リベンジ対馬2006

2002年から毎年のように対馬(つしま)に出かけて無線運用を楽しんでいますが、2005年だけは都合で行けなくて、関東の雄峰“筑波山”のホテルの一室でイージーな移動運用を行いました。今年は4月中旬「リベンジ対馬2006」と名づけたDXバケーションをJH1VVWをリーダーに8名が対馬に出かけて2泊3日の移動運用を満喫しましたので、その様子をレポートしたいと思います。

対馬市は平成16年3月に旧6町(上対馬町、上県町、峰町、豊玉町、美津島町、厳原町)が合併してできた面積708k㎡を持つ日本でも3番目に大きな「島」として知られています。実際には沖縄本島を含めて、佐渡島、奄美大島、対馬の順で4番目になりますが、対馬市教育委員会の「歴史の散歩道」には沖縄本島を除いて3番目と称しています。

対馬は九州最北端、韓国に49.5キロに位置する

対馬は昔から大陸と日本本土との交通の要所として、韓国・釜山から49.5kmの近い地理的環境から大陸文化の受け入れ地としての役割を果たしてきました。島内の交通標識は日本語、英語、ハングルの表記が国境の地を気づかせてくれます。そしてツシマヤマネコに代表される希少動植物の生息や国指定無形文化財、民俗文化財、県指定文化財などに恵まれて見所が一杯。韓国から最も近い日本として釜山からの観光客が多く見受けられました。
無線機材を宅配便で送る

今回はHF~430MHz帯の運用が1台ですむアイコムの名機IC-706MKIIGMと2種類のアンテナを用意しました。無線機材のリストは以下のような簡単なものを作成し、[点検]欄に○印をつけてチェックを行いました。この後、梱包する前にトランシーバー、アンテナチューナー、SWRアナライザー、ハンディー機などの動作をチェックしました。

対馬でしか見られない石屋根の高床式倉庫(看板の後方)

現地で荷解きをして通電、動作不良のアクシデント(事故)に見舞われないためにも確認のための大切な作業になります。持ち込む機材が「あるだろう、動作するだろう」では快適な移動運用に程遠く、せっかく遠方に出かけているのに欠品があだになり、運用をあきらめることになりかねませんので、めんどうでも事前の点検をやっておきます。
■簡単チェックリスト

点 検 型  名 種  類
IC-706MKIIGM(ICOM) トランシーバー
ハンドマイク キー ヘッドフォン DCケーブル  付属品
マニュアル ヒューズ 付属品
DM-330MV(ALINCO) DC電源
CA-52HB4(COMET) アンテナ
W3FFアンテナ マニュアル アンテナ
5D2V 20m×2本 M-M M-N変換 方位磁石 同軸ケーブルなど
伸縮タイプマスト 屋根馬 針金 紐  アンテナマスト
MFJ-259B 単3乾電池 SWRアナライザー
テスター 工具 テーブルタップ ボールペン 測定器ほか
ノートパソコン 充電器 ノートパソコン
SSTVアダプター アダプター
従事者免許証 無線局免許状 業務日誌 ライセンス
144/430MHzFMハンディー機 ハンディー機
デジカメ 2台 メモリー 充電器 カメラ


IC-706MKIIGM:小型HF~430MHzオールモード・トランシーバー。約2.45kg
DM-330MV:直流安定化電源。5~15V可変、連続30A、約2kg
CA-52HB4:50MHz帯HB9CV 4エレメント 利得10.4dBi 約2.1kg
W3FFアンテナ:7~144MHzダイポール マスト+三脚を含めて約4kg
MFJ-259B:アンテナアナライザー 1.7MHz~170MHz 900g(乾電池含む)

プロペラ機で対馬へ

8人は2組に分かれて羽田空港からJH1VVW、JA1DBU、JF1GUQ、SWLの4人がJAL1709で先発。後発のJJ1JGI、JA1KJW、JA1FUY、JA1CVFの4人が1時間後にJAL1711で福岡へ。ここで8人が合流してプロペラ機(ANA1693)で約30分飛行して、対馬空港へ到着したのは12時50分でした。天候が悪いときは福岡→壱岐→厳原を1時間45分で結ぶジェットフォイルを利用します。空港から迎えの車で「ホテル空港インレンタカー」(対馬市美津島町 ℡0920-54-3329)へ直行。ここで軽乗用車3台と軽トラック1台を借りて「ペンション凪」(対馬市美津島町根緒7-9)へ向かいました。

W3FF(7MHz)と4エレのHB9CV(50MHz)

ペンション凪に作ったシャック(IC-706MKIIGMとAT-180)

ペンション凪 7~50MHz SSB・SSTV

対馬が初めてのJA1DBUとSWLの2人はJH1VVWの案内で島内観光へ。この間にJF1GUQ、JA1FUY、JA1CVFの3人がアンテナの組み立てに汗を流し、21MHz帯Vダイポール、W3FFアンテナ(7MHz帯)、50MHz帯HB9CVを組み上げてベランダに立て、MFJ-259Bで各バンドのSWRをチェックしました。シャックにはIC-706MKIIGMとAT-180、DC電源、SSTVアダプター、ノートパソコンなどを用意しましたが、期待の50MHz帯がEスポに恵まれず、HF帯で3局と交信してかろうじて生存証明を行いました。

JCC4209

JF1GUQ/6 7MHz SSB1 JA1FUY/6 21MHz SSB2

神話の里自然公園コテージ 1.9~18MHz CW・SSB

和多都美神社(ワタツミ)に隣接する神話の里自然公園(対馬市豊玉支所総務部 ℡0920-58-1111)のコテージで、JJ1JGIが7、10、14MHzをIC-706MKIIGMでCWとSSBを、JA1KJWが自作した21~28MHz帯のHEXBEAMと1.9~18MHzダイポール、それにK2トランシーバーでCWを運用して2人のQSOは806に上りました。

和多都美神社の碑

JJ1JGI/6 GRID LOC PM44PI

MODE 7MHz 10MHz 14MHz TOTAL
CW 315 76 19 410
SSB 40 - - 40

JA1KJW/6 GRID LOC PM44PI

MODE 1.9MHz 3.5MHz 7MHz 10MHz 14MHz 18MHz TOTAL
CW 62 44 117 115 15 3 355
SSB - - - - - 1 1

鳥帽子岳展望台 430MHz SSB

豊玉町の和多都美神社を左に見ながら烏帽子岳(エボシダケ)に登るとリアス式海岸、浅茅湾をぐるり360度展望できる風光明媚な場所があり、JH1VVW、JFGUQほかが、軽トラックと軽乗用車に分乗して走ること50分、烏帽子岳展望台・駐車場(標高150m)に到着。ここに430MHz帯10エレメント八木スタックを組み立てIC-706MKIIGMで本土に向けてCQを出すが応答なし。2004年、10エレメント八木アンテナで奈良県まで飛ばした実績があるのでこんなはずではないとがっくり。午後11時頃に撤収。

神話の里自然公園に立てたHEXBEAMとJA1KJW/6

神話の里自然公園コテージでJJ1JGI/6

上見坂公園 430MHz SSB・FM

小田さん(JA6VAG)のアドバイスで移動地を上見坂公園(標高約300m)の駐車場に換えました。美津島町のペンション凪から車で10分の距離にあり、地元の移動局が運用している場所として太鼓判を押してくれました。アンテナはほぼ組み立てた状態で軽トラックの荷台に乗せてあるため、荷台に430MHz10エレ八木スタックをくくりつけ、車のバッテリーを電源にIC-706MKIIGMに同軸ケーブルを接続。午後9時半頃から始めて福岡、長崎の各局と交信したいとCQを連発するが空振りに終わり、午後11頃に撤収しました。

上見坂公園で430MHz SSBを運用するJH1VVW/6とJF1GUQ/6

430MHzで交信できなかったワケ

430MHz10エレ八木のスタックとIC-706MKIIGMが正常に動作していると確認した上で交信がゼロに終わった原因をあれこれ考えてみましたが、結局アクティビティの低下以外にその原因を探ることができませんでした。ダクトの発生などコンディションを捉え切れなかった不幸もありますが、遠距離DX愛好者へのPRが不足したことも認めなければなりません。交信に至らなかった悔しさはともかくとして、移動運用に至る過程を楽しめたからこれで十分と自ら慰めて、ふと空を見上げると、満天の輝く星空に流れ星がすぅーと流れて、いらだつ気持ちを癒してくれました。

まとめ

神話の里自然公園コテージのJJ1JGI/6西山さんは、CWコンテスト常勝の猛者として、JA1KJW/6中山さんはV63JQやV7KJのDXペディションの実績が示すとおり、2人で806QSOは立派な結果となりました。なかでも1.9MHzの62QSOはたいそう喜ばれたということです。ペンション凪のシャックは混雑する7MHz帯SSBにオンエアの術もなくて1QSO、Eスポ頼みの50MHz帯にも見捨てられて、21MHz SSBでかろうじて2QSOという生存証明に終わりました。

それでも50年近いアマチュア歴の面々は「そういうこともあるさ!」と、浅茅湾に船を出して鯛釣りに興じる余裕もありました。あいにく小潮で釣果はキス一匹に終わったもののなぎの海面をすべるように進む小船から、薄墨を流したような美しい景観を眺めて感嘆の声を上げました。この後、神話の里自然公園で開いたサザエのバーベキューに舌鼓を打ち親睦を深めた8人は、対馬の自然を満喫した2泊3日の旅となりました。

リベンジ対馬2006のQSL

リベンジ対馬2006のQSLカードキスを釣り上げて大喜びのJA1CVF