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No.70 デイトンハムベンション2006見て歩き
5月18日、成田空港からユナイテッド884便に乗って約12時間、中継地のシカゴへ降り立ち、ここで5900便に乗り換えてデイトン空港へ、同じ日の午後3時過ぎに到着しました。ターンテーブルからスーツケースをピックアップしてハーツ(HERTZ)のカウンターへ。オンラインで予約してあるので手際よく貸し出しの手続きをしてくれます。道路の不案内からカーナビ(NeverLost)付を18日~21日の4日間、フォードのトーラス(Taurus)を借りて料金321ドルをクレジット・カードで支払いキーを受け取りました。
Hertzのカーナビ「NeverLost」
デイトンハムベンション2006の公式ガイドブック
ターミナルを出ると辺りは雨上がりのさわやかな空気が漂っていました。この時期、雷雲が発生して激しい雨に見舞われることもたびたびで、時に竜巻が現れて飛行機がデイトン空港に着陸できなくてシカゴ空港に足止めされることもあります。明日の予報は雨模様、なるようにしかならないと言い聞かせながら5分ほど歩いてハーツのパーキングに到着、所定の場所にトーラスを見つけて乗り込みました。カーナビのネバーロストは2004年の「米国西海岸2千キロドライブ」(第46回)で使いこなしていたため、記憶をたどってホテルを行き先に入力することができました。
Haraアリーナ
デイトン国際空港とハラアリーナ周辺の略図
米国のコールサインを持つ日本人
ハムベンション前夜はLet’s Get Together at Dayton(以下LGTDと略)の懇親会を開くことが恒例になりました。「デイトンハムベンションに行こう」の名の下に集まった自由なグループです。WB6Z/JE1PTZ古谷さん、7K1NAQ/KY7V小山さんにより専用のメーリングリストとWEBサイトを立ち上げて、ホテルの確保から関連情報の共有までのいっさいをボランティアにより強力にサポートしておられます。デイトン空港からフリーウェイのR75に乗り北へ30キロ、トロイ(TROY)のホリデーインにLGTDのみなさんが集結しています。今夜も市内のバンブー・グリル(竹屋)に約30名が集まり懇親会を開いて旧交を温める趣向です。
WB6Z WU7J KY7V NA6JL K6JAL NY8A NV1J AE6SA KI6CYB N1TK KC2HQO KI6BLQ W6PAJ N7JAL AH2E W6ZEN W6HGY AE6UR AD2TA K2AJ AJ3M KK4AR そしてJA1CVF JA1KHY JA1KRM JR1EYI JA6SVP JA8OUGほかの参加がありました。
米国のコールサインの内、Two by one One by twoのコールサインからエクストラ級の所持者が多いとわかります。バニティ(Vanity=うぬぼれ、虚栄)で得たtwo by two One by threeにもこだわりのイニシャルをつけたエクストラ級が大勢おられる事情とはなんでしょうか。一つには空きのコールサインから好きに選べるバニティ・コールにあるといわれています。そして世界に通用しやすい米国ライセンスへの魅力もありましょう。さらには試験へのあくなき挑戦にあるのではないかと分析しています。いずれにしても米国人と同じ土俵でFCCアマチュア・ライセンスに挑戦する日本人に凄さを感じます。
会場内は144.92MHz FMで交信
ハムベンションの楽しみ方として、会場内を友人と連れ立ってまわるのも情報を共有できておもしろいのですが、あらかじめ落ち合う場所と時間を決めておいて興味の向くまま一人で気ままに歩き回ることをお勧めします。掘り出し物や新製品を見つけたときにハンディ機で意見交換すると便利ですし、昼食を一緒にするときの連絡にも欠かせません。
同じ周波数をワッチ(見張り)していると友人たちの所在が常にわかり、たとえ一人でいても連帯感が生まれ、何かあれば助けを呼ぶこともできます。LGTDの連絡周波数が144.92MHz(シンプレックス)なので、日本の免許でも相互運用協定で事前の申請なしに運用ができます。オハイオ州は8エリアなのでW8/JA1×××となり、米国のコールサインなら NV1J/8のように言って交信します。
ハムベンションのハイライト
ハムベンションは500の屋内展示と2,500小間のフレアマーケット(のみの市)が自慢の世界最大級のフェスティバルとして知られていますが、周辺のホテルやレストランでバンケット(公式の宴会)が開かれました。19日:QCWA、QRP、SWODXA、デイトン・コンテスト、IVCA SSTV、米国赤十字、AMSAT、TAPR、トップバンド 20日:QRP、デイトン・コンテスト、デイトンユースなどに大勢の愛好家が参加したということです。
今年の入場料は25ドル、前売り券が20ドルでした。1ドル112円換算でそれぞれ2,800円、2,240円となります。1ドル120円なら当日券が3千円の感覚になりますが、3日間(実際は2日半)で1日千円と割り切るか、20ドルの前売り券を利用するのがお得でしょう。19日(金)早朝、メディア・センターに立ち寄り、かねてオンライン登録したメディア・カードを受け取り、会場のオープン前に乗り込みました。
アイコムのブース(展示用の小間)で島本さん(JA3USA)を見かけてご挨拶。昨夜は「全米のディーラーを集めてD-STARの説明会があった」という話をうかがう。中央のステージにD-STAR関連プレゼン(説明)が予定されていて、今年の力点はやはりD-STARにあると気づきました。ほかにIC-7000、IC-91など新製品がずらり並ぶ中、IC-7800の交信実演もあり、にぎやかな演出が予想できました。
アイコムの展示コーナー(開場前に撮影)
D-STAR実演コーナー
無料で配布されたアイコム特製の帽子とARRL EXPOのバッジ
この後、新製品が噂されるブースにまわり、取材が一段落したところで帽子屋を探しました。というのもコールサイン入りの帽子を作るつもりでしたから、店を開ける前に物色していると、マダムが近寄ってきて笑みを振りまくので、生地とデザインを見極めてNV1Jの帽子を25ドルで注文しました。続いて名札ショップを探して長い列に並び、黒地に文字を白抜きにしたシンプルなコールサイン入り名札を頼んで列から離れると、長い列を観察していた近くのブースの係員が人懐こく話しかけてきました。「いい商売をしているじゃないか」と名札ショップを顎でしゃくって繁盛ぶりがうらやましくてならない様子でぺらぺら、こちらが会話を理解しているかどうかはお構いなしだ。
会場内で作ったコールサイン入り帽子
適当に相槌を打って離れたが、ほかにも奇妙な体験をする。屋内展示場を歩いていると突然黒人に呼び止められて「これあげるよ」とチューインガムを差し出されて、困惑しながら手元を見ると漢字交じりの紛れもない日本製のBLACKガムに「日本で買ったの?」「そうだ、とっとけよ」。気分を害されてもいけないので2枚もらうと、「楽しんでいけよ」とにんまり。日本で親切にされたのだろうか。
会場内の一隅ではARRL/VECによる試験が19日午後一回、20日午前と午後の各一回、テクニシャン級からエクストラ級が行われ、試験場の入り口付近に試験を受ける人の列ができていました。今年もARRL EXPO 2006が大きなスペースを占めてにぎやかでした。インターネット・カフェ & WiFiや子ども対象の科学玩具の実演などに工夫が見られたが、最大の呼び物はARRL出版物の即売コーナーが一番人気で、職員が笑顔で応対し忙しく立ち働く姿が印象に残りました。去年は受験本を求めたが、今回はかねてから目をつけていた「Amateur Radio on the Move」1st Editionを19.95ドルで購入しました。
ほかに講演会場の用意もあり、おなじみのDXCCカードのチェック・コーナーも盛況でした。そして無料配布のバッジは「ARRL EXPO 2006 DAYTON」とプリントした直径32ミリほどの丸型のバッジがガラスの容器にたくさん入れて各所に置いてあり、ハムベンションのよい記念になると何個でももらって行くことができました。残りが少なくなると補充するARRLのおおらかなサービスにとてもよい感じを受けました。
ARRLの目の前にJARLブースがあり、JA1DM海老沢さん(元JARL専務理事)がJARLの旗を背にしてJARLのアワードを紹介していました。親日家がひっきりなしに立ち寄り応対に忙しそうでしたので声をかけるのを遠慮して、翌20日午前、ようやく手すきの海老沢さんに声をかけました。ARRLの職員と行動を共にして親切にされている様子、日本から持ってきた世界地図が直ぐに売り切れた話しなどを伺うことができました。
ジャストインケース
この後、RSGBのブースに立ち寄り「Amatur Radio Mobile Handbook」21ドルを買い求めてぶらぶら歩いていると、HIGH SIERRAアンテナのブースで古谷さん(WB6Z)にばったり出会いました。「ジャストインケース」(Just in CASE)という名のアンテナにご執心の様子で「このジャストインケースという名前、ピタリでしょう」といい、定価810ドルのところハムベンション価格の595ドルでお買い上げ。
HIGH SIERRAのポータブルアンテナ”ジャストインケース”
ハムベンション名物「蚤の市」(Fleaマーケット)
このアンテナは乗用車、トラック、RVに向いているほか、緊急時のアンテナとして有効とカタログに記載がありますが、古谷さんの念頭にはポータブル運用が描かれているようで「小型トランシーバーとこのアンテナを持ってハワイに行くと直ぐにオンエアできるからね」と説明に力が入る。アンテナは3.5MHz帯~430MHz帯の全アマチュアバンドに対応し、制御器のボタンを押すと短縮コイルがモータードライブで伸びたり縮んだりして、各バンドに共振する仕組み。マストと三脚、同軸ケーブル、アンテナ、コントローラなどが一体化してキャリングケース(20×9×14)に収まるところから「ジャストインケース」と名づけられたと聞きました。
ここで紙面が尽きました。次回はハムベンション第2話として「フレア・マーケット見て歩き」、ARRLとRSGBのブースで購入した2冊の「モービルハンドブック」を紹介し、アメリカとイギリスのモービル事情をひも解いてみようと思います。