新車に乗り換える際に、今まで使っていた車からトランシーバーやアンテナ基台などの装備一切を取り外して下取りに備えますが、取り付けから5年が経過しているために電源ケーブル等に劣化が見られましたので、ちょうど取替えの時期を迎えていたことになります。

プロローグ

D社の"変角式トランクリッドベース"のアンテナ基台を愛用しています。デザインが気に入り車を乗り替えても継続して使っていましたが、今回の取り外しでトランクリッドに付けたアンテナ基台を取り除いた跡からボディの変色を見つけて少なからずあわてました。すでに下取り査定が済んでいましたから、どのように対応したらよいかしばらく考え込んでしまいました。とりあえず黒っぽい影のように変色している部分を薄めなくてはと思い、布切れにコンパウンドを付けて擦ってみると、少し色が落ちて周りの色に近づいてきたので適当なところで妥協することにしました。

トランクリッドに取り付けたアンテナ基台と430/120MHz帯アンテナ

アンテナ基台はトランクリッドの左右に2つ付けてあり、一つはHF帯用で基台のネジをボディにしっかり食い込ませてボディアースを取ってあります。他のひとつは430MHz/1200MHz帯用でアースが不要のタイプなので、傷防止用の保護板を挟んでネジで固定してあります。アンテナ基台の底部をゴムのような軟質の部材を介してボディをはさむ構造になっていて色素が車の塗装面に色移りしたようです。そこで問題点を整理してみますと、

  1.ボディアースのネジの食い込み部位にさびが生じていた。
  2.基台の緩衝材の色素が車の塗装面に色移りした。

「さび」については予想していましたので、ネジを外して塗装と同じ色のペイントを施して下取りに備えました。もちろん基台に幅広の編線を用いてボディアースをしっかり取ることにより、ネジをボディに食い込ませるような乱暴なことをしなくても済むのですが、ネジをボディにしっかり食い込ませるやり方は、工作が簡単な上に電波の飛びも申し分ない結果が得られる等の点からやめられなくて、いつもこの方法に頼っています。

「ボディの変色」これはある意味で予想外のできごとでした。アンテナ基台の直下のボディは通常、目視できないために変色を把握できなかったのはやむを得ないと思う反面、年に一回くらいはアンテナ基台を脱着して清掃するなり、緩衝材の劣化を判定して交換する必要を感じました。もちろん緩衝材の改良が進むことを期待しますが、太陽の直射による炎天下の厳しい使用状況を考えますと、メーカを責めるのは酷なような気もしますし、ここはアンテナ基台を消耗品と考えて3~5年程度を目安に思い切りよく交換するのが良いかもしれないと考えるようになりました。

DCラインの引き方

車に搭載するトランシーバーは、前の車に搭載のICOMの名機IC-706MKIIGMを迷うことなく使うことにしました。トランシーバーのセッティングについては次回に譲るとして、ここでは電源ラインの構築から始めたいと思います。電源ラインがしっかりしていないと無線機の性能が十分に引き出させないのはよく知られているように、ここは時間がかかってもバッテリーからしっかりとした電源ケーブルを引くところから始めたいと思います。

最近の車は車内の気密度を上げるために余分な隙間や遊びがなくなりました。特にエンジンルームと車内はきちんと隔絶されて電源ケーブルを通す隙間を見つけるのは、ますます難しくなりました。無線機の搭載を自動車整備工場やハムショップなどに任せると、電源ケーブルの配線などを無難にきちんとまとめてくれますので、工作に自信のない方は専門業者に作業をお任せするのがよろしいかと思われます。

エンジンルーム 中央にバッテリー、矢印が電源端子盤

エンジンキーを切ると無線機の電源が強制的に断になる

モービル局の運用を始めた頃、無線機の電源スイッチをオフにするのを忘れてバッテリーを上げたことが何度もありました。一度バッテリーを上げてしまうと充電しても元の性能に戻らなくなり、新しいバッテリーに交換しなくてはなりません。車から降りるときは「無線機の電源を絶対に切る」と誓っても、過ちを繰り返して後悔するのがオチです。ここはエンジンが停止したら強制的に「電源を断にする仕組み」を作るのが一番といえましょう。

ということでキーを回してエンジンが回ったら無線機にDC12Vが通電されるように設定すればよいわけです。エンジンが停止している状態でDC12Vを出力しない、無線機に電源を供給しない、発電機が回り始めて無線機に電源が供給されるように回路を設計します。市販には例えばアドニスの「Power Distributor PD-30」(10,290円)DC12V/24V があり、連続許容電流30Aまで対応している配電盤です。無線機やカーオーディオ、その他車載用機器に、エンジンキー連動・非連動それぞれ3台ずつ電源を供給することができます。

「Power Distributor PD-30」はヒューズとリレー、端子で構成されていてエンジンキーに連動して端子盤に12Vが出力される仕組みになっています。少しばかりめんどうなのが、エンジンキーを回したら12Vが出てくる箇所を見つけることでしょうか。スカイラインのエンジンルームでテスターを手もとにおいてあちらこちらを当たってみましたが、残念ながら見つけることができませんでした。配線の束はコルゲートチューブの中を通して保護されていますから、やみくもに縫い針を刺して電圧を検出するなど昔のやり方は通用しません。

ヒューズボックスから取り出す!

ここで方針を変えて車室内でエンジンキーを回して12Vが出てくるシガーライターに目をつけてみました。エンジンキーを回さない状態ではシガーライターは使えませんね、エンジンキーを回すとシガーライターが使えるようになるので、この12Vを配電盤に配線してエンジンキー連動の電源にしてやります。ただし、シガーライターのプラグから電圧を取り出すのは気に入らなくて他の方法を模索しました。そこでひらめいたのが、ヒューズボックスから取り出すという発想です。

スカイラインの場合、ヒューズボックスの位置は運転席の足元にありましたので、蓋を開けてシガーライターの位置を確認しました。ここからエンジンキー連動の12Vを取り出すことにしました。近くのオートバックスに出かけて何か便利な用品がないかを調べてみました。運良く「電源取り出しコード」平型ヒューズタイプという用品を見つけました。これは平型ヒューズからコードが出ているもので、まさに今回の目的にピタリなのですが、スカイラインの場合は「ミニ平型ヒューズ」を採用しているために、一回りサイズの大きい平型ヒューズタイプが使えないことに気づきました。

なければ真似て作れば良いとばかりに「電源取り出しコード」(360円)を買ってきて分解することにしました。ヒューズの片側にビニール線を直接ハンダ付けしただけの簡単なものでしたから、「ミニ平型ヒューズ」の片側にビニール線をハンダ付けして作ってみました。できあがったミニ平型ヒューズ版「電源取り出しコード」をヒューズボックスのプラス電源側に挿入しました。続いてこの取り出しコードをバッテリーの傍に置いた「Power Distributor PD-30」まで引いていかなければなりません。

スパイラルチューブを被せたDCケーブルをドアの隙間を通す

平型ヒューズタイプの「電源取り出しコード」

電源ラインの引き方

車の車内は静粛性を求めるためと防塵防湿などの対策から気密性を高めてあります。電源ケーブルを通すための隙間を探したところで容易に見つかるものでありません。そうは言ってもどこかにあるはずと慎重に細部を調べてみますと、オプションの電装品に使いそうなケーブルを通す直系2~3センチの予備の穴を発見しました。もちろん塞がっていますが利用が可能と見ました。しかし、どう考えてもその場所に手が入りそうにありません。ここにコルゲートチューブを通して、ゴム系の接着剤で隙間を埋めると理想的な配線になると見当をつけましたが、素人には工作が難しそうで、このルートをあきらめました。

次に目をつけたのが、セフィーロでもやっていたエンジンルームからフェンダーを抜けてドアを抜けるルートを検討してみました。試しに30Aの赤黒のコードをフェンダーの隙間を通してみるとスカイラインの場合もなんとか通ることが分かりました。しかしながらドアの開閉で擦れ合う可能性を考えて、万が一にもプラス側の被服が傷つかないようにスパイラルチューブ(10φ×2m、250円)を電源ケーブルに巻いて保護することにしました。

配電盤とノイズフィルター

電源端子盤に「Power Distributor PD-30」を使うと書きましたが、これに加えて「オルタネータ・ノイズ・フィルター」MFN-30(アドニス)を組み合わせました。「オルタネータ・ノイズ・フィルター」は文字通り、オルタネータ(発電機)のノイズを送信電波に混入させないものですから、使っておきたい部品の一つになります。(MFN-30:同社のWebサイトで調べましたが、現行商品ではないようです)

スカイラインのエンジンルームはエンジンや電装品で埋め尽くされているためにバッテリーの傍に配電盤とフィルターを添わせるのはかなりのテクニックが必要でした。しばらく隙間と格闘して配電盤をバッテリーの傍らに押し込むことに成功しました。配電盤を隙間に押し込んだくらいですから留め具が不要でした。

バッテリーとオルタネータ・ノイズ・フィルター、配電盤を配線して車室内に30Aの赤黒ケーブルで引き込み、エンジンキーに連動してDC12Vが通電されるようになりました。エンジンキーを切るとDC12Vは断になります。これでバッテリーを上げなくて済むようになりました。

88-73のナンバーをつけたスカイライン250GT