3月3日、「1エリアSSTV 07年新年会・東京」のミーティングに参加しましたので、その様子を伝えたいと思います。会場は、JR東京駅八重洲北口から3分の”ホテル八重洲龍名館”を貸し切り、1、3,6,7,8エリアからあわせて51名のSSTV愛好家 が集まり懇親会と講演会を開きました。世話役の斎田さん(JA1BKI)から「講演会は全国大会並みにプログラムを充実させましたので、先進技術に耳を傾けてほしい」と挨拶があり、ミーティングの在り方について「研究発表に力を入れるべき」と、自らの考えを披露しました。翌日(4日)、早朝から5人の講師による4つの講演が行われました。

1エリアSSTV2007年新年会・東京 懇親会

1.海外のデジタル画像通信ソフトの現況 JA6AQV 植田さん
2.最近のデジタル画像通信とその運用状況 JA1HHL 八木さん
3.MMSSTVとHAMLOGについて質問と回答 JE3HHT 森さん、JG1MOU 浜田さん
4.パソコン応用の無線通信 JA7UQ 鹿間さん

「海外のデジタル画像通信ソフトの現況」を講演する植田さん(JA6AQV)

「最近のデジタル画像通信とその運用状況」を講演する八木さん(JA1HHL)

デジタルSSTVプログラムの変遷(by JA6AQV)

「画像・その他のファイル」を「デジタルモード」に変換して送受信する方式のプログラムは、2003年後半からソフトの開発が始まり、アップデートが頻繁に行われるようになる。プログラム名にDIGIをつけたものが多く、フルネームで呼ばないと区別がつかなくなった。データを伝送する技術の進歩でアナログ無線での変調方式のAM・DSB・RZSSB・SSB・VSB・FM・PM、デジタル変調では、ASK・VSD・FSK・GMSK・AFSK・BPSK・QPSK・QAM・CDM・OFDMなどが研究開発されている。

1.ソフトウェアの履歴(変遷)

DigiPan 1999~2003 BPSK31 BPSK63 QPSK31 FSK31 Pactor RX KH6TV UT2UZ UU9JDR (PSK・FSKモードのみ)
Mix W 1999~2004 SSTVを含むマルチモード (MFSKで小さいサイズの画像の送信が可能 UT2UZ UU9JDR
デジタルSSTVSSTV送受信実験(Win DSTV) 1098 JG1HYH
Hamdream 2001~2004 DRM HB9TLK
DigACE 2005 JP2・JPG・NEW RDFT Martin G3OQD
DigPal 2005 Digital・SSTV RDFT  VK4AES
SSTVPAL Multi Mode 2004~2005 RDFT
DIGITRX 2004~2005 RDFT DRM PY4ZBZ
WinDRM 2004~2005 DRM Francesco Lanza HB9TLK
HamPAL 2005~2006/Jan DRM Erick VK4AES
EasyPAL 2006/Sep~ DRM Erick VK4AES
EasyDRM 2007/Jan~ DRM Erick VK4AES

2.プログラムの伝送システムについて(略)

3.デジタル(SSTV)ソフトの運用(略)
「アマチュア無線用コンピューター・プログラム」CDの配布(無料)がありました。

最近のデジタル画像通信の現況(by JA1HHL)

各バンドの運用状況を次のように報告しています。3.528MHz:毎朝5時前後から8時ころまでJA1SRV、JR2BCT、JP3NRE、JA4HI、JA5AZH、JH7JLJ、JE9URWなどが運用している。7.033MHz:全エリアの局がデジタル画像を楽しんでいる。この周波数に受信をセットしておけば一日中画像が楽しめる。

14.224MHzと14.221MHz:1エリアから8、6エリアが交信できる。午後まで入館するのは沖縄。HL1AQが朝ときどき出ているほかロシアのUA0LVOその他が時々出てくる。メキシコのXE1RKもこの周波数で呼んできた。夕方、VKとデジタル画像通信が14.300MHzでQSOできたことがあった。14.221MHzで沖縄のJS6EYPが毎日さまざまな3D画像(立体画像)をJA2CX/3と交換している。コンディションにより、HL、UA、BV、VK、4F1BYNやベトナムの3W3Aなど。21.340MHz:BV9AAがDIGTRXで待ち構えている。Eスポ発生時とローカルQSO以外は使われていない。28.680MHz:21メガと同じ、アクティビティがない。

50.300MHz:ここで呼び出して他の周波数に移って交信している。東京都町田市から東京、千葉、茨城の局と交信できた。144.290MHz:横浜のJA1IZ竹内さんがリーダーになって10局くらいがラウンドQSOをしている。毎週火曜日の20時からアナログ1時間、デジタル1時間で22時ころまで交信。430.470MHz:昭島市、相模原市、川崎市の局と週末の19時から21時ころまでデジタルで交信している。町田市からは多摩丘陵の障害や建物等の乱反射でビームアンテナよりグランドプレーンのほうがラウンドQSOに向いている。438.20MHz FMでも聞こえる。1200MHzFM:アナログSSTVでコンテストのときにQSOするのみでデジタルはやったことがない。

デジタル画像の素材:デジカメで撮った芸術的な作品が多くプロ級の腕前の人が多い。旅行したときの写真やドライブの珍しい写真、きれいな景色、植物の花や実、動物、建物、シャック、家族、わが町の行事などの写真、スキャナーで取り込んだ写真など、高解像度ゆえに葉の葉脈1本やトンボの羽の筋まで見えることもある。アニメーションGIF画像では、小さい画像ながら動く画がおもしろい。

テキスト・ファイル、インターネット・エクスプローラー(IE)を送ることができる。ソフト自体にTWAIN機能があるのでWEBカメラを使ってライブ画像を送れる。ほかにビデオキャプチャーを使ってTVやビデオカメラの画像も素早く送ることができる。フルカラーの3D立体画像を楽しんでいる人も多い。

A4判にプリントしたデジタルSSTV画像(JA1HHL)

A4判にプリントした3D立体画像 赤青のメガネでみる(JA1HHL)

MMSSTとHAMLOGの作者に質問

SSTV(スロースキャンTV)通信ソフトは、JE3HHT森さんが開発したMMSSTV(フリーウエア)が世界標準で使われています。因みにRTTYの通信ソフトMMTTYも森さんの開発によるものです。そして、ログソフトTurbo HAMLOG(フリーウエア)の作者、浜田さん(JG1MOU)のお二人に質問する時間が設けられました。折から新OSが発売されたばかりとあって「MMSSTVはWindows VISTAに対応しますか?」に、「まだやったことがないのでわかりません」という率直な回答に爆笑する場面もあり、和やかな雰囲気の中で作者でなければ答えられない、明解な解説に大満足の時間を過ごしました。

MMSSTVとHAMLOGを関連付けた画面

パソコン応用の無線通信(by JA7UQ)

鹿間さんはインターネットを介した「グローバル・アンテナ・サーバー」の仕組みを紹介し、分かりやすく実演して見せてくれました。グローバル・アンテナ・サーバーは、各地に設置されたアンテナをインターネットに接続して共有しようというものです。アンテナとソフトウェア・ラジオ、ストリーミングサーバー、パソコンなどから構成されています。実際に高槻市と酒田市のアンテナ・サーバーにつないで、7MHz帯を受信して聴かせてくれました。

CQ 06年12月号の付録「ソフトウェア・ラジオ実験基板」は、自作好きのアマチュアを喜ばせてくれました。鹿間さんが試作したソフトウェア・ラジオは、受信周波数帯がDC~30MHzのマルチバンドであり、バンドパス・フィルタ付きの豪華版ですが、この試作品が「実験基板」の原型になったということで興味をひきました。ソフトウェア・ラジオは、受信した信号を内部でデジタル信号に変換して復調、ノイズ処理、増幅を行うものですが、このラジオのフロントエンドを使用して、バンドを丸ごとストリーミング(データを受信しながら同時に再生する技術)、ユーザーはパソコンでバンド内を自由に選局できるものです。この後、パソコン4台を使ったSSB信号の発生と送信実験が報告されました。(略)

「パソコン応用の無線通信」を講演する鹿間さん(JA7UQ)

鹿間さんが試作した「ソフトウェア・ラジオ」

まとめ

講演会では、先進的な実験に耳を傾けることができました。これも優れた講師の人選と質の高いプロデュース(企画・製作)によるものと評価しています。植田さん(JA66AQV)は小学校教員を退職後、打ち込んでこられたSSTV研究の集大成として、緻密な調査に裏付けられた報告が光っていましたし、八木さん(JA1HHL)の積極的な活動から集めた内外のバンド情報は貴重なもので、デジタルSSTVの門外漢にも分かりやすく、いままでなじめなかった世界に飛び込んでみようと思わせる説得力がありました。MMSSTVの森さん(JE3HHT)とHAMLOGの浜田さん(JG1MOU)の存在が心強く、フリーソフトウェアに感謝しています。鹿間さん(JA7UQ)のパソコン応用の取り組みにも大いに刺激を受けました。おしまいに講演要旨並びに資料を引用させていただいた各位に御礼を申し上げます。