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No.155 「D-STARレピータ建設、顛末記」 その1
JR1VM D-STARレピータ開局
3月28日、JR1VM D-STAR レピータが開局しました。 入力439.10MHz、出力434.10MHz、10W、東京都中央区日本橋小網町 ぺんてるビル屋上、地上60mのGPアンテナを使用しています。秋葉原電気街は2km圏内ですからハンディ機を持って歩くとフルスケールで入感します。東京駅まで1km、銀座2〜3km、「東京ビッグサイト」まで6kmの距離にあり、池袋・新宿・渋谷は7〜8kmの圏内に収まる、都心のレピータとして活動の場が与えられました。さらに従来からの1292.30MHz FMレピータは、4月15日、移設と機材の取替(Kenwood TKR-300)を終えて運用を再開しました。
JR1VMの1200MHzFMレピータ(上)とD-STARレピータ(下)
JR1VMレピータの沿革は、モービハム編集部の所在地(東京都世田谷区下馬)に開局したことに始まります。当初はJH1UGF槇岡寛幸氏の製作によるハンドメードでスタートして、後にスタンダード製レピータ装置に変わりました。2000年3月号の終刊に伴い東京都中野区本町通り4丁目に移設、さらに同中央区日本橋茅場町に移設しました。その後、ビルの建て替え工事に伴い中央区日本橋小網町のぺんてるビルに移設して今日に至ります。
JR1VMが設置されたペンてるビル
D-STARレピータの構成
D-STARレピータは、次の機器により構成されます。この中で設定が必要な機器を大きく分けると、図の左からモデム、ルータの「インターネット網接続機器ゾーン」と、専用ソフトをインストールしたLinux-PCの「ゲートウェイサーバ」、そしてID-RP2C+ID-RP4000Vの「ゾーン・レピータ群」になります。
D-STARレピータの構成図(※クリックすると画像が拡大します。)
1台のD-STARレピータを中継して2局がQSOする方式(山掛け)はID-RP2C+ID-RP4000Vのゾーン・レピータだけでも実現できますので、最初の設定は、D-STARレピータを手に入れたところから、山掛けができるまでを目標に設定のポイントを紹介します。
ID-RP4000Vの設定
D-STARレピータは大きな二つの段ボール箱で届きました。中にはID-RP2C(D-STARレピータシステム:写真上段)とID-RP4000V(UHF DIGITAL VOICE REPEATER:写真下段)が入っています。両機とも13.8VのDC電源で動作しますので、市販の直流安定化電源を用意しました。
D-STARレピータは二つの段ボール箱で届きました
ID-RP2C(D-STRAレピータシステム(上)とID-RP4000V(UHF DIGITAL VOICE REPEATER(下)
定格ではID-RP2Cが0.5A以下、ID-RP4000Vが送信時(High)で5.0A以下となりますので、20Aクラスの余裕ある容量のDC電源を用意しました。ID-RP4000Vは正面パネルにSERVICE T、SERVICE Rと刻印されたUSB端子があります。ここに市販のUSB A-Bケーブルを挿入し、別に用意したWindows-PCから専用ソフトにより送信、受信の周波数を設定します。
周波数の設定
SERVICE RにUSBケーブルを接続し、ID-RP4000Vに同梱の専用ソフト(CD-R)をPCから読み込みます。ソフトを立ち上げようとしますと警告メッセージが表示されます。
ソフトを立ち上げようとするとワーニングメッセージが表示されます
このあたりはマニュアルにもそうなると書かれていますので、慌てずにマニュアルの指示に従って進めます。専用ソフトからドライバーがインストールされた時、画面上にCOM○番と表示されているはずですが、それを見落とした場合は、デバイスマネジャーを開くと画像のように「ポート(COMとLPT)にICOM ID-RP4000V SERVICE R(COM5)と表示されていますで、COM Port Settingの数値を5に変更し、Applyボタンをクリックします。
「ポート(COMとLPT)にICOM ID-RP4000V SERVICE R(COM5)と表示されます(※クリックすると画像が拡大します。)
指定された周波数(439.10000)を入力し、Writeボタンをクリックすると、この作業は終了です。同じように送信周波数はSERVICE TにUSBケーブルを接続して設定します。この設定にはIBM ThinkPad X31ノートパソコンを使用しました。
指定された周波数(439.10000)を入力し、Writeボタンをクリックすると作業は終了です。
送信周波数はSERVICE TにUSBケーブルを接続し、設定します。(※クリックすると画像が拡大します。)
SERVICE R、SERVICE TにUSBケーブルを接続すると、それぞれに異なるCOM番号が割り当てられます。受信周波数設定のSERVICE RではCOM5でした。送信のSERVICE TはCOM4になりますが、これは使用するPCが自動的に割り当てるので、いつもこのようになるかどうかはわかりません。
PCの設定を手動で変更して、希望のCOM番号にすることもできますが、1回限りの設定作業ですので、ここはPCの都合に合わせて、アプリケーションの設定を変えて対応しました。書き込んだ後は念のためReadボタンをクリックし周波数を確認しておきました。
ID-RP2Cとの接続
ID-RP4000Vの周波数変更作業から紹介しましたが、事前にID-RP2C(D-STAR レピータシステム)と接続して、電源を供給できるようにしておきます。話が前後しますが、ID-RP2Cとの接続のポイントはID-RP2CとID-RP4000Vを電源ケーブルとコントロールケーブル(LANケーブル)で接続されます。
ID-RP4000Vは背面パネルにその接続口があります。それぞれ1か所しかありません。ID-RP2Cは複数のデジタルレピータをコントロールするため、接続の口が複数ありますので注意が必要です。
電源ケーブルとコントロールケーブルはID-RP4000Vに付属しています。ID-RP4000Vへの電源供給はID-RP2C背面パネル左側の電源コネクター「LOCALRPT-DC13.8V OUT」から行います。4つある接続口のいずれに接続してもかまいません。コントロールケーブルはその右側にあるRJ-45の口に差し込みますが、その時「LOCAL RPT-CONT I/O」ポートは背面パネルに向かって一番右端になる差込口を使用します。この作法は後述するID-RP2C設定ソフト(ユーティリティ画面)での設定と合わせるために、左から数えて4番目(つまり右端)に差し込んでおきます。
ID-RP2Cユーティリティ画面の起動
ID-RP4000Vの設定ではUSBケーブルを使用しましたが、ID-RP2Cの設定では市販のLANケーブルを使用します。ID-RP2CのLAN端子には172.16.0.1というIPアドレスが設定されています。サブネットマスクは24ビットですから、255.255.255.0と設定します。決まりごとはこの二つです。では、設定用PCはどのように変更するかと言えば、ネットワークと共有センターのところで確認・変更できます。ローカルエリア接続「IPアドレスを自動的に取得する」に設定されていたら「次のIPアドレスを使う」に変更し、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイを新しく記述します。
IPアドレス:172.16.0.30(末尾の30は2から254までの間で好きな数字を当てはめても良い)
サブネットマスク:255.255.255.0
デフォルトゲートウェイ:記述しなくても良いが、記述するなら、通信の相手方のIPアドレス(ここではID-RP2C)を書きます(172.16.0.1)。
ここからの操作にはネットワークの基礎知識が必要になります。
<この続きは>
次はインターネットへの接続です。D-STARゲートウェイ・サーバはID-RP4000V等のD-STARレピータがD-STARトランシーバーからの電波(デジタル信号)を受信し、それをID-RP2Cを経由してインターネット回線に流すための中継装置のことです。市販のパソコンにLinuxというオペレーティングシステム(OS)をインストールしてJARLの管理サーバとも通信を行い、逆にインターネットからの信号をレピータ装置に引き渡す働きもあります。アクセス用トランシーバーの設定やゲートウェイ・サーバの構築を紹介したいと思います。