2003年のハムフェアが、東京・有明の国際展示場"ビッグサイト"で開かれたのは記憶に新しいところです。暑い盛りの8月下旬、広い会場を歩き回って疲れた足を引きずりながら屋内展示の取材を終えて隣接の駐車場へ向かいました。モービルアンテナが林立する中、HFバンドのアンテナ、V/UHFバンドのアンテナのセッティングを確かめながら歩いていました。ふと1台の車に目を向けると「8873」というアマチュア無線家にはおなじみの4桁の数字が飛び込んできました。

新車の取得時や名義の変更の際に「希望ナンバーを指定できる」ようになったのはよく知られていますが、実際に目の当たりにすると「おお やったね!」と声を掛けたくなります。アメリカやオーストラリアではコールサインを車のナンバーにできるようでうらやましい限りです。日本でも規制緩和の一環として好きな数字を希望できるようになりましたので、「4649」とか「4126」、「4186」などの数字の語呂合わせが可能になりました。因みに、これは「よろしく」、「良い風呂」、「良いハム」のつもりです。

ディーラーの人に聞いてみると、人気があるのは一番を意味する「1」や「1111」、セブンが並ぶ「777」「7777」などで、これらの番号は希望者が多いために抽選になるそうです。もっともアマチュア無線界で意味のある「8873」は、一般人には理解の外でしょうから、「8877」をなぜ取らなかったかと思われるのがオチかもしれません。

“7388”センブンティスリーとエイティエイト

“8873”エイティエイトとセンブンティスリー

人気ナンバーワンの「8873」「7388」

アマチュア無線によく利用される略符号の「DX」や「FB」、「YL」、「OM」、「GB」などに並んで唯一、数字の「73」と「88」がよく使われています。その意味するところは改めて書くまでもなく、

「88」 YLに対して敬意を表した「さよなら」の言葉。Love and kisses
「73」 敬意を表した「さよなら」の言葉。Best regards

いうことで、「さよなら」=「8873」を車のナンバーに付けて「アマチュア無線家」と表示していることになり、それも並々ならぬアマチュア無線好きを表しています。

実は「7388」とつける方もおられるのです。数字の小さい順に並べるとこのようになりますが、女性に敬意を表して「8873」とする方が多いような気がします。あるOMは「妻に敬意を表して88を先にした」と恐妻家ぶりを発揮していました。

SSBは「59」

ナンバープレートは「59」あるいは59を重ねた「5959」を見かけました。
RS59は了解度(Readability)5~1・信号強度(Signal strength)9~1の表示で、「ファイブナイン」「ごーきゅー」と呼ばれて身近に感じるところから「59」をつける方が少なくないように思われます。

“59”レポートのファイブナイン

CW、RTTYは「599」

駐車場では「599」も多く見かけました。CW愛好者にはこだわりの数字「599」でしょうね。RSTコード=了解度(Readability)5~1・信号強度(Signal strength)9~1・音調(Tone)9~1の最高が「599」ですから、この三桁の数字からCW(あるいはRTTY)の愛好者とわかります。車の持ち主が戻ってきましたので、CWの話を持ち出してみると相好を崩してこちらの話に乗ってきました。

“5959”ファイブナインの繰り返し

SSTVは「595」

SSTVは画像を送受信しますので、RSのほかにV(画像の品質)が重要です。RSV=了解度(Readability)5~1・信号強度(Signal strength)9~1・受信画像の品質(Video)5~1となります。レポートの最高は「595」ですから、この三桁目の数字"5"からSSTVの愛好家とわかります。

送信管の「6146」を付ける人も

アマチュア無線のキャリアの長い方なら真空管の「6146」に特別の想いを抱いています。2E26に続く上位の送信管「6146」に憧れた人が多かったと思われます。いまだに「6146」を手放さず保存している方を何人も知っていますが、この延長線上に「807」があり、「807の会」結成して毎年8月7日に集いを持ち、ラジオ少年からハムになった人たちが真空管を共通の話題に語り合っていると聞きます。

送信管の“6146”JA1BFM松野さんの車

「8874」は失敗! ?

ハムフェアの駐車場で見かけたのが「8874」でした。これはなんだろうと足をとめました。どんな意味があるