SDR(Software Defined Radio)「ソフトウエアラジオ」は出力や周波数帯、変調方式などが異なるさまざまな無線通信手段を、1台の無線機のソフトウエアを書き換えることで対応する技術です。言いかえると、汎用的なハードウエアを用いて通信を行い、従来は半導体が行ってきた方式依存の処理の大部分をソフトウエアで行います。新しい通信方式が登場すると新しいソフトウエアを取得して通信機器に送り込むことで、ハードウエアを交換する必要がありません。

Cheap and Easy SDR

これはQST 2013年1月号p.30〜35Robert Nickels,W9RANのタイトルです。トップにSDR & DVB-Tドングルの内部写真を掲げて読者に衝撃を与えました。ドングル(Dongle)とは「コンピューターのUSBポートに接続する小さな装置」を指すため、PCのUSBポートに接続するDVB-Tを「ドングル」と呼びます。DVB-TはDigital Video Broadcast-Terminalの略称で、ワンセグTVチューナーと呼ばれています。もっぱらノートパソコン等に接続してテレビの試聴を用途とします。価格は20ドル前後と手ごろであり、世界の100ヵ国で使われていること、生産は中国ということで安い価格で売られています。

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写真1. QST 2013年1月号p.30のタイトル Cheap and Easy SDR(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真2. R820T SDR & DVB-T(上)とDS-DT305BK(下)

DVB-TドングルはRealtek RTL2832デコーダーチップとElonics E4000チューナーチップを使うワンセグチューナーですが、SDR#というソフトウエアで動作させると広帯域受信機になるということで人気が出てきました。受信周波数範囲が64MHz〜1700MHz、RFスペクトラムは2MHz幅、感度がよく、屋外のVHF/UFHF帯のアンテナ(ディスコン、バーチカル、ログぺリ)を使うと良いとされ、RG-6/Uか低損失の同軸ケーブルを勧めています。

DVB-Tの購入は通販が一般的です。

例えば米国NooElec社 http://www.nooelec.com/store/ はUS17.95ドル、

香港のDX.comはUS13.60ドル(送料無料)7日〜10日

http://dx.com/p/rtl2832u-r820t-mini-dvb-t-dab-fm-usb-digital-tv-dongle-black-170541

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写真3. 米国から届いたR820T SDR & DVB-T、アンテナ、リモコン

SDRが動作するPC

SDR#が動作するPCのOSはWindows Vista、Windows 7、Windows 8で動作することを確認しています。CPUの使用率は10%程度なのでOSに依存しないはずですが、手元のXP機では動作に至っていません。QSTの記事によると、Windows XPあるいはより新しいOSのUSB1.0ポートで動作すると報告されていますが、USBポートのバージョンに問題があると推測しています。

実証試験として、IBM R40eノートPCのOSをXPからVista SP2に変更し、.NETもインストールしました。ドライバーが正常に働いているように見えますが、I/F(インターフェース)に反応がありませんので、USB1.0では動作しないと判断しました。PCMCIAのUSB2.0カードを装着する方法もありますが、XPのサポートが2014年4月9日で終わることを考慮して追求するのをやめました。

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写真4. デスクトップPCのUSBポートに挿したDS-DT305BK

便利なアクセサリ

参考までにアクセサリを紹介しておきます。いずれもアマゾンと秋月電子通商の通販で購入しました。これらを使うとドングルのアンテナ端子を痛めない利点があります。TVタイプのFコネクタを抜き差しすると芯がずれる、押しこむ等の事故から接触不良を起こし勝ちです。さらに外部の衝撃から守るためにも、USB延長ケーブルを介してドングルを装着することで、ドングルの繊細なコネクター類を守る効果があります。

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写真5. USB2.0延長ケーブル(A to A)、MAコネクタ→MCXコネクタ SMA変換 SM-1、変換コネクタ SNA-J⇔M-J、両端SMAケーブルRG-316

*USB2.0延長ケーブル(A to A)フェライト素子練り込みタイプ(2m) 779円 (AMZON)

*MAコネクタ→MCXコネクタ SMA変換 SM-1 315円 (AMAZON)

*変換コネクタ SNA-J⇔M-J 250円 (秋月)

*両端SMAケーブル RG-316(1.5m) 700円 (秋月)

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写真6. DS-DT305BKとAコネクタ→MCXコネクタ SMA変換 SM-1、変換コネクタ SNA-J⇔M-J、両端SMAケーブルRG-316

ドライバーのインストール

SDR# Software defined Radio

http://sdrsharp.com/downloads/sdr-install.zip

sdr-install.zipをダウンロードします。

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写真7. Satellite T-30(Windows8)ノートPCとR820T SDR & DVB-T

【インストールの手順】

1.インターネットにつながっているPCを用意する

2.USB-SDRドングルを装着する

3.PCが自動で組み込むドライバーはインストールしない

4.sdr-install.zipを解凍する

5.3つのファイルができる

6.installを起動する

7.DOS窓が開き、ダウンロードをしばらく待つ

8.zadigを起動する⇒options⇒List All Devices⇒Device

9.RTL2832UHDIRを選ぶ⇒Install Driverをクリック(インストールが成功したら閉じる)

10.SDRsharpを起動する

11.Other(sound card)をクリックしてUSB/RTL2832を選ぶ

12.Playボタンを押す

13.受信が始まる

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写真8. sdr-installの画面(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真9. zadigの設定画面 DeviceをRTLL2838UHIDIRを選択(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真10. sdrsharp ⇒ SDRsharpをクリック(※クリックすると画像が拡大します。)

ZOXの「DS-DT305」

米国NooElec社のドングルの購入に先立ち、Amazonに注文したZOX社のユニット「DS-DT305」(1,370円)を使った事例を紹介しておきます。これもRealtekのRTL2832Uを採用したワンセグTVチューナーです。これをパソコンのUSBポートに挿し、SDR#をインストールして広帯域受信ができます。周波数の範囲は60MHz-800MHz(ドングルにより異なる)、モードはCW、AM、DSB、LSB、USB、NFM、WFMなどが復調できます。

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写真11. ZOX DS-DT305BKと付属品

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写真12. DS-DT305BKとホイップアンテナ

広帯域受信の勧め

Satellite T-30ノートPCにSDR#をインストールしてFMラジオ放送を受信してみました。添付の写真がその画面です。アンテナは20cm程度のホイップです。続いてアマチュアバンドの145MHz 帯FM、433MHz 帯FMの受信にも成功しました。430MHz帯をモニターして信号の山にカーソルを合わせて、モードをNFMにすると復調します。周波数は画面上部のVFOにマウスでポイントして左ボタン、右ボタンで数字を設定します。

HF帯の受信については、HF 0MHz〜28MHzが受信できると【YU3MAのWeb】が改造法を公開しています。http://yu3ma.net/wp/?p=370

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写真13. ASUS U32U(Windows8)のUSBポートに装着したR820T SDR & DVB-T

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写真14. SDR#をインストールしたFM放送のスペクトラム(※クリックすると画像が拡大します。)

トラブル解決Q & A

Q: 手持ちのワンセグTVチューナーは使えるか。

A: Realtek RTL2832Uチップ使用したワンセグTVチューナー以外はSDR#に対応しません。


Q: NooElecのDVB-TとZOXのDS-DT305はどちらの性能が良いか?

A: NooElecの方が感度、S/N比の点で性能が勝ります。ZOXのドングルは密封タイプのせいか、自己発熱で感度が徐々に低下しますので、放熱対策が必要です。


Q: SDRsharpを起動してOther(sound card)を【RTL-SDR/USB】に変更できない。

A: コントロールパネルのデバイスマネージャーを開いてlibusb(WinUSB)deivicesにRTL2838UHiRIRを確認します。続いて上述した「ドライバーのインストール」を実行してください。

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写真15. デバイスマネージャーでRTL2832Uを確認する

Q: sdr-install.zipの解凍方法は?

A: 「窓の杜」http://www.forest.impress.co.jp/ などから「圧縮・解凍・ランタイム」を開き、LZH/ZIP対応の簡単一発解凍ソフトLhasaなどをデスクトップにダウンロードしてください。sdr-install.zipをLhasaのアイコンに重ねると3つのファイルができます。


Q: HF帯を受信できるか?

A: ワンセグチューナーはYU3MA http://yu3ma.net/wp/?p=370によると、簡単な改造でHF 0MHz〜28MHzが受信できると報告しています。RTL2832の1pinと2 pinにRFトランス4:1(50Ω:200Ω)を接続してアンテナにつなぎます。ほかにQST 2013年1月号p.34〜35にHFアップコンバーターの製作記事が参考になります。


Q: USB-SDRドングルの中は見られるか。

A: USB-SDRドングルは接着されていないので、隙間に爪を立てると蓋が開きました。そのまま閉めたら元通りになります。

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写真16. R820T SDR & DVB-Tの内部写真

Q: ZOXのワンセグチューナーでFM放送を受信中、ノイズが多いのでアンテナ代わりに金属体にワニグチクリップでロッドアンテナと接続。ノイズもなくなり快適に受信できました。同時にHF帯トランシーバーの電源スイッチをオン、ローテータのSWを入れた途端、ZOXの DS-DT305BK FMラジオが聞こえなくなりました。FMスペクトラムは表示されていますが信号レベルは下がりRF段が壊れた模様です。

A: コスト削減で受信回路に保護ダイオードが入っていませんので、1S1588を2本入れておくと万全です。基板にダイオードを入れる場所がありますので、気になる方は使う前に挿入しておくとよいでしょう。


Q: RFゲインのコントロールはどこにあるか?

A: SDR#のスペクトラムの上部左にあるConfigureをクリックするとRTL-SDR ControllerにRFゲインが収納されています。

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写真17. RTL-SDRController

まとめ

SDRは多くの可能性を秘めていますので、その特性を生かして広帯域のノイズジェネレータによりフィルタの特性をとる試みや測定する周波数レンジを広げるために、SDR#以外のソフトも試してみようと思います。他にもRTLSDR Scannerに取り組む構想もありますし、D-Starの受信(復調)を試みる、タブレット端末にドングルを接続してSDRにする、気象衛星NOAAを直接受信するのも面白いと、考えを巡らせているところです。