Onlineとーきんぐ
No.140 「無停電電源システムの構築」
APC JapanのUPS*無停電電源装置SMART-UPS 700の中古品を手に入れました。保存状態は良く、外観に汚れがなく内蔵のバッテリーを交換するだけで動作すると推測しました。もし使えるようなら、この夏に起こるかもしれない停電に備えて無停電電源装置が役に立つに違いないと考えました。OnlineとーきんぐNo.128「計画停電対策、照明装置の組み立て」では自動車用バッテリーと充電器、インバーターを組み合わせた照明装置を作りましたが、今回は構想を新たにSMART-UPS 700を用いた本格的な無停電電源システムを構築しました。
写真1. SMART-UPS 700の外観
*一般に商用交流電源に接続して使用する交流入力、交流出力の装置をUPS(Uninterruptible Power Supply)と呼ぶ。
SMART-UPS 700の定格
SMART-UPS 700は、ラインインタラクティブ方式と呼ばれ、通常時はバッテリーを経由せず、停電時に切り替えてバッテリーから電気を供給するタイプになります。切り替え時に数ミリ秒の電源停止になりますが、サーバーなどは20ミリ秒程度の電源停止に耐えられるので問題にならないと言われています。
写真2. SMART-UPS 700の裏面
主な定格 | |||
---|---|---|---|
形状 | タワー | 運転方式 | ラインインタラクティブ |
入力電圧 | 100V | 対応入力周波数 | 50/60Hz |
出力容量 | 700VAまたは450W | 出力コンセント数 | 4個 |
充電時間 | 3時間 | 期待寿命 | 1.2年 |
幅×高さ×奥行 | 137×158×358mm | 重量 | 13.1kg |
内蔵バッテリー
バッテリーの交換が必要なので、どこで売っているかを調べました。SMART-UPS 700の発売当時の価格は73,500円、バッテリーキット(RBC5J 2個)は17,640円でした。この機種はすでに生産を終了して純正品の入手が困難ですし、このように高価なバッテリーの購入は得策ではありません。そんな折、友人から耳寄りな情報が入ってきました。秋月電子通商で取り扱っている小型シールド鉛蓄電池が使えると聞きました。
RBC5Jの互換バッテリーは LONG WP7.2-12(12V 7.2Ah) で値段も格安の1,750円でした。重量は1個約5kg、2個で10kg、かなり重いので、送料500円で送ってもらいました。その後、在庫切れになりましたのでamazon.co.jpで互換バッテリーを探すとW8-12(12V 8Ah )が2,180円で見つかりました。
写真3. LONG WP7.2-12(12V 7.2Ah) 2個
UPSの用途
始めに考えたのはUPSにつないでLED電球を灯すことでした。次にTVセットやラジオの電源にすることも考えましたが、停電の時間が僅か2時間であり、ノートパソコンでテレビを視聴できることもあり、もっと有効な使い道がないかを探っていて浮かんだのが、FAX付加入電話とひかり電話ルーター、無線LANルーターなどの通信系統の電源をUPSに接続することでした。これなら停電が発生してもUPSにより電源が供給されて電話とインターネット回線が平常通りに使え、防災関連ニュースの閲覧とEメールの送信・受信が確保できる利点があります。
バッテリーの交換方法
バッテリーの交換方法はマニュアルに記載がありますし、ネット検索で交換した例が見つかりますので、事前に読んでから作業に取り掛かりました。フロントカバーを上に持ち上げながら外向きに倒し、カバーを外してフロントカバーをUPSの上部に折り返す。次いでバッテリーネジを外してドアを開ける。バッテリー下部の半透明のテープをつかんで外側に引き出しました。
写真4. フロントカバーを開ける
写真5. 内蔵バッテリーを出した様子
バッテリーから赤色(+)と黒色(-)の配線を外し、さらに2個のバッテリーを直列につなぐ白色の配線を外す。LONG WP7.2-12(12V 7.2Ah) 2個を装着して+−を確認した後に配線する。次に解体の逆の手順でフロントカバーを閉じる。作業時間は10分程度で済みました。
写真6. LONG WP7.2-12(12V 7.2Ah) 2個の配線
写真7. バッテリーを収納した
動作テスト
UPSの出力にLED電球(100V6.9W)をつないで以下の1〜8の動作テストを行いました。
1.UPSを起動させ、セルフテストを実行して商用電源の電圧表示をオンにする。
2.オンラインLEDランプが点滅して、商用電源を負荷に供給している。
3.バッテリーチャージのLEDランプが4つ点灯(80%)後、5つ点灯(100%)
4.オンラインLEDランプが点灯。
5.LED電球(100V6.9W)を点灯する。
6.UPSのACプラグをコンセントから抜く。(AC100Vをオフ)
7.UPSのインバーターが起動する。
8.バッテリー使用中LEDランプが点灯し、警告音を発する。
UPSの給電時間について
SMART-UPS 700の出力容量は700VAまたは450Wです。LED電球は100V 6.9WにSANWAのワットモニターをつないで消費電力を測定してみました。7Wを5時間点灯すると7W×5h=35W になります。今回の使用目的に照らしてFAX電話機、IP電話対応ルーター、無線LANルーター、回線終端装置の消費電力は極めて小さいので数時間は使えると予想しています。因みにUPSに商用電源をつなぎ6.9WLED電球を点灯した時のAC電流をA&DクランプメーターAD-5585で測ると0.337A流れており、消費電力は33.7Wとなります。LED電球の6.9Wを差し引いた26.8WはUPSの制御などに費やしているものと思われます。
写真8. 出力コンセントにワットメーターを装着してLED電球の消費電力を測る
写真9. ワットメーターは7.0Wを表示
写真10. クランプメーターでAC電流を測定
無線機の非常用電源は別系統
UPSを無線機の電源に使えるのはもちろんですが、IC-706MKIIGMトランシーバーの非常用電源は、自動車用バッテリー38B19Rを用意しました。このバッテリーにYUASA のMB-1212R充電器(出力12V 1.2A)をつなぎ、満充電の約80%になると電源がOFFになる安全設計です。これにDC12V用LED電球(LEDレフランプ) をつないで照明に使います。今回はインバーターが不要になりましたので外して、車の備品に戻しました。
あとがき
UPSは高根の花と思っていたところに中古品が手に入りましたので、改めて停電対策を考えるようになりました。「とりあえず加入電話とインターネット回線を生かしたい」という構想からUPSの利用法を思い付き、いろいろ調べてみるとネットショップに手ごろな値段でUPSが出回っていることがわかりました。内蔵バッテリーは約1年で交換するなど、メンテナンスに少なからず手数がかかるものの、停電を快適に乗り切るためならやりがいのある試みではないかと思っています。