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No.45 『ベーシックなモービル局』 ~こだわりのリグ・セッティング~
第40回「車のナンバープレートに“8873”はいかが!」でアマチュアらしい車のナンバーをご紹介しましたところ読者から『88 73 59』などアマチュア無線に縁のナンバーを付けた車が多数あるということで写真を見せていただきました。
その後もことあるごとにモービル局のナンバーを気にしていましたら、あるときに某会合に出かけて駐車場に並んだ車のナンバーを見て驚いてしまいました。なんと「88-73」が2台、そして「59-73」が1台、それにCW愛好家が喜ぶ「599」を付けた車の計4台が並んでいました。アマチュア無線家ならこだわりの数字をすぐに見分けてしまいますが、普通の人にはただの数字にしか見えないところが密かな楽しみになるでしょうか。愛好家同士の連帯感を感じながらカメラのシャッターを切りました。
誰にも好かれるナンバー「88-73」
モールス好きに堪らないナンバー「599」
59と73を組み合わせた「5973」
IC-706MKⅡのセッティング
モービルトランシーバーの名機「IC-706MKIIGM」トランシーバーをスカイライン250GTに搭載する話です。同機の前面パネルを本体から外してリモートケーブルで本体に接続してセンターコンソール(中央操作卓)に装着することにしました。前面パネルの幅はセンターコンソールにほぼフィットして喜んだのも束の間、リモートケーブルのコネクタとケーブルが外側に2センチほど出るために、ピタリとはめ込むという上手い話につながらないのがしゃくの種でした。コネクタを後方に90度直角に曲げられるとコンソールにすっぽり挿入できるのに、「実に惜しい!」とうなってしまいました。
と言っても現実にはないものねだりはできないと分かっていますから何とかしなくてはなりません。前面パネルを片手に持ってしばらく考えてみると「リモートコネクタが入らないのなら無理に入れなければいい」と気づきました。なんとなれば前面パネルを運転席側に傾けて装着するために見やすくなる効用から変形装着も悪くないという結論に至りました。後は前面パネルをコンソールに挿入していかに固定するかを考えればいいわけです。
実際に機材を付ける段になりますと、それなりの工夫が必要になるのは当然で試行錯誤を重ねながら満足の行く仕上げにもって行くのがホビー(趣味)の面白さと感じていますが、場合によってはトランシーバーの搭載を全く考えないまま性能やデザイン重視で車を選ぶ場合もあるでしょうから、マイカーにどんな風にトランシーバーを取り付けてモービル局を作り上げるかという挑戦のし甲斐のある課題に腕の振るいどころがあるわけです。
大きな改造は避けて通る!
モービルシャックを作る際に車のセンターコンソールを「改造しない」にこだわります。つまり穴を開けたり、切り開いたり、新たにネジ類を使わないなどを徹底します。したがって無線機専用の木枠を付けるのは論外でもともとの車室内のデザインを変えない方針のもとに作業を進めるのがこだわりの一つになっています。というのも運転席から見た計器周り、ダッシュボードやセンターコンソールに変更を加えてせっかくのデザインを壊したくない、結果として新たな突起物を作ったり視野を妨げるような無線機の配置は絶対に避けたいと考えているからに他なりません。
トランシーバーのサイズに合わせてセンターコンソールを改造する方もおられますが、車の下取りなどを考えますと簡単にはダッシュボードなどに穴を開けたり、センターコンソールを作り変えるなどの大胆な改造は容易に決断できるものでもありませんし、はじめからやらないようにしています。どちらかというと工作が難しくなりますし、素人の細工では手に負えないのは目に見えていますので始めから避けて通るようにしています。
トランシーバーの前面パネルをセンターコンソールにいかに美しくスマートに付けられるかを考えることにしています。そのためには時間をかけてどこに付けたら使いやすいか、前面パネルを固定する方法などに思いを巡らし、時間をかけてああでもないこうでもないとアイデアが浮かぶまで知恵を絞ります。実はこの過程が楽しいわけで唐突に作業を始めて後悔しないように、設計図を練り上げることにしています。なにしろ新車のあちこちを傷だらけにしてしまっては大変ですからね。
IC-706MKIIGMとAT-180を並べてこれから取り付けるところ
IC-706MKIIGMの前面パネルをセンターコンソールに装着したところ
こだわりのセッティング
小心な性格なせいもあってコンソールに穴を開けて無線機を取り付ける行為に拒否反応があります。よほど工作の腕に自信がある方は別として、素人細工はおのずと限界がありますので難しい作業に挑戦しないことにしています。ということで、モービル局づくりの3か条をご参考までに掲げておきます。
1.センターコンソールやダッシュボードに穴を開けない。
- 2.既存のネジを流用して新たなネジ類を使わない。
3.両面接着テープを使い、接着剤を使わない。
この3か条から読み取れるのは、車の現状に手を加えない、ネジ1本でも新たにねじ込まないということです。美しくデザインされたセンターコンソールやダッシュボードに一切変更を加えないという方針でリグのセッティングにのぞみます。
センターコンソール周りのネジ、ビスなどを積極的に利用しますが、新たなネジの使用は極力控えます。では、前面パネルなどを固定するには両面接着テープを使うほか、アルミ板の弾性を利用して隙間に押し込むなどの方法に頼っています。接着テープは強力タイプあるいは超強力タイプが有効で、長い期間にわたりしっかりと固定してくれます。もし何かの都合で引き剥がした場合でも接着面が汚れない利点があります。
アルミ板の弾性と言っても、板を適当な寸法に切って前面パネルの裏の金具にネジで留めて、穴のサイズより少し大きめに開いておいて押し込むという簡単なやり方に過ぎません。アルミの板はアマチュアにはなじみの身近な金属ですし、思い通りの形に簡単に加工ができる上にわずかな復元力も期待できますので、コンソールボックスのサイズより少し大きめにアルミ板を広げておいて押し込むと、中に入ってからアルミ板のわずかな弾性で元に戻り前面パネルが固定されます。
パソコン用のマイクをダッシュボードに装着
取り外しはもちろん簡単で、前面パネルを引き抜くだけですっと出てきますし、再び入れるときはアルミの板を穴のサイズをより大きめに広げて挿入するだけです。前面パネルの飛び出しを防ぐ意味では、両面テープを有効な接触面に付けておくと万全でしょう。
本体とAT-180はトランクに収納
もう一つのこだわりは、IC-706MKIIGMの前面パネルはコンパクトなサイズからコンソールボックスにマッチして突起物を不用意に作らない面が優れ安全運転の観点からもとてもいいトランシーバーと思っています。もし、前面パネルが外れないとしたら大掛かりな取り付け作業が要求されると思うと、簡単にオールバンド運用のモービル局を作ることはできないと思っています。ただ、IC-756PROIIやIC-7400、IC-910のようなデスクトップタイプを車に搭載して、固定局も驚くシャック作りを目指しておられる方は別のこだわりがあるわけですから、この限りではありません。
さて本体とアンテナチューナーの置き場所は、助手席の下に収納することにしていましたところ間口が狭くて本体とチューナーを並べて置けないことが分かりました。その上イスと床の間が狭くてイスを前後に動かすと本体に当たりそうです。セフィーロの助手席の下はゆったり並べておくことができましたので、スカイラインの場合も同じとタカを食っていたのが間違いの元でした。今回は助手席の下の利用をあきらめて別売品のセパレートケーブルは5mタイプのOPC-587を使って本体をトランクに取り付けることにして、本体とAT-180の設置場所の変更により電源ケーブルをトランクまで延長することで解決しました。
HF帯モービルアンテナ HV-4
アンテナ基台はDIAMONDのK600M(同軸ケーブルRG188AU・5D-FV5m)をトランクリッドに取り付けました。基台をトランクリッドにセットビスをボディ(鉄板)に食い込むように締め付けます。これでアースが取れているはずです。キズ防止用の保護板を当ててビスを締め付けるとアースが取れなくて電波は飛びません。もちろん給電部で別途きちんとボディアースを取ればよいのはもちろんです。
アンテナはモノバンドの長いタイプがお勧めですが、例えばDIAMONDのMDシリーズはベースローディングが文字通り下部に位置して安定感がありますし、HFバンドとV/UHFが同時に楽しめるHVシリーズも面白いと思われます。私はDIAMONDNOのHV-4というモービルアンテナを愛用していますが、残念ながら現行商品ではないようです。
まとめ
トランシーバーの取り付け方に付いては車の数だけあるということで、必ずしも読んでくださった方に押し付けるものでなく、むしろこのような方法もあるのだと知っていただければと思っています。車の大きさや用途がそれぞれ違いますし、車の種類とトランシーバーの組み合わせを考えますと何十通りの組み合わせと搭載方法があるわけで、どのように取り付けるかは各人の工夫次第という一面もありますので、思い通りに腕を振るって素晴らしいモービルシャックを作っていただければと思います。