「信越総合通信局が長野県上田警察署と共同で長野県上田市の国道において、普通乗用車に開設(アマチュア無線機を設置)した不法無線局の取締りを実施し、男性1名を摘発した。」という記事に衝撃を受けました。これまでのトラックやダンプカーに加えて普通乗用車に取り締まりを広げた事実に注目をせざるを得ません。正規のアマチュア局が検問を受ける機会が増えるかもしれませんので、対策を考えてみました。

免許切れ、それとも

「北海道総合通信局は無線従事者免許証を所持していながら、不法無線局を開設したとして無線従事者2名に対して無線従事者の従事停止処分を行いました。

(1)石狩市在住の無線従事者(第三級アマチュア無線技士、第四級アマチュア無線技士)(男性34歳)。 無線従事者の従事停止:17日間 (2)中川郡幕別町在住の無線従事者(第四級アマチュア無線技士)(男性53歳) 無線従事者の従事停止:17日間」

無線従事者免許証を持っていて開局申請を怠ったのでしょうか。それとも免許の失効に気付かずに運用したのでしょうか。どちらにしても無線従事者の従事停止17日間の処分は不名誉というほかはありません。

職務質問

友人の体験です。対向車線にパトカーを視認したところで、そのパトカーがUターン、追尾して停止を命じられました。警察官は「危険なものを所持していないか?」といいながら車内に鋭い視線を向けました。ワゴン車にモービルホイップアンテナを林立させていましたから何か(過激派)の疑いでしょうか。危険物がないとわかると、警察官は無線設備に言及することもなく、また無線従事者免許証の提示を求めることもなく、それ以上詮索することなく立ち去りました。複数以上のアンテナを付けたモービル局は少なくありませんから、それを理由に職務質問を受けるのはいい気持ちではありません。

不法無線局取締り

総合通信局が警察署と共同で行った不法無線局の取り締まり事例を紹介しておきます。

【事例1 】近畿総合通信局は大阪府交野警察署管内において、同警察署及び四條畷警察署と共同でトラック等の車両に開設した不法無線局の取締りを実施し、自己の運転する車両に不法無線局を設置していた大阪府寝屋川市在住のダンプ運転手(68歳 男)と大阪府門真市在住のダンプ運転手(61歳 男)の2名を電波法違反で摘発しました。

【事例2 】関東総合通信局は栃木県佐野市内の国道293号線において、栃木県佐野警察署と共同でダンプカーの車両に開設した不法無線局の取締りを実施し、栃木県佐野市在住の男性(62歳)は無線従事者の資格を取得しているにもかかわらず、自己の運転するダンプカーに免許を受けずにアマチュア無線機を設置し不法無線局を開設した。栃木県足利市在住の女性(42歳)は無線従事者の資格を取得しているにもかかわらず、自己の運転するダンプカーに免許を受けずにアマチュア無線機を設置し不法無線局を開設したとして2名に電波法第4条の違反容疑で摘発しました。

【事例3 】中国総合通信局は総務大臣の免許を受けずに無線局を運用した鳥取県在住の無線従事者(男性36歳)に対して、17日間の従事停止処分を行いました。鳥取県西伯郡在住の無線従事者は無線局の免許を有していないにもかかわらず、自己の運転するダンプカーに開設されたアマチュア無線局を運用していたもので、鳥取県米子市で実施した電波監視により、呼出符号(コールサイン)を送出しない無線通信を捕そくしたことから、電波法違反の事実が発覚したものです。

事例1~3はいずれも「車両に免許を受けないでアマチュア無線機を設置して不法無線局を開設」して処分を受けました。事例2の従事者免許を持つ2人は、開局申請を怠ったのでしょうか。事例3は呼出符号を送出しない無線運用に警鐘を鳴らすものです。

必携2点セット

移動する局が携帯しなければならないのは何か、友人に聞いてみました。

「無線局免許状と従事者免許状じゃないかな。」

「正しくないですね。」

「正解は従事者免許証と無線局免許証票の2点セットです。」

「免許状はいらないの?」

「免許状は常置場所に掲げておくのが決まりです。」

「免許状と従事者免許証があれば良いと思っていました。」

「それは誤りです。」

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従事者免許証入れと総合通信局から送られてきた無線局免許証票

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無線局免許状は無線設備の設置場所/常置場所に掲げてあります。

移動する局50W無線局免許状(上)と200Wの無線局免許状(下)

そこで、関東総通のホームページ、【電波環境】に移動する局の運用にあたっての決まりが記載されていますので、ここに再掲しておきます。

http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/re/info/ama/index.html

運用にあたって

1. 無線の免許証(従事者証)を常に携帯してください。

2. 無線設備の設置(常置)場所に免許状を備え付けてください。(移動する局の場合 には、免許状の備え付けに代えて無線機に証票シールを貼ってください)。

従事者免許証入れ

ずいぶん前に、JARL頒布品の「従事者免許証入れ」を入手して使っています。これに「JARLライフメンバー会員証」と「無線従事者免許証」、「ARRLメンバーカード」、「NV1Jライセンス」「LOG BOOK」さらに「JA1ZNGメンバーカード」などを収納してあります。運用に当たり必要なのは従事者免許証のみですが、何かあったときに提示できるように携帯しています。これは個人的な準備に過ぎませんので、そうしなくてはならないというわけではありません。

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ID-31のバッテリーパックを外して無線局免許証票を貼付した例

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セパレートタイプの無線機本体に無線局免許証票を貼付した例。

免許状のコピー

無線局のコールサイン、免許の有効期間等は「無線局情報検索」で調べがつきますが、十代の頃に取得した無線従事者免許証では、写真の顔付きが変わっていて本人確認が無理かもしれません。こうした心配を裏付けるかのように、「証票には免許の番号等は記載されていないので、運用時にはできるだけ無線局免許状を持っていくように」と勧める向きもあります。また無線局免許状の汚れや紛失を嫌ってコピーに代える方もおられますが、あくまでも本物ではないので気休め程度の効果しかないと思われます。

まとめ

移動する局には「従事者免許証と無線局免許証票の2点セット」が運転免許証と同じように大切ですので、後顧の憂いなく準備を万全にして取締りに遭った時に備えたいと思います。ハンディ機は筐体に貼り付けた場合、証票がはげ落ちる恐れがありますので、バッテリーを外した箇所に証票を貼り付けておくのも一つの方法です。また、モービル機(セパレート機)の場合、コントロール部と本体部のどちらが良いかは、証票が剥がれない場所に貼っておくのが良いとされています。