10月29日から11月8日までの11日間、東京・有明の「東京ビッグサイト」の東・西展示棟にて、一般社団法人日本自動車工業会により「第44回東京モーターショー」が開催されました。国内の乗用車、商用車、二輪車メーカーの他に8年振りに復帰したFCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)グループ、フランスのDSブランドの海外ブランドが集結し、世界初発表75台、日本初発表68台を含む417台が展示されました。テーマ事業「SMART MOBILITY CITY 2015」では近未来「明日の街」を展開するとともに、自動運転をテーマとしたコンセプトカーの展示と国際シンポジュームを開催して"自動運転ビジョン"が発表されました。

「世界で最も安全、効率的で、自由なモビリティー社会の実現を目指す」

事故ゼロ、渋滞ゼロ、自由な移動と高効率な物流を目標とし二輪車、自転車、歩行者を含む、全ての交通参加者のために、自動運転技術を役立てる。

photo

東京ビッグサイト「THE 44th TOKYO MOTER SHOW 2015」の入口

始まりは1954年

1954年4月20日~29日、日比谷公園で仮設テントと屋外展示で始まった第1回全日本自動車ショウは54万7,000人を集めて開催されました。以後、第6回~第27回が東京国際見本市会場(第11回大会より東京モーターショーに改名)、第28回~第41回が幕張メッセ、第42回から会場を有明の東京ビッグサイトに移して第44回へと続いています。因みに2013年の第43回大会の入場者数は10日間で90万2,800人でした。

入場券、自動車ガイドブック

一般公開日の10月30日から11月8日まで当日入場券一般1,600円(1,400円)、高校生500円(400円)、中学生以下 無料(括弧内は前売り入場料)。そのほかプレビューデー入場券3,500円、アフター4入場券一般700円、高校生 200円などの料金設定がなされていました。そして「自動車ガイドブック」は約800台の車をオールカラーで紹介しており、資料として優れた1冊となっています。2015-2016・Vol.62 A4判、432頁、一部和英併記の定価1,200円、電子版900円。ブックサービスから購入できます。

http://www.bookservice.jp/bs/ItemDetail?cmId=6457741

photo

自動車ガイドブック(左)と会場で配布の冊子(右)

注目の自動車

東京ビッグサイトの広い会場を歩き回り、モーターショーならではのコンセプトカーや参考出品、試作車などを見て存分に取材しましたので、次に筆者が注目する燃料電池車と電気自動車について紹介します。

水素ステーション

HITACHIの燃料電池車(FCV)用ディスペンサーのコーナーに立ち寄ると珍しいナンバーのトヨタMIRAIに出会いました。実際に富士山ナンバーの実車に出会うことはまれなのでしばらく見とれていました。「トヨタの研究所から借りてきました。」と係の人から聞いて納得しました。燃料電池は水素と酸素を化学反応させて電気を起こす発電機であり、その電力でモーターを駆動する、走行時に排出するのは水だけ、CO2や有害な排出ガスを出さない究極の自動車と理解しました。

液体定量吐出装置。液体を精度良く定量供給するコントローラ及びその周辺機器の総称。

photo

富士山ナンバーのMIRAI

「水素ディスペンサー」に課題が山積しているようです。同装置の設置には5千万円から1億円もの費用が必要とのことで、全国への普及が進んでいないように見受けられます。それでも資源(油田)を持たない国として無尽蔵の「水」から作る水素エネルギーは可能性に満ちています。現にHySUT (水素供給・利用技術研究組合) がHITACHIのHYDROGENを燃料電池自動車(FCV)のために、水素ステーションの設置を全国に進めていると聞きます。

photo

HITACHIの燃料電池車(FCV)用ディスペンサー

FCVに補給する水素の圧力は最高70MPa(メガパスカル約700気圧)、FCVを満タンにする時間が約3分、ガソリンの給油より早い印象です。約5kgの補給で500km以上走行できると言います。係員に促されて水素充填ノズルを持ってみると、ものすごく重く感じました。充填ノズルは高圧の水素が漏れないようにするため、特殊な金属が使われ、外見から想像できない重さを体感しました。充填中に車が誤って発進しても安全装置があるので水素が漏れる事故はないとのこと。ディスペンサーは水素を補給しているときに、充填ノズルを経由してFCV水素タンクの温度データを受け取り補給の制御をしています。

photo

水素充填ノズルは重かった!

