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No.185 「ハンドヘルド・スペクトラムアナライザ」
広帯域(15MHz~2,700MHz)のハンドヘルド・スペクトラムアナライザ ※1(RF Explorer 3G Combo)を紹介します。以前からスペクトラムアナライザ(以下、スペアナと略称)に興味がありましたが、素人には高価であり操作も難しそうなので手が出ませんでした。ある時、チャンスが巡ってきました。友人たちが集うメーリングリストに書き込みがあり、そこでハンドヘルドの「RF Explorer 3G」が紹介されました。手ごろな価格(28,500円+送料)に使ってみたくなり、秋月電子通商の通販に注文しました。
RF Explorer 3Gはハンドヘルドのスペアナで充電式バッテリーと内蔵ディスプレイにより単体で動作するため、ハンディ機のように野外等に持ち出して測定できる強みがあります。用途をマニュアルから拾い読みしてみました。無変調連続波、ISMバンド※2のモニター、電波の品質測定、アンテナと増幅器の取替による指向性の変化やノイズを出していないかの解析、WiFi (2.4GHz帯)チャンネルの電波強度モニター、占有帯域の検出、現在値・平均値・最大値の表示、WindowsとMac OS用のソフトウェアによるスペクトラム表示などが挙げられています。
※1 スペクトラムアナライザ(Spectrum analyzer)は横軸を周波数、縦軸を電力または電圧とする二次元のグラフを画面に表示する電気計測器です。表示は、画面を左から右に周期的に掃引される光点によってなされます。略してスペアナと呼ばれます。
※2 産業・科学・医学用の機器に用いられている周波数帯で、これらの頭文字をとって「ISMバンド」(Industry Science Medical band)と呼ばれます。
RF Explorerシリーズには6GHz帯対応の6G Combo(43,800円)もあります。さらに2015年12月になり、ハンドヘルドRF Signal Generator(信号発生器)の発売をネット上で確認しました。これをトラッキングジェネレータ※3としてRF Explorer 3G Comboと組み合わせると、アンテナの帯域幅やSWR測定、LCフィルターの周波数特性を知ることができます。
※3 トラッキングジェネレータはスペアナのスイープに合わせて周波数を変化させる信号発生器。スペアナが1MHzをスイープしているときは1MHz、1GHzの時は1GHzを出力します。トラッキングジェネレータの出力をフィルターの入力に接続し、フィルターの出力をスペアナの入力に接続すると、フィルターの周波数特性を見ることができます。
RF Signal Generatorをネットで調べると独国のオンラインショップWiMoと米国amazonにRFシグナルジェネレータがヒットしました。値段を比較して米国Amazonで購入を進めると、アカウントがないために注文できないことが分かりました。気を取り直してWiMoに注文するとクレジットカード決済で受け付けてくれてほっとしました。また、注文からわずか1週間で手元に届いたのには驚かされました。価格は本体142.02 EUR、梱包と郵送料28 EUR、その他4 EURの計174.02 EUR(約23,000円)でした。
http://www.wimo.com/rf-explorer-spectrum-analyser-signal-generator_j.html
RF Explorer 3G Combo(左)とHandheld RF Generator(右)
RF Explorer 3G Combo
RF ExplorerはグラフィックLCD液晶(128×64ピクセル)白色LEDバックライトを搭載した親しみやすいデザインです。天頂部に付属のアンテナを(右側SMA:15MHz~2,700MHz、左側SMA:240MHz~960MHz)を装着します。マニュアル(英文)にざっと目を通して直感的にキーを押してみました。ENTERとMENUと左右・上下の矢印ボタンを押して周波数、バンド幅、トップ視覚振幅(dBm)を任意に設定できました。
RF Explorer 3G Comboの各部の説明
主な定格
測定周波数帯域:15MHz~2700MHz
周波数安定度:±10ppm
振幅精度(標準値):±3dBm
表示分解能:min、帯域幅/112(平均)
信号レベル分解能:0.5dBm(平均)
周波数設定精度:1kHz
表示帯域幅:112kHz-600MHz
アンテナ端子:2×SMA(ジャック)
アンテナインピーダンス:50Ω
ディスプレイ:128×64ピクセル(白色LEDバックライト付)
ダイナミックレンジ:-115~0 dBm(平均)
ノイズフロア:-115dBm(平均)
最大入力:+5dBm
WiFiアナライザー:2.4GHz帯13チャンネル(右側SMA)
コントロールソフト対応OS:Windows XP/Vista/7/8/8.1(32Bit/64bit)、Mac OS×10.7~電源:充電式内蔵バッテリー(3.7Vリチウムポリマー、1000mA) / USB電源供給・充電
重さ:220g
サイズ:113×70×25(mm)
RFジェネレータ機能:非搭載
付属品:8段広帯域ロッドアンテナ、2.4GHz帯用ヘリカルアンテナ、保護用ケース
オープニング
始めにRF-Explorerユーザーマニュアル(英文)をダウンロードします。
http://akizukidenshi.com/download/ds/rfexplorer/RFExplorer_UserManual_v1_11.pdf
天頂のパワースイッチをONにするとRF Explorerが起動して、RF CONECTION(SMA左・240-960MHz、SMA右・15MHz-2700MHz)の画面に切り替わり、メインスクリーン(スペクトラムアナライザモード)になります。
スペクトラムアナライザモード ― メイン画面
430MHz帯をモニター
続いて【MENU】ボタンを押すごとにFREQUENCY MENU-ATTENUATOR MENU-CONFIG MENU-OPERATIONAL MODEに切り替わります。
FREQUENCY MENU(周波数メニュー)
ATTENUATOR MENU(減衰器メニュー)
CONFIG MENU(設定メニュー)
OPERATIONAL MENU(運用メニュー)
FREQUENCY MENUにてENTERを押すと数字が点滅するので上下・左右のボタンを使い、Center Freq:0430.000、Freq Span:020.000、Start Freq:0420.000、Module:15-2700Mに設定しました。その時の設定画面とスペアナ画面を示します。
FREQUENCY MENUを430MHz帯にセットする
カリキュレータ MAX
ID-31で送信したスペクトラム
カリキュレータ Max Hold
カリキュレータMax Hold
OPERATIONAL MODEでRF Generatorを選択すると「この機能は選択したモードで使用できません。」のメッセージ(英文)が現れます。「WiFi Analyzer」は2.4GHz帯を表示しました。
RF Generatorを選択すると出るメッセージ
WiFi Analyzerの画面
タブレットPCにスペクトラム
このスペアナはPCのUSBポートを通じてデータを転送できますので、RF ExplorerのWebサイトから無償のプログラムと(RF Explorer Spectrum analyzer Firmware Upgrade V.1.11 ZIP(2MB))とUSBドライバ(32 and 64 bits - version 6.7)をダウンロードしてFujitsu FMVNQ4LEタブレットPCにインストールしてディスプレイにスペクトラムを表示しました。http://j3.rf-explorer.com/
タブレットPCにRF ExplorerにMini-USBで接続する
タブレットPCに展開するスペクトラム
あとがき
ハンドヘルド・スペクトラムアナライザのRF Explorer 3G Comboの受信範囲が広いことから「電波モニター」としての使用価値が高いと考えましたが、JR1VMの1200MHz FMレピーターの修理の際、送信部前段の周波数と出力レベルをスペアナで確認できたのは大きな収穫でした。また、小型のドローンを草むらに落として見失い、RF ExplorerでFoxハンティングの要領でドローンを探す動画をYouTubeで見て、そのような使い方もあるのだと感心しました。近いうちにRFシグナルジェネレータと組み合わせてスペアナの実力を実感したいと思います。