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No.144 「CPUクーラーにダミーロードユニットを載せる」
秋葉原のパーツショップでダミーロードユニット(DC〜1GHz、500W、50Ω)を見つけて、業務用の仕様が気に入り購入しました。ダミーロードは擬似負荷、疑似負荷抵抗、あるいは疑似空中線回路と呼ばれ、トランシーバーなど無線送信機の調整時にアンテナの代わりに使うため、備えておきたい装置の一つです。
写真1. ダミーロード 左から業務用(DC〜1GHz 150W)、DL-30A(DC−500MHz 50Ω 15W)、L22P(DC〜2.5GHz 50Ω 10W)
今回、購入したダミーロードユニットに放熱機能を加えるため、CPUクーラーに載せることを思い付きました。機械的な加工は工作名人のOさんにお願いし、メーリングリストで情報を交換しながらダミーロードを作り上げましたので、その書き込みの一部を紹介し参考に供したいと思います。
CPUクーラーに載せる
Hさん『秋葉原の東京ラジオデパートの3階、斎藤電気商会(電話03-3251-5803)で購入したダミーロードユニット(5,250円)は、廃棄処分になった日本ヒューレットパッカード(株)製のサーバー※からCPUクーラーを外して、これにダミーロードユニットを載せるため、Oさんに加工をお願いしました。』
※インターネットやLANなどのネットワーク上で、ほかのパソコンにさまざまな機能やサービスを提供するコンピューター。
写真2. ダミーロードユニット(DC〜1GHz、500W)
写真3. 放熱面は底面で行う。放熱器を付けない場合は数Wしかもたないはず。
『今なら同じダミーロードユニットが入手できると思いますので、興味のある方は行動を起こしてみてください。市販のCPUクーラーを活用すればスマートなダミーロードが作れるでしょう。なお、同ユニットがジャンク扱いなので売り切れの心配があります。』
Oさん『放熱板の熱抵抗を計算してみました。ブロア使用で熱抵抗1/10(熱容量10倍)として、500Wでは80℃を超えそうです。連続使用は無理かもしれません。電源を使うので過温度警報を付けるのも良いでしょう。』
放熱器の加工
Oさん『ダミーロードユニットをCPUクーラーに取り付けるネジ穴を開けました。放熱板の接触面の中心から少しずらしています。熱容量不足を考えプッシュプルの送風が効果あると思われ、それが出来るようなブロアの取り付けを考えています。』
写真4. CPUクーラーにダミーロードユニットを載せるためネジ穴を4か所開ける。
『 Hさん お待たせしました。このようにまとめました。ブロアの放熱効果は実測していませんがプッシュプルにすると風切り音が静かになります。』
写真5. CPUクーラーにダミーロードユニットを載せる。側面にブロアを両側面に配置。
写真6. ダミーロードユニットがCPUクーラーにしっかり固定された。
写真7. CPUクーラーに載せたダミーロードユニット。
Hさん『この他にデイトンハムベンションで買った円柱型のダミーロードを強制空冷したHF帯1kW用ダミーロードを持っています。こちらは壊れない頑丈な作りです。さらに自作のオイル漬けのダミーロードがあります。こちらは大きなタッパーウェアに入れて、オイルの漏れを防ぎますが、室内に置くのはためらわれます。』
写真8. 通気性の良いケースに収納、N型レセプタクルはケーブル直結型を採用。
写真9. 完成した500Wダミーロードの外観。使わない時はこのようにキャップをかぶせる。
プッシュプル方式のブロア
Oさん『このダミーロードが何ワットまで耐えられるか考えてみました。抵抗ユニットは500Wですが、充分放熱されることが条件です。放熱器の体積は6×7×9=378立方センチ・ブロア付き。同じメーカ−の150Wダミーロードは13×13×15=2535立方センチ・ブロア無し。熱抵抗を体積から求める簡易計算で比較すると耐電力37.5W(ブロア停止)ブロアを回して350W位でしょうか。 抵抗体の温度は常温+45℃程度(25+45=70) と想像します。トランジスタは一般的に175℃位で計算してあるようです。』
『アマチュア局向けに40秒とか10秒、あるいは平均、ピークなどの表現で4倍から5倍の耐電力が表示されていますが、抵抗体温度は書いていません。それを考慮すると500WでもOKかもしれません。プッシュプル方式のブロアは効果があると思います。耐電力テストはHさんにお任せします。無理して燃やさないようにしましょう。』
Hさん『私とOさん、Kさんが持っているソリッド(固体)の150Wダミーロードは、MH※の 50MHz欄担当のHaさんから、ポケベルか携帯電話の中継局備品が廃棄処分になり、それを貰い受けたものでした。』
※雑誌「モービルハム」(1973年〜2000年)
『150WダミーロードはリニアアンプのALC調整に使っていたときに昇天しましたので、内部の抵抗ユニットの交換を試みましたが、入手できないままに至っています。ソリッドのハイパワーダミーユニットを探していると、ダミーロードユニットにたどり着きました。』
グリスの効果
Hさん『ところで、CPUは放熱器を取り付けるときに白いグリスを塗りますが、あれは効果があるのでしょうか? その昔、トランジスタを放熱器に取り付けるときも、雲母の間に透明なグリスを塗りましたが気休めではないかと思っています』
Uさん『放熱器に熱伝導の良いグリスを塗って放熱効果に寄与するのだそうです。』
http://www.silicone.jp/j/products/notice/heat/oil.shtml
Oさん『あのグリスは間にある空気(断熱材)を押し出すために重要です。 しかし、塗りすぎは禁物です。翌日に増締めして余分なグリスを追い出しましょう。 』
『あの大きなダミーロード(20×20×0 (mm))の放熱器の熱抵抗は0.15℃/W程度(包絡体積による推定)ですから300Wで45℃位の温度上昇になります。室温を足すと70℃で限界状態です。放熱器が半分になると熱抵抗が0.2℃/W程度になり、300×0.2+25=85℃接合部分等の熱抵抗は無視すると300Wでも85℃で危険状態です。』
『これは抵抗体の容量には関係なく放熱器の熱抵抗で決まります。充分放熱をした場合500Wまで使えると考えてください。自然空冷の場合ですとフィンの通風状態で大きく変わります。空気の流れを考えフィンを縦にしなければ過熱状態になります。 ブロアを使うと熱抵抗は1/10程度に下げられるようです。』
『先日作ったダミーロードはブロアのジャケットを付けたためブロアを回さないと放熱が悪く危険です。ブロアを回さない時はブロア部分を必ず外してください。その場合は50Wが限度です。 フィンの間隔や板厚が薄いので自然空冷は十分でありません。私の150Wダミーロードのサイズが13×13×15=2535で熱抵抗は0.3℃、150×0.3+25=70℃で納得の数値です。 実際の使用環境では当然のようにブロアが使われていたと思います。』
まとめ
ここではHさんとOさんの書き込みに焦点を当てました。実際にはHiさん、Fuさん、Kさん、Uさんなど6人がメーリングリストに参加して、それぞれ技術情報を交換しました。ダミーロードは用途別に複数個あっても良いと思われますので、ここに示す製作例を参考にされて独自のダミーロードを作っていただければ幸いです。ダミーロードユニットはまだ200個くらいあると聞きました。パーツショップにお問い合わせください。