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No.174 「IC+TRラジオキットKIT-16SPの組み立て」
NPO法人「ラジオ少年」※のホームページでラジオキットKIT-16SP(Radioboy)を見つけました。これは初心者がラジオの組み立てを想定したキットで基板の銅箔面に抵抗、コンデンサ、IC、TRなどのパーツを半田付けすると短時間に完成に至るという超簡易型のラジオキットです。なお、本稿は指導者向けにハウツーをまとめましたので、「うんうん、その通り。」とうなずきながら読了いただければ幸いです。
KIT-16SP はKIT-16Jrのデラックス版で、プラスチックの前面パネルと基板を乗せる木の板、スピーカー、電源スイッチ、バーアンテナが追加されたラジオらしいキットです。幅150mm×高さ63mm×奥行90mmのサイズに45Ωのスピーカー(SP)をパネルに装着して出力30mWもあり、静かな部屋で十分な音量があります。電源に単3乾電池2本を使います。
※ http://www.radioboy.org
完成したKIT-16SP
KIT-16SRを注文
NPO法人「ラジオ少年」のホームページ(HP)からKIT-16SP(990円)を注文しました。その際、送料の欄に注文金額5000円まで送料500円となっていましたので、もう一台(FMラジオキットFM-3900円)を併せて注文することにしました。こうすると一台当たりの送料は250円となる計算で経済的です。代金の合計(990円+900円+送料500円)を郵便振替で送金すると、ほどなくして旧知の原恒夫氏(JA8ATG、NPO法人代表)から写真のようなキットが送られてきました。
KIT-16SPの全パーツ
KIT-16SPの基板(銅箔面に部品を半田付けする)
パーツセット
IC、TR、C、Rセット | 1 |
プリント基板 | 1 |
バーアンテナ | 1 |
バーアンテナスタンド | 2 |
ポリバリコン | 1 |
ダイヤルツマミ | 1 |
電池ケース | 1 |
電池ホルダー | 1 |
スピーカー | 1 |
白、黒、赤の線 | 各1 |
ねじセット | 1 |
プラスチックパネル | 1 |
木の板 | 1 |
IC、TR、C、Rセット
IC | TA7642 | 1 |
トランジスタ | BC517 | 1 |
抵抗 | 10kΩ | 1 |
抵抗 | 100kΩ | 1 |
抵抗 | 2MΩ | 1 |
コンデンサ | 0.01μF (103) | 1 |
コンデンサ | 0.1μF (104) | 1 |
感度調整用抵抗 | 15kΩ | 1 |
IC、TR、C、Rセット
ストレート式ラジオ
KIT-16SPはKIT-16Jrと同じストレート式ラジオです。回路が単純なため部品点数が少なく小学生にも扱いやすいように、事前にIC、TR、抵抗、コンデンサを除く電池ケース、ポリバリコンなどの部品を予め取り付けておきます。組み立てに掛ける時間が1時間程度と短いこともあり、短時間で済ますためのやむを得ない処置としています。
KIT-16SPの回路(※クリックすると画像が拡大します。)
実体図と半田付けを終えた基板
十分な時間が取れる時はラジオの原理から始めて部品の知識、そして半田ごての扱い方などを話しておきたいところですが、ラジオキットを作る場合は、いきなり実践的な作業に取り掛かります。初心者にありがちなイモ半田※、TR・IC等の足の接続間違い、半田の盛り過ぎなどのトラブルが避けられないため、マンツーマンによるラジオ作りになりがちで、「それがラジオの組み立てといえるか?」との批判を受けることもありますが、ラジオ作りを通して電波に興味を深めてもらえればと考えています。
※半田付けの温度・時間などの条件が悪く、芋のような形になったハンダを言います。フィレット(富士山のような裾広がりの形)が形成されなければハンダの強度が低く、導通不良になる場合があります。
KIT-16SPの背面
KIT-16SPを真上から見る
いきなり動作不良
KIT-16SPキットの組み立てを実践してみました。30分ほどで完成して電源スイッチを入れると、発振気味で明らかに感度不足の症状です。電源スイッチをオフにして基板を点検するとコンデンサ0.1μFのイモ半田を見つけました。半田ごてを銅箔面に当てて溶かして一件落着しましたが「一発で動作する」と自信を持っていましたから恥じ入るばかりです。自作機時代を過ごしたアマチュアにしてこの有様ですから小さなお子さんには、山ほどの失敗があっても不思議でありません。
部品のつけ間違い
トラブルを上げるときりがありませんが、代表的な事例としては3端子IC(集積回路)のE・OUT・Eのつけ間違い、TR(トランジスタ)の足も同様、イモ半田、ランド間の短絡等が上げられます。これらのトラブルを防ぐあるいは解消するために見守るわけですが、本来は半田ごての正しい使い方に始まりやけどの注意、ICとTRの端子の見方、R(抵抗)のカラーコードとC(コンデンサ)の表記の読み方、そして基板への装着方法など、各パーツの取り扱い方をおぼえてもらいたいところです。
ICの足に黒錆
ICの足に生じた黒錆に悩まされた事例です。この黒錆を水虫という人もいるくらいで、トラブルの発見に手間取りました。半田ごてにはじめて触る小学生が組み立てたラジオが動作しないというので、基板を点検すると抵抗、コンデンサ、IC、TR等の半田付けはいずれも適正に見えました。部品の不良かと思いながらいわゆるイモ半田を疑って半田ごてをしっかり当てました。
電源スイッチをオンにしてもイヤホンから音が出ません。目視により各所を点検するとIC(TA7642)の3本足(IN OUT E)に変色が見られましたので、もしかして黒い皮膜(さび)が導通不良の原因ではないかと推測しました。基板からICを外し足の錆取りと半田メッキを施して再び装着して、スイッチをオンにすると放送が受信できるようになりました。通常はテスターなどの測定器を使いませんので、経験と勘がトラブルの解消に役に立った事例です。
必要な工具
プラスドライバ、ニッパ、そして半田ごてと半田があると組み立てに十分です。ほかにラジオペンチかピンセットがあると組み立てがスムーズに運ぶと思われます。部品の取り外しにハンダ吸取線、あるいは半田吸取器が使われる場面もありました。
組み立てに使った工具類
あとがき
KT-16SPは自作時代のラジオを思い出させてくれるデザインで気に入りました。手作り感がいっぱいのラジオをシャックのマスコットにしても良いですし、非常用ラジオとしても有効です。作ったラジオはお孫さんにプレゼントしても喜ばれるでしょう。なお、ID-51などハンディ機はラジオ(AM、FM)放送を受信できますので、停電時の情報ツールとして有用なのはもちろんです。