Onlineとーきんぐ
No.41 カタカナ語と上手に付き合う方法
テレビを見ていたら、4人のタレントがボーリングに興じながら「会話に英語が混じると罰として千円を徴収する」というゲームをやっていました。正確に言うと英語はいわゆるカタカナ語のことで、OKとか、ナイスの類でなんともかわいいゲームなのですが、1ゲームで罰金の総額が8万円にもなりました。結局、4人で80回のカタカナ語を会話に交えたことになり、1人平均20回は日本人がいかに日常会話に取り入れているかがわかります。
また、A新聞の"私の視点"は、その道の専門家が投稿するコラム(新聞雑誌の囲み記事)として、いつも興味を持って目を通しています。某日、記事を読み始めるといつになくカタカナ語が多いことに気づきました。バーチャルリアリティー(VR-仮想現実)、プロジェクト、デジタルアーカイブ(記録資料)、VRソフト、デジタル映像、シアター、インタラクティブ(双方向)などで、なんとバーチャルリアリティーが4回、デジタルアーカイブが3回も出てきました。
カタカナ語に言い換えが付くのは、理解の助けになり大いに結構なことと思いますが、カタカナ語の多用に違和感をおぼえることが少なくありません。バーチャルリアリティーよりも「仮想現実」のほうがわかりやすいと思う反面、もしかして若い世代にはカタカナ語の受けが良いとでも言うのでしょうか。しかしながら言葉は通じなければ意味がないわけで、そういう観点からもカタカナ語の取り扱いを慎重にできないものでしょうか。
カタカナ語にも流行り廃りがある!
最近、雑誌や放送などに「プチ、セレブ、コラボレーション」が頻繁に登場することに気づいていました。フランス語のプチ[petit]が、小さい、小型の、子供の意味で、プチホテル[petit hotel]は「設備や食事などのサービスの充実した小型のホテル」だそうです。ただしこれは和製用法のようです。
女性誌が好きなセレブ[celebrity]、これは名声、名士、著名人、セレブリティーを縮めてセレブとした和製語のようです。道理でデイリーコンサイス和英辞典をめくっても"セレブ"が見当たりません。中でも「海外セレブ」「セレブな貴公子」というような用法(カタカナ語+漢字)を読み解くのに身をよじるような思いをするのは私だけでしょうか。
このところ音楽関係者が好んで"コラボレーション"を使うようになりました。話の脈絡から推測して"競演"という意味くらいに聞き流していましたが、どうしても気になるので調べてみました。コラボレーション[collaboration] 共同制作、合作、協力、提携。とありまして、想像していた以上に広い意味があるとわかりました。
パソコンは英語のかたまり! ?
IT(情報技術)講習では、はじめに「カタカナ語は、そのまま受け入れてください」と受講者に言うことにしています。高齢者にとって迷惑な話と思いながらパソコンが米国生まれで、日本へまるごと導入した経緯を話しますと、不安に駆られる様子がありありで気の毒な気がします。
半世紀以上も英語なしで立派に生活してきた自信が、IT講習を受けてカタカナ語の洪水に出遭いもろくも崩れてしまうのも現代社会の酷な一面でしょうか。慣れない手つきでキーボードを操作する高齢者を見渡しながら、20年前にパソコンに取り組んでいなければ立場が入れ替わっていたかもしれないと思ったりもします。
アマチュア無線もカタカナ語がいっぱい
アマチュア無線はもともと遠距離交信から始まり、外国との交信に共通語として英語が用いられるようになったのは当然の成り行きでした。インターネットの世界でも"英語"が共通語の地位を確保したのはアマチュア無線の流れと同じと考えられます。
略符号のDX(Distance)、ローカル(Local)、FB(Fine business)、YL(Young lady)、XYL(ex YL)、OM(Old man)などがよく使われていますし、オンエア(またはオンジエア)、ミーティング、ラージャー(わかりました)、コンタクト(接触、連絡)などカタカナ語を使い始めると、立派なアマチュア無線家になった気分がしますね。
アマチュア無線のある冊子を覗いてみました。カタカナ語は常識的な範囲に抑えられていて好ましく感じながら活字を追っていきますと、「情報リテラシー」に目がとまりました。はて?と思いながら調べてみました。リテラシー[literacy]は読み書きする能力、識字率とありました。ということは情報・読み書き能力と解釈すればいいのでしょうか。
正確を期するために"情報リテラシー"をインターネットの検索サイトで調べてみました。狭義には「コンピュータが操作できること」を意味し、広義には情報機器の操作能力だけではなく、「情報を活用する創造的能力」を指す、とありました。いや~難しい!ほかにも気になる「インフラ構築」、「ネットワーク世代」、「アシスト局」などが目に付きました。
「インフラ」
インフラストラクチャー[infrastructure]、社会基盤、社会資本、道路、港湾などの産業関連インフラと下水道などの生活関連インフラに分けられる。
「ネットワーク」[network]
網状の構造、組織の総称。インターネットをはじめ、情報通信網、道路網、放送網など多種多様。
「アシスト」[assist]
(1)野球など〉捕殺や刺殺を助けた守備側の選手に与えられる記録用語。
(2)〈サッカー・バスケットボールなど〉味方に適切なパスを送って得点に結びつけるプレー。
また、そのプレーヤー。
カタカナ語+漢字の解釈は、さらに詳しいカタカナ語辞典で調べる必要がありそうです。やはり注釈が欲しいと思うと同時に外来語の言い換えがあってもいいのにと思ったりもします。結局のところ、文章をきちんと読んで理解するためには、カタカナ語のもとになった英語をきちんと押さえておく必要がありそうです。
外来語の言い換え
国立国語研究所が提案する「外来語の言い換え」が新聞に発表されたときに、記事を切り抜いておきました。これはカタカナ外来語を日本語に置き換えているもので、これを見る限りカタカナ語より「言い換え」のほうが分かりやすいと思いました。
- アクセス=(1)接続、接近、利用、参入(する)、
(2)交通の便、交通手段、到達手段 だそうでよく分かります。
ガイドライン=指針、指標、手引き。
コンテンツ=情報内容、内容、番組。
スキーム=枠組み、計画。
セキュリティー=安全性、安全対策、保安。
セカンドオピニオン=別の医師の意見。
デイサービス=日帰り介護。
プロトタイプ=原型、試作モデル、典型。
モータリゼーション=車社会、車社会化。
むすび
カタカナ語、和製英語、カタカナ語+漢字、いずれも日本語に違いなく、好むと好まざるとに関わりなく読む・書く・聞く・・・の洪水から逃れられません。いよいよもってカタカナ語辞典、パソコン用語辞典などが机上から手放せなくなってきました。
話し言葉にあいまいさを残したままカタカナ語を使うのはよそうとか、知らないカタカナ語に出遭ったらすぐに辞典を開いて調べようと決めました。いまはインターネットの検索サイトに調べたい文字を入力して検索すると、言葉の意味に到達することができますので大いに利用したいと思っています。
「カタカナ語辞典」三省堂編修所編 1万5000語を収録 1500円
「パソコン用語 語源で納得」ナツメ社 藤田英時 著 680円