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No.65 FCCアマチュア・ライセンスに挑戦!
「デイトンハムベンション2005」の前夜、30名余の日本人アマチュアがイタリア料理店に集まり夕食会に参加した話をNo.58で書きました。Let’s get together @ Dayton(デイトンを一緒に!) の皆さんが三々五々集まって部屋は満員状態になりました。辺りを見渡すと、ほとんどの人の名札に米国のコールサインが書いてあり、日本のコールサインのみは少数派でなんとなく肩身が狭い感じです。一目で上級とわかるコールサインがうらやましく、難関の試験はさておいて、機会があれば挑戦したいと思いました。
デイトンハムベンションから半年が経過した頃、友人からエレメント2、3、4のクエスチョン・プール(日本語訳&解答付き)を4冊いただいたのがきっかけとなり、アメリカFCC(連邦通信員会)アマチュア・ライセンスに取り組むようになるのですから、何が幸いするかわからないものです。この瞬間から真剣に取り組んだ2ヶ月間、いろいろなノウハウを体験しましたので、受験のあらましをご紹介したいと思います。
エレメント3を目指す
FCCアマチュア・ライセンスは、エレメント1(テクニシャン・プラス)のモールス・コード(5 wpm)のテストから始め、これに合格するとエレメント2に進むことができます。エレメント2~4は無線工学と規則などを一緒にした問題でA,B,C,D 4つの答えから正解を一つ選びます。エレメント2(テクニシャン級)とエレメント3(ゼネラル級)が35問中26問、エレメント4(エクストラ級)が50問中36問の正答で合格です。クエスチョン・プールはエレメント2が384問、エレメント3が385問、エレメント4が803問となっており、この中から問題がでるため全部覚えると間違いなく合格に至ります。
テクニシャン級とゼネラル級のクエスチョン・プール
とはいえエレメント1、2、3、4の試験を一回で受けるのは無理と考えて、エレメント1~3とエレメント4の2回に分けて受験することにしました。まれにはエレメント1~4を一回で通過する優秀な方もおられますが、自らの実力にあわせて1と2だけ受けて、これに合格したら次のステップに進むというやり方を選べるのが、FCCアマチュア・ライセンスの良いところといわれています。1回の受験料がUS14ドル、1,700円ですから2、3回受けても受験料は気にならないでしょう。
ARRLのCDでモールス・コード
エレメント1は1分間5ワードのモールス符号を約5分間受信して、10の質問に答えるクイズ形式です。7問の正答で合格。クイズ問題に失敗した場合でも5分間の受信中、1分間の正答コピーで合格と判定されることもあるようです。アルファベットA~Z、数字0~9、カンマ、ピリオド クエスチョンマーク(?)スラントバー( / )、AR、BT、SKが含まれおり、速度は13~15 wpm、単語間のスペースを空けて5 wpmにしています。
クスチョンの一例を示すと 1.受信局のコールサイン、2.送信局のコールサイン、3.シグナルレポート、4.送信局の市、5.州、6.オペレータの名前、7.ハムになって何年、8.リグは? 9.送信局のパワー、10.アンテナの高さ このような出題です。
モールス・コードの初心者あるいは受信能力を上げたい方に勧めたいのが、ARRL製作CD2枚組み「Your Introduction to Morse Code」#8314($14.95ドル)です。1枚目がモールス・コードの初心者用の練習、2枚目に高度な受信練習とテスト・クエスチョン1~5の収録があり、10の質問に答えて正解を確かめる本番さながらの試験が体験できます。CDにより練習を重ねておくことで落ち着いてエレメント1を受けることができます。このCDはARRLのWebサイトで注文でき、日本に送ってもらえます。
ARRL製作の「モールス・コード」の練習用CD2枚組み
ARRL製作「GENERAL Q&A」解答の解説付き
日本語訳付きクエスチョン・プール
エレメント2がテクニシャン級、エレメント3がゼネラル級、問題の難易度が徐々に上がります。英語はおなじみの電気や通信用語が出てきてなじみやすく、中学英語で事足りる感じがします。ただし、問題が長文になると戸惑うこともありますので、日本語訳付きクエスチョン・プールで理解しておくと万全です。受験に際して準備した本は次の3冊です。
- 1.エレメント2と3の日本語訳付きクエスチョン・プール
- 2.Now You’re Talking ! 5th edition #8810 .95
- 3.ARRL’s General Q & A #9213 .95
エレメント2と3の日本語訳付きクエスチョン・プールをJH7BZR岩淵さんのWebサイトから「目指せ養成ギブス」を利用しました。2の「Now You’re Talking ! 5th edition」は入門者用です。3の「General Q & A」は、答えの導き方を解説して理解を助けてくれます。これもARRLのWebサイトで購入できます。
入門者用の「Now You’re Talking!」
役立ち情報り利用法
各WEBサイトにて先輩諸氏が学習法を書いておられますので、「VEC EXAMINATION 受験記1~4」と「Vec Exam受験と勉強の進め方」に目を通して、次のような方針を立てました。
1.クエスチョン・プール2と3を2回ずつ精読する。
2.何度も答えを間違える問題をプリントして記憶する。
3.「目指せ養成ギブス」の学習ソフト(ランダム出題)を使う。
4.QRZ.COMの試験で力試し。
特に4の試験は、始め60%くらいの正答率から80%、90%と次第に上がってくるようになり、試験直前には自信を持って臨めるようになります。
試験はどこで受ける?
日本では東京、名古屋、岡山、ARRLのVEC(Volunteer Examiner Coordinator)が年2~3回の試験を実施しているので、それぞれのWebサイトを閲覧して試験日や受験方法を調べておきます。
受験申請にはFRN(FCC Registration Number)の登録が必要です。登録方法は上記のWebサイトに詳しく書いてあります。受験資格は外国の政府以外は誰でも受験できますが、アメリカ国内のメーリング・アドレス(免許証などを郵便で受け取れる住所)が必要です。米国に住まいを持たない人は、アメリカの友人に住所をお借りする方法があります。ただし、FCCから到着する郵便物の受け渡しの煩わしさに気遣いがなくてはなりません。最近は「レンタル私書箱サービス」を利用して住所を確保する方もおられます。
VECから「試験予約票」が送られてくる
東京・巣鴨で受験
2005年11月3日ARRL/VEC Tokyo VE Teamで受験しました。JR巣鴨駅から国道17号を10分ほど歩くととげぬき地蔵で有名な高岩寺があり、隣接する共同計画ビル8階のJARDハム教室が試験会場でした。VEに「受験者は何人ですか」と尋ねると10人ぐらいとのこと。エレメント1から始める人が4人、エレメント4を受ける人が6人でした。
受付で受験申請書とパスポート、14ドルを出して受け付け済ませました。試験が始まるとVE(試験官)から受験の注意とVEの紹介がありました。直ちにエレメント1の試験が始まり、モールス・コードの受信用紙が配られ、ポータブルCDプレイヤーにCDがセットされて1分間の受信練習に続いて約5分間の試験が行われました。受信が済むと問題用紙が配られます。書き取った受信文を見ながら答えを書き上げ、手を上げてVEに答案を渡して判定を待ちます。しばらくして「合格」と告げられました。
エレメント2とエレメント3へ順調に進み、「GENERAL級」を手にすることができました。VECからCSCE(エレメント1~3のパスとGENERAL級の証書)を受け取り、VEに促されてCSCEに署名しました。1週間後にFCCのWebサイトで検索して「KE7FSS」を確認、Reference Copyをプリントしました。本物は受験から2週間位でメーリング・アドレスに送られてきます。
まとめ
久しぶりにモールス・コードの受信練習と択一式試験に脳細胞が少なからず活性化しました。受験者の年齢を考えるとFCCアマチュア・ライセンスの取得を目指すのは無謀のそしりを免れないところですが、サイクル23のサンスポット・ナンバーが最低期にあたる2006年をハムライフの充電期間と考えて、あえて難易度の高い試験に挑んでみました。
きっかけさえつかむと、FCCアマチュア・ライセンスを手にすることも難しくないと受け取っていただけると幸いです。英語の問題 & 解答の学習も恐れるに足らず、クエスチョン・プールを反復して読むことにより米国のライセンスはあなたのものになります。
※ 5Words=5 words per minute、1ワードを5文字として、5ワードで25文字/1分間