米国のオハイオ州デイトンはライト兄弟ゆかりの地として有名ですが、アマチュア無線の世界では世界三大ハムのイベントの一つ「デイトンハムベンション」(Dayton Hamvention)を上げなくてはなりません。ハム(Ham)とコンベンションを合わせた「ハムベンション」は、今では「ハムの集会、大会」という意味で定着しました。

ハムベンションは5月20日、21日と22日の3日間の開催に約2万5千人が集い、デイトン・アマチュア・ラジオ・協会(DARA、Dayton Amateur Radio Association)が組織するハムベンション委員会により行われました。1952年に始まり、1964年、ハラアリーナ(Hara Arena)に場所を変えて現在のスタイルが確立しました。1973年、雑誌編集者を始めたときに “デイトンハムベンション”が“QST”などに紹介されていましたから、その全容を誌面で伝えたいと思いながら出張取材に程遠くもっぱら寄稿に頼っていました。

ハムベンション公式ガイドブック(A4判、48頁)

当時、貨物機の副操縦士(後にB747の機長)を務め、アンカレッジやハワイなどを飛行しておられた畏友・池田さん(JA1FBD)が「デイトンハムベンション見て歩き」を寄稿されました。写真を見せていただくとコールサインがクルマのナンバーというのが珍しく、フレアマーケット(Flea Market=蚤の市)に並ぶ軍用通信機、高周波関連のパーツ類の豊富なこと、ビンテージラジオ(古い年や時期のラジオ)が山のように積まれている光景にアメリカの豊かさを感じました。
大勢の日本人が参加する時代に!

今回はユナイテッドのWebサイトでeチケットを取得しました。成田の航空カウンタで名前を言うだけの簡単な手続きで搭乗券を手にすることができました。しかしながらホテルの予約は簡単ではありません。ハムベンションの開催日が迫ってくると料金の高い部屋を紹介されることもあり、適正な料金での部屋の確保に不安が付きまといます。

そんな折、シアトル在住の古谷さん(WB6Z)と東京の小山さん(7K1NAQ)が”Let's get together @ Dayton” という会を立ち上げてデイトンハムベンションに出かける人をボランタリー(無報酬)の支援を始めてハムベンションに関心を寄せる人たちから喜ばれています。古谷さんの専門的な予約術により、「ホリデーイン・エクスプレス・トロイ」のツインベッド89.95ドル+税、コンチネンタルブレックファスト、ブロードバンド・インターネットアクセス込みでしたから、友人と2人で折半すると一人約50ドルになり、割安な料金で泊まれるようになりました。同ホテルはHaraアリーナからハイウェイを利用して車で1時間くらいの距離にありました。

ハムベンション前夜に30名余の日本人アマチュアがイタリア料理店に集まり夕食会を開きました。胸にコールサインプレートをつけて和気藹々のおしゃべりに興じました。日本でなかなか会う機会のない人たちがハムベンションを機会にアイボールQSOができるのも現代の豊かさの現れでしょうか。ここで珍しい方にお会いしました。ドミニカ共和国にお住まいの中村さん(HI8/JA6WFM)です。SSTVによくオンエアされていましたが、このところ聞こえないので事情を伺ってみると、近隣を気遣って多素子八木からバーチカルアンテナに変更したということで、コンディションの低下と共にアクティビティが下がったということでした。

ハムベンションの屋内展示場「Haraアリーナ」

規模の大きさでは世界一のフレアマーケット(蚤の市)

2m FMハンディを携帯して歩き回る

屋内展示場と屋外のフレアマーケットの会場が広いので、友達と別れて行動すると無線交信をしない限り再び出会うのが難しくなります。そこで144MHz帯FMモードのハンディを携帯して歩き回りました。相互運用協定により、日本で開局しているとW8/JA1×××のようにコールサインにW8/をつけます。Wが米国のプリフィックス、8はデイトンのエリア、/(ストローク)です。これらを英語で言い、交信会話は日本人同士なので日本語を使います。

Let's get togethe・・・の皆さんはWB6Z(古谷さん)をはじめ、KY7V(小山さん)、NL7T(酒村さん)、NA6JL(小川さん)、N1TK(熊谷さん)のように、米国のコールサインで交信しておられました。「DC12ボルトの半田ごてを2ドルで買いました」「どこにあるの?」「場所は20××の角」「すみませんが私の分と・・・お土産用に10本買ってくれませんか?」(コールサインを前置して運用していますが、上の記述でコールサインを省略してあります)ワッチしているとお得な情報が仲間同士で共有できます。

アイコムのブースをのぞみ見る

「明日の午前10時からアイコムのブースでIC-7000の発表があります」  「えっ あの赤いベールを被ったニューモデルですか?」「IC-706シリーズより奥行きが少し短いらしい」こんな交信が飛び交いました。この話を友人に話すと「ああ知っているよ」「検索サイトで型名を入力して偶然にフランスのホームページを見つけた」 という話を聞きだしてホテルに戻り、持参のノートパソコンをインターネットに接続してGoogleで検索すると、すぐに見つけることができました。

ベールを被ったニューモデルに期待が高まる

ハムベンションにIC-7000登場!

米国で初登場の「IF-DSPを採用のニューマルチバンダーIC-7000」は、デイトンハムベンションの2日目、午前10時にアイコムのブースで発表されました。詰め掛けたファンで身動きが取れないほどファンで埋め尽くされました。大型のディスプレイを使ってプレゼンテーション(説明)が続いた後、司会者の掛け声でカウントダウン、赤いベールが一気に取られて全貌が明らかになりました。

2.5インチカラフルなTFTディスプレイが周りのブラックに映えて美しく、透明なアクリルの箱に収まっていました。

ベールを脱いだIC-7000マルチバンダー

IC-7000の外形寸法はIC-706MKIIGシリーズより奥行きが2cm短いのは、パーツの集積度が高まったのでしょうか。説明直後に配られたA4判1枚に印刷されたプレリリースには 2×DSP、Improved AGC loop performance、Digital IF filters、2×MNF(Manual Notch Filter)、Digital voice recorder(DVR)、Flexible installation with detachable panel、Remote control Microphone、2-mode band scope、2.5-inch color TFT display with TV screen receive capability、Memory Keyerなどの特徴が読めました。(日本では未発表のため英文のまま記載しました)
W3FF Buddさんの説明に感激!

Haraアリーナの入り口を入ったすぐ左側のNo.33~37のブースがICOMです。ここから近いところにNo.43「Buddipole/W3FF Antenna」のブースがありました。ハムベンションに出かけてきた目的の一つがW3FFアンテナのブースを訪ねることにありました。一昨年、JASTA(日本アマチュアSSTV協会)の野外ミーティングで友人(JA1XVY)が立てたW3FFアンテナがとても気に入り、開発者のBuddさんにお会いしたいと期待していたからにほかなりません。

W3FFアンテナの開発者Buddさん 新開発のバランを手にして

No.43ブースはW3FFアンテナに関心を寄せる人で一杯でした。ようやく隙間を見つけて最前列に立つことができました。Buddさんが先客にW3FFアンテナを説明していたので、とりあえず一緒に聴き入ると温かい人柄が感じられて好い印象を受けました。先客は迷わずデラックスパッケージを購入してさりましたので、いよいよ対面の機会が巡ってきました。

「こんにちは このアンテナはコンパクトで気に入っている」と口火を切ると、「やあ 日本から来たの?」と応じてくれました。「このアンテナに関心あるのだけど・・・」 「専用三脚も付いたデラックスパッケージがお勧めだね、いまならステーの紐をつけとくよ」 と仕様の説明が続いた後、「日本で手に入るけど、もって行く?」 「もちろん」というやり取りがあって、代金399ドル+税 29.93ドルをVISAカードで支払いを済ませ、「メイアイ テイクア ピクチャー?」 と断って、にこやかなBuddさんをデジカメに収めました。8月のハムフェアに来られるとのことで再開が楽しみです。
あとがき

初日のアイコム・ブースを訪れた人たちの関心が、赤いベールを被ったニューモデル(参考出品)に集中しました。透明なアクリルの板を通してIC-7000の観察に終わりましたが、ベールを被っているとめくりたくなる心理を突いた見事な演出でした。

持ち帰ったW3FFアンテナ(デラックスパッケージ)の重さは4キログラム、夕方まで持ち歩いて、さほど重さが苦にならないのは軽い証拠でしょうね。デイトン空港の荷物検査を経てW3FFアンテナとカメラの三脚を預けるときに「「Inspected」の文字の入ったテープでぐるぐる巻きにしてもらいましたので、部品が欠落することもなく成田空港で受け取ることができました。もちろん税関チェックでもお咎めなしで無事に持ち帰ることができました。