先日、JASTA(日本アマチュアSSTV協会、Japan Amateur Slowscan Television Association)の移動運用&野外ミーティングに参加する機会を得ました。早朝10時半、神奈川県・真鶴半島の某旅館の駐車場に14名が集結しました。実際の運用地へはJR真鶴駅付近を経由して湯河原C.C.方向へ車を連ねて上ること10分、メンバーの一人が所有する広大な別荘地へ到着しました。東の方向に太平洋が眼下に広がる素晴らしいロケーションで移動運用が繰り広げられました。

全国各地を移動運用することで有名な熊谷さん(JA1CJB)がキャンピングカーの真上に建てた50MHz帯6エレメント八木アンテナ、米国製の新製品HEX-BEAMを建てた町田さん(JH1HTQ)、さらに米国製の短縮型マルチバンド・ダイポールアンテナ(W3FFアンテナ)を建てた平野さん(JA1XVY)は、車載のIC-706MKIIGMと組み合わせてSSTVによる鮮やかな画像交換を見せてくれました。

キャンピングカーの頭上に50MHz帯6エレメント八木(JA1CJB)

無線運用の前に腹ごしらえが先!

別荘地の中央に雨よけと日除けのテントを仮設してバーベキューの準備にかかりました。当日は台風の影響を受けてにわか雨が降ったり止んだりの悪天候にもかかわらず大型テントの下でバーベキューとビールで腹ごしらえをして楽しい語らいが続きました。バーベキューの鉄板セットや食材・食器・飲料の準備などをメンバーが手分けして用意したということで、飛び入り参加の食べるばかりの立場は勝手がわからずお世話になるばかりでした。

JH1HTQ町田さんのシャック トランシーバーはIC-706MKIIGM

感心したのは離れた場所に調理専用のテントを張ってバーベキューの鉄板をセットして肉や野菜を手際よく焼いていたことでした。かなり手馴れた感じで14名の参加者にほとんど待たせずに配っていた手際のよさに感動しました。グループによるイベントは縁の下の力持ちがいて始めて成立するもの、同時にチームワークのよさをうらやましく感じました。

JASTAが毎年8月1日~31日の「SSTVアクティビティ・コンテスト」を主催してリーダーシップを発揮しているのはよく知られているところです。このコンテストは50エンティティ以上のアマチュアが一ヶ月の長丁場を競い合う世界有数のSSTVコンテストに発展したのは紛れもない事実で、SSTVの普及・発展に大きく貢献されました。

「ハムフェア2004」のJASTAブースでは田辺さん(JA3WZT)が開発したUSBポートからMMSSTV、MMRTTYへの接続を容易にするセミキットと完成品を参考出品して注目されました。パソコンとはUSBケーブル1本のみの接続・・・これは朗報です。USB4MMSSTVインターフェースとPTT出力を取り出すだけのUSB2PTTインターフェースの2種類があります。購入希望が多ければ頒布も計画していると言うことですから、その後の情報はJASTAのWebサイトをご覧ください。

焼肉とビールでお腹が満腹になったところでアンテナの建設が始まりました。ここにご紹介する3種類のアンテナは、電波の飛びを追究する上で画期的な高い性能と独創的な構造を備えていて移動運用地で使うアンテナとして特別な思いで注目してみました。

50MHz 6エレメント八木アンテナ

熊谷さん(JA1CJB)のキャンピングカーの屋根に突如として50MHz帯の6エレメント八木アンテナが出現したのには本当に驚きました。3エレか4エレなら驚きもしませんが、昼寝から目覚めて巨大な6エレメントの八木アンテナに向き合ったときにはびっくり以外の何物でもありません。

熊谷さんが各地に移動されて50MHz帯でSSTVの運用サービスをやっておられるのは聞いて知っていましたが、その巨大なアンテナがあっという間に組み立てられて車のルーフに乗せられるのですから、ロケーションがよければなおさらのこと、固定局顔負けの強い電波を飛ばす理由がわかろうと言うものです。

キャンピングカーにはありとあらゆる機材が積んであり便利な設備を誇りますが、それだけに車載の重量が重そうな印象を受けました。そうは言っても固定のシャックと同じかそれ以上の設備を好きな場所に移動できるのですからその強みは計り知れません。

米国生まれのHEX-BEAMアンテナ

町田さん(JH1HTQ)は米国製のHEX-BEAMアンテナを愛用しておられました。5月のオハイオ州デイトンで開かれた「ハムベンション2004」で展示物を見て奇妙な格好をしているなという印象でした。たまたま居合わせた名黒さん(JA1IST/WR6M)がHEX-BEAMを購入されて日本に持ち帰り、都内のご自宅に上げて使うと伺い、そのアンテナの構造や性能を教えていただいて大変に興味を深めました。

HEX-BEAM 21MHzモノバンド(JH1HTQ)

目の前にそびえているHEX-BEAMは21MHz帯用でポールは車のタイヤでベース部分を踏みつけて安定させ、継ぎ手伸縮タイプのポールの先にアンテナをつけて伸ばしてありました。ビームがありますのでポールを手で回して指向性を生かすことが出来ます。モノバンドは6M、10M、12M、15M、17M、20M、30M、40Mのオプションがあるようです。カタログではマルチバンドのHX-2015i(20-15M)にUS 599ドルの定価がついていました。日本から通信販売で入手も可能のようです。

HEX-BEAMの形状とビーム方向

マルチバンド対応の"W3FFアンテナ"

平野さん(JA1XVY)は、ワゴン車の荷台から長さ1m程度の筒を取り出して何本にも分解されたエレメントを組み立て始めました。これがうわさに聞いていた「W3FF」アンテナと興味津々で完成を見守りました。このアンテナは一口に言うならばマルチバンドの短縮型ダイポールアンテナで、ローディングコイルをクリップで短絡してエレメントの長さを伸縮させて各バンドに同調する仕組みです。

W3FF マルチバンド・ダイポールアンテナ(JA1XVY)

W3FFアンテナが小型・軽量として移動用に優れていますので、何とか入手できないかと注意を払っていましたら「ハムフェア2004」の会場でBuddipole国内販売サポートグループが展示即売していました。このアンテナを地上3mくらいに上げて21.340MHz付近でSSTVを運用されていました。ほどなく北海道の酒井さん(JR8BCH)と交信して画像交換に成功、終始ご機嫌な平野さんでした。

まとめ

JASTAの野外ミーティングに参加していつの間にか出不精になっていた自分に気づき、同時に移動運用の面白さを改めて認識しました。軽くて組み立てが簡単、移動運用に適した新しいタイプのアンテナの出現に感心するやら欲しくなるやらで「無線心」をしっかりと刺激された野外ミーティングになりました。

キャンピングカーの頭上に50MHz帯6エレメント八木アンテナが立ち上がったのを目の当たりにして「これぞ移動局の醍醐味!」と歓声を上げてしまいましたし、ダイナミックさでは負けていないHEX-BEAMアンテナも頭上高くそびえる様子はいかにも電波の飛びが期待できそうです。そしてW3FFのマルチバンド対応ダイポールも手軽さでは際立っていますし、移動運用の多様なシーンにあわせてアンテナを選択することで、移動運用の楽しみが確実に広がる実感がありました。