photo

水素充填ノズルと充填口

新型燃料電池自動車

ホンダは、新型の燃料電池自動車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」を展示しました。燃料電池スタック(セルを100枚程度、直列に積層して結合した構造体)の小型化を図り、燃料電池パワートレインをV6エンジンと同等サイズのボンネット内に集約しました。これにより大人5人の乗車が可能になりました。同車は70MPa高圧水素貯蔵タンクを搭載し、一充填の走行距離を700km以上と発表しています。

電動駆動システム、燃料電池システム、リチウムイオンバッテリーシステム,高圧水素供給システム

photo

Honda 燃料電池自動車クラリティ フューエル

また外部給電器「CLARITY FUEL CELL」に別売の「Power Exporter 9000」を接続して、災害時などの非常用電源として活用できます。最大9.0kVAの出力があり、大きな避難施設でも利用可能としています。一般家庭のおよそ7日分の電力を供給可能であり、緊急時に排気ガスゼロの外部給電器として活躍する場面が考えられ、アマチュア無線機の電源としても活用できそうです。ホンダは発電機を50年前から作ってきましたので、そのノウハウが詰まっていると考えられます。

photo

外部給電器「Power Exporter 9000」

定格出力:9kVA

出力電圧:AC100・200V(単相三線式)/50,60Hz(切替式)

電力変換方式:インバーター方式

重量:約52kg 全長755×全幅387×全高438mm

出力端子:100V×6口、200V×1口

適用規格:V2Lガイドライン2.1版

商用電気自動車(EV)

日産の商用電気自動車「e-NV200」は、DC/DCコンバーターを搭載してAC100Vを取り出し、工事業のさまざまな電気機器、例えばインパクトレンチ、電気ドリル、電気カンナ、ハンドグラインダーなどに給電して使用することができます。駆動音の大きな発電機を持ち運ぶ必要がなく、地域のイベントで大型プロジェクターなどの電源にすることも可能です。そして災害時の電源としても、また移動運用のアマチュア無線機の電源としても使用可能です。なお、e-NV200の1充電走行距離は190kmと発表されています。

photo

NISSAN 商用電気自動車 「e-NV200」

photo

コールサインに見える"NV2OO"

リチウムイオンバッテリーから最大負荷AC100V、1500Wが使用でき、電池消費の目安は1000W×8時間です。コンセント1はダッシュボードに一か所、コンセント2は助手席後部の一か所の計2か所に設置されており、生活家電のほとんどが使えます。

まとめ

第44回モーターショーの全体を俯瞰すると、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)に塗りつぶされた感があります。一方、自動運転技術について各メーカーがしのぎを削り、実用化を目指したコンセプトカーを出展していました、自動運転関連技術を追究するパイオニア、安全運転支援システムを提案するアルパイン、次世代リチウムバッテリーの高容量版シングルセルを提供するSTYLE-D、グッドイヤーの発電するタイヤなどの技術展示も見応えがありました。また、映画『007』シリーズ第24作目『SPECTRE』に登場する「アストンマーティンDB9 GT」とISUZUの大型長距離輸送車「TX805トン積トラック」(昭和20年製)が目を引きました。11月8日(日)午後6時に閉幕して入場者数が812,500人と発表されました。次回は2017年秋の開催になります。

photo

FCV PLUS

photo

アストンマーティン「DB9 GT Bond Edition」

photo

昭和20年代に活躍した「ISUZU TX80 5トン積トラック」