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No.160 「超小型モビリティのいま」
11月21日、報道関係者向けに公開の「第43回東京モーターショー2013)」を取材しました。会場は「ハムフェア」と同じ東京ビッグサイト(東京都江東区)の東展示棟(東1〜6ホール)と西展示棟(西1〜4ホール)に12カ国178社、35ブランドが参加して華やかに開催されました。内外の新車を見る楽しみもありますが、今回は西展示棟4階西3・4ホールで開催されたSMART MOBILITY CITY 2013に展示、体験試乗できる新ジャンルの超小型モビリティに焦点を絞りました。
「超小型モビリティ」とは
“軽自動車と原付自動車のあいだ”「超小型モビリティ」と表現されている車両です。国土交通省は「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人〜2人乗りの車両を「超小型モビリティ」と定義し、次世代社会を支える交通インフラとして導入促進を支援しています。魅力的な新車が並ぶ中、主催者のテーマ事業「SMART MOBILITY CITY 2013」で “近未来の移動ツール”を取材しました。
「超小型モビリティ」は全国各地(横浜・豊田市・神戸市など)で実証実験を実施中で、都市部や観光地での短距離移動での活用も模索しています。トヨタ自動車の3輪型電気自動車(EV)「TOYOTA i-ROAD」、日産自動車のニューモビリティコンセプト、本田技研工業のマイクロコミュータープロトタイプβなどがあります。
ここで本題に入る前に、アマチュア無線の再開から2年後に「第1回モーターショウ」が始められた時代背景を知る意味で。60年前を振り返り、今日の繁栄に導いた原点を確認しておきたいと思います。
60年の歴史
60年前の1954年(昭和29年)4月20日〜29日の10間、東京・日比谷公園で第1回モーターショーが開催されました。【第1回モーターショウ公式カタログ】には、自動車部門に三菱ふそう自動車、日野ヂーゼル工業、三菱日本重工業、日産自動車工業、トヨタ自動車工業、プリンス自動車工業、オオタ自動車工業、民生ディゼル工業、いすゞ自動車の9社、そして三輪自動車部門にダイハツ、東洋工業、二輪車部門に富士重工、本田技研工業などおなじみの社名を見つけました。
第1回MOTOR SHOWカタログの表紙
一方、アマチュア無線の再開は1952年(昭和27年)7月29日、JA1AA、JA1AF、JA1AH、JA1AJ、JA3AAに予備免許を交付、同年8月27日に本免許になりました。そして、マイカーがまだ高嶺の花のころ、1961年(昭和36年)9月16日、日本モービルハムクラブが「JMHC会報No.1」を発行しました。記事はJA1YF石川源光氏が巻頭言、JA1OS柴田俊生氏が「モービルハムクラブの現状」、JA1DWI山田豊雄氏が「ヘイロウ、アンテナの実験」が当時の状況をそれぞれ綴っています。
JMHC会報No.1(1961年9月16日)
中でも会員の「モービルハムの車種別保有比率」に興味が惹かれます。それによるとコロナ13%、マスター5%、セドリック5%、ダットサン3%、プリンス20%、ルノー14%、ヒルマン8%、スバル8%と国産車が増えてきた様子がわかり、MG、オペル、フィアット、オースチン、フォード、シボレーなど外国車がみられ、52年前の車の普及状況がわかります。車載無線機は米軍放出のPRC-6、BC-1000、RT-66改造、RT-68、RT70、自作機も見られるもの、まだ専用のメーカー無線機はなく、1964年(昭和39年)末、アイコムがアマチュア無線機の第一号機を開発、販売するまで待たねばなりません。
プレスキットはUSBメモリ
かつてのモーターショーはプレスキットの収集と持ち歩く紙袋が重くて大変でしたが、今回は様子が少し違いました。PORSHEとAudi、BMW、トヨタ紡織はロゴやマーク入りのUSBメモリ(4GB〜8GB)を配布していましたし、メルセデスベンツはDVD、トヨタにはモーターショー専用サイトを紹介されました。つまり写真や資料、カタログは、USBメモリにニュースリリース(PDF)と写真・動画が収録されており、これらが自由に使えるというスマートな対応です。もちろん、モーターショーのもう一つの花形、出展各社のクルマがすべて収録されている「自動車ガイドブック」2013-2014 Vol.60(DVD付き)1,143円+税(A4判358頁、日本自動車工業会)を加えて資料収集は万全です。
自動車ガイドブック(2013-2014)vol.60
カタログはUSBメモリ、DVDで提供された。
超小型モビリティ
ここで本題に戻ります。国土交通省から提示されている超小型モビリティの車両要件は、
(1)長さ、幅、および高さがそれぞれ軽自動車の規格内(軽自動車は全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下)
(2)乗車定員2人以下、または運転者席および2個の年少者用補助乗車装置を装備
(3)定格出力8kW以下(内燃機関の場合は125cc以下)となっています。
運行要件は、
(1)高速道路を走行しないこと、
(2)地方自治体などにより交通の安全などが図られている場所において運行することと定められています。
こうした規格のもとに若者向け近未来モビリティ、子育て向け、高齢者向け、日常生活の足としての実証実験が各地で始まりました。
次に「超小型モビリティ」と「パーソナルモビリティ」を紹介します。
ホンダ マイクロコミュータープロトタイプβ
公用車から宅配、子育て家族、高齢者までをカバーする目的で開発されたマイクロコミューター。今回のプロトタイプは後部に子供用2人分のシートを備えたモデルだが、後席を1人乗りにしたモデルも発表されている。全長2500mm、全幅1250mm、全高1445mm、車両重量400kg以下、】出力15kW、最高速度80km以下、航続距離約60km、定員1〜3人。
ホンダ マイクロコミュータープロトタイプβ
NISSAN ニューモビリティコンセプト
日産の親会社ルノーとの共同開発車。フランスでは「ルノー・トゥイジー(Twizy)」として市販されている。ボディサイズは全長2340mm、全幅1230mm、全高1450mmで前後に1人ずつシートが備わっている。動力源はリチウムイオンバッテリーで出力は定格で8kW、最高15kW、航続距離は約100km。斜め上に開くドアは狭いところでも乗り降りできる。後席は子供が乗車でき、荷物を置くのに便利。
NISSAN ニューモビリティコンセプト
TOYOTA i-ROAD(アイ・ロード)
最新のパーソナルモビリティコンセプトカー。前2輪、後1輪で駆動は前・左右輪にそれぞれ1基ずつモーターを備えている。方向舵は後輪の一輪を用いて行う。カーブなどで車体が大きく傾くが、バランスをとりながら走行できるのが特徴。全長2350mm、全幅850mm、全高1445mm、空車重量300kg、出力2kW×2、最高速度45km/h、一充電走行50km、定員2人。
TOYOTA i-ROAD(アイ・ロード)
トヨタ車体B/COM
パーソナルユース仕様。4輪の安定感、簡単な荷物を運ぶことができる新しいモビリティ。コンパクトなボディサイズによる取り回しの良さと家庭用100V電源で充電できる超小型EV。道路交通法上はミニカーなので、普通自動車免許が必要。時速60km、充電時間約6時間、万充電1回当たり約154円、市街地走行で約50km、車検・車庫証明・重量税・取得税は一切不要、全長2395mm、全幅1095mm、全高1495mm。ビジネスユースのP/COMもある。
トヨタ車体B/COM
トヨタ車体T/COM
国土交通省の定める超小型モビリティ認定制度に対応したコンセプトEV(電気自動車)。1人乗りコムスのコンパクトさはそのままに、二人乗りレイアウトよる2名乗車を実現した外形スタイルとドアを織り込んでいる。全長2395mm、全幅1145mm、全高1575mm。
トヨタ車体T/COM
パーソナルモビリティ
近未来の移動支援ツールとして期待されているパーソナルモビリティ。
ホンダ「UNI-CUB」は体重を移動させるだけで、誰でも簡単に操作できるパーソナルモビリティ。前後左右や斜めへの動きが可能で、静止状態でスタンドを立てれば、椅子として利用も可能。 トヨタ自動車のWingletは最高速度が約6km/h、1回の充電で4kmの走行が可能、ハンドルを手で握る「Winglet LONG TYPE(ウイングレット)の体験走行もあった。
また、ジード社の「ZieD α1」はハンディキャップのある方を前席に乗せて一緒に移動する。後席の操作者が進みたい方向に軽くハンドルを動かすだけで移動し、カメラやレーザーレンジファインダなどのセンサーにより障害物を自動検出して回避する。
ジード社の「ZieD α1」
まとめ
「超小型モビリティ」はクルマ対クルマの相互通信、クルマ対歩行者のコミュニケーションにスマートフォンを利用した実証実験が実用段階に近づいていますが、この機会にアマチュア無線界も超小型モビリティに小型のVHF/UHF帯のトランシーバーを装着した通信環境を創造できないかと考えました。アマチュア無線は資格取得と無線機等の購入の他は、基本的に費用が掛かりません。この強みを生かして通信操作を簡略化した新型の無線機の開発と、ハンズフリーによる安全な運用を徹底的に追及したシステムで、モービルハムの未来像を見たいと思います。
参考資料:自動車ガイドブック 2013-2014 vol.60 日本自動車工業会