アメリカ合衆国のアマチュア・ライセンスの試験(エレメント1~3)を受けて「ゼネラル級」を取得した話をNo.65「FCCアマチュア・ライセンスに挑戦!」に書きました。今回はその続きを披露して参考に供したいと思います。

General Classを取得したのが2005年12月3日、残すのは最上位の「エクストラ級」のみになりました。新年早々、ARRL VEC東京が3月4日の試験日を発表しましたので、試験日までの2ヶ月間はExtra Classの受験に手ごろな準備期間と考えて、迷わずVEC Tokyoへ予備登録用紙を送って勉強を始めました。手始めにExtra Classのクエスチョン・プール800問をぱらぱらめくって眺めてみると、問題が長文で難しい印象を受けました。さて、エクストラ級の攻略はいかに?

日本語訳付きクエスチョン・プール約800問をプリント

The Extra Class License Manual

バニティ・コールの魅力

デイトンハムベンションで出会った日本人アマチュアがWB6Z、KY7V、NA7JLのようなかっこいいコールサインを持っていたと紹介しましたが、このようなコールサインをもらうにはExtra Classに合格しなければなりません。因みにGeneral Classに割り当てられたコールサインはKE7FSS、two- by- threeの形式で、さらに上の「短いコールサインが欲しい」という気持ちがいよいよ強くなってきました。

アマチュア・エクストラ級に合格して上級のコールサインを希望するとtwo-by-two、one-by-two、two-by-oneの例えばAA1GW、N1RL、WR1Bのようなコールサインが与えられます。さらに希望すると有料(21.90ドル)で空きのコールサインの中から希望するコールサインに変更できるVanity Call Signと呼ばれる制度があります。辞書にはVanityが “うぬぼれ、虚栄”とあり、「自慢するためのコールサイン」とでも訳すのでしょうか。

日本にもサフィックスが短い2文字のコールサインがありますが、再割り当てはなくて2レターは垂涎の的として存在するのみです。ライセンス別のコールサインがうわさに上っては消えて行く状況にあり、平等な社会を目指す我が国ではふさわしくないのでしょうか。いずれ時が解決してくれると思っています。

ともあれ米国ではVanity Call Signの恩恵に浴してサフィックスを名前の頭文字や日本のコールサインのサフィックスと同じに、また勤務先の略称などを空きのコールサインから探して申請し、自分のものにすることができます。中でもサフィックスが一文字のtwo-by-oneが日本人に絶大なる人気があり、短いコールサインが交信に便利という側面のほかに、上級局としてのステータス(地位)に魅力があるのは間違いのないところです。

Extra Classのクエスチョン・プール

今回もまた日本語訳つきJH7BZR岩淵さんの「目指せ養成ギブス」を教本にしました。A4判、片面印刷で297枚の2分冊です。これを通読すること5回、結構な労力を費やしました。ほかにARRLの「EXTRA Q & A」を参考にしました。これはA6判で小説本ほどの厚み(背幅18ミリ)がありますが、解答の導き方やおぼえ方に問題ごとの《解説》が大いに役立ちました。

ARRL’s Q&A

基本的には800問のクエスチョン・プールを辛抱強く通読するのが一番のようで、一巡する頃には興味がわいてきて面白くなってきました。英語が得意な人は読む時間が少なくて済むでしょうが、そうでない人は時間をかければよいということになります。アマチュア無線歴の長い人は50問中の半分くらいは答えられるかもしれません。50%のレベルから始めて合格ラインの76%台に乗せるには、それほど時間がかからないと思われます。さらに不得意な問題を一つずつ洗い出してつぶしていくと、いつの間にか正答率を90%台に上げていることに気づきます。次に実力の向上に有効な模擬試験を紹介しておきます。

QRZ.COMのQRZ's Practice Amateur Radio Exams
大きな文字が特徴、高齢者の目にやさしい。サブエレメント(1~9に分類されたエレメント)順に出題されるので、初心者に戸惑いが少ない。問題にE1B08のような番号が付いているので、答えを間違えたときにメモしておいて、クエスチョン・プールを見直すときに役立つ。A~Dのボタンをクリックすると即座に「Correct!」あるいは「Sorry, the correct answer was D」のような判定が出ます。50問を終えると[28/50 56% 52分]と表示されます。これは28問の正答で56%、つまり不合格、所要時間に52分かかったと知らせてくれます。本番の試験ではA~Dの答えがランダム(無作為)に入れ替わるが、QRZ.COMの場合、クエスチョンプールと同じ順序で入れ替えがありません。

QRZ.COMの模擬試験

W8MHB.com Online Practice Exams
本番の試験に一番近い模擬試験サイトです。A~Dの4つの答えがランダムに入れ替わる。正答ボタンをクリックしてセーブすると左側の回答欄に選択したアルファベットが記入される。50問終えると下段のGrade Examを押すと[48/50 96%]のように判定が示されます。問題にサブエレメントの番号が付かないことで問題の意味や計算法などを知る場合、もとの番号がわからなくて調べるのに時間がかかる欠点がありますが、本番さながらの臨場感があるので直前の腕試しに向いています。サブエレメントごとのテストも可能。

W8MHBの模擬試験

AA9PW Amateur Radio practice exams for Java!
Q1からQ50までサブエレメントの番号つきで出題されます。Submitボタンを押すと正答の左に緑色の㊤チェックマークが入り、誤り回答に×印が付き、黄色のチェックマークが正答につきます。最後尾にE0~E9のサブエレメントごとの成績がグラフで表示されます。

AA9PWの模擬試験

以上、三つの模擬試験を多用した順にご紹介しました。お勧めはQRZ.COMではないかと思われます。判定がすぐに下されるという点で学習に役に立ちます。問題の番号を控えておいて、誤答集を作りプリントして記憶に務めます。ただ、同じ問題を誤答集に見つけてうんざりすることもたびたびでした。

The ARRL Extra Class License Manual

これはデイトンハムベンションで購入した一冊です。定価は17.95ドル(約2千円)。電波伝搬や無線工学の計算式などの理解に大いに役立ちました。もちろん本文は英語ですが、アマチュア無線用語ですから取り付きやすく読み進めることができました。この本のおかげで暗記というよりは理解して記憶にとどめることができたのは幸いでした。この本はARRLのWebサイトから注文ができます。

ARRL/VEC東京の試験会場入り口

Extra Classに合格すると

上級者用のコールサインがもらえ、Vanity Call Signを希望することができます。空きのコールサインを探すにはN4MC’s Vanity HQがお勧めです。米国では日本の免許状による相互運用協定による運用ができなくなり、米国のコールサインによる正規の運用になります。免許人の名前やライセンスはFCCのUniversal Licensing Systemでコールサインあるいは名前を入力して調べることができます。

日本ではExtra Classは第1級アマチュア無線技士と同等で、無線局事項書及び工事設計書の「無線従事者免許証の番号」の箇所に[アメリカ合衆国(Extra Class)AA1GW]のように記入し、ライセンスのコピーを添付して1kW局の申請ができるようになります。

Extra Class 合格証明書(署名と住所を削除)

おわりに

Vanityコールが欲しいという単純な動機から始めて、ようやく目標を達成した充実感は決して悪いものではありません。雑誌《CQハムラジオ》にJA1ANG 米田OMの後を引き継いで「WB6Zの実用英会話QSO」を連載して人気上昇中の国際人、古谷さん(JE1PTZ/WB6Z)がFCCアマチュア・ライセンスに挑戦する方に、よきアドバイスをしておられますので、ここに紹介しておきます。

『自分の好きな空いているコールサインを取得することができて、世界的にも通用する(or 通用しやすい)ライセンスが、がんばったご褒美にいただけるのがFCCライセンスの良いところ、すてきなところなのかもしれません。教本や問題が英語だとびびる前に取り組むと、そこが4択の良いところ、キーワードで覚えて行くと、いつの間にかに、その「英語」を覚えているのです』 

古谷さんらしい的を射た励ましにすべてが集約されているように思えました。皆さんの挑戦に期待します。Good Luck!

ご参考:日本の主なVECチーム
  ARRL/VEC 東京チーム
  ARRL/VEC 名古屋チーム
  ARRL/VEC 岡山チーム
  W5YI/VEC 九州チーム