしました。LED点灯時は2.2振れることになりますが、元々がラジケータですのでそれほど正確ではありません。センターゼロのメータなど入手性が悪いので、無くても全く問題ありません。特に停電中は大体がヒマになりますので、鉛蓄電池の状態が気になるものです。趣味で見るためのメータです。元々が内部からライトで照明するタイプですので、青の濃いアクリルが使われており、照明なしではとても見難いです。そこで、写真7のようなLED照明ユニットを付けてみました。これで実によく見えますし見栄えがします。この基板は、地元のスズキデザイン(http://www.bbweb-arena.com/users/suzudes/photo1/photomaster/)で入手したもので、ラジケータ専用の照明用基板です。白色LED2個と抵抗を載せる簡単な基板です。内部は写真8のようになりました。

photo

写真4. アダプタの穴あけをした様子です。

photo

写真5. 完成したアダプタです。

photo

写真6. 目盛は専用のソフトで作りました。

photo

写真7. このようなラジケータ用の照明ユニットを使ってみました。

photo

写真8. アダプタ内部の様子です。

 天井を含めた配線は図2のように平凡なものです。個々は写真9のようにハンダ付けしています。もちろんLEDですので電源の極性を間違えると点灯しません。私の場合は白いワイヤーが沢山あった関係で白だけで配線しました。もちろん、あまり赤と黒のワイヤーを天井に貼り付けるのも考えものです。0.3A流れますので、それなりにワイヤーを選択する必要があります。規格がAWG26でしたので、温度にもよりますが概ね2A程度まで使用できます。非常用ですし、3時間限定という事もありますので、これで十分としました。

photo

図2. LEDを含めた配線になります。

photo

写真9. 各LEDユニットはこのようにハンダ付けしています。

5.使用感

 リビングの天井にはLEDが4個ですが、これを点灯させると、「おおっ」と声が出る位の明るさでした。12畳の部屋全体で光が広がり、何とか本くらいは読める程度の明るさです。もちろん、あまり読書は薦められません。もっと明るいLEDを使う方法もありますが、普通に動くには不自由のない明るさと思います。やはり天井からの照明が生活には便利、と感じた瞬間でした。

 電力不足がいつまでも続く事がないように、早く普通の状態に戻れる事を願わずにはいられません。震災や原発の被害を思うと、贅沢なのかもしれません。しかし、復興のためには電力は必要です。

 とにかく、「がんばろう東北」「がんぼろう日本」で復興し、TSUNAMIの他にFUKKOも世界に通じる言葉にしようではありませんか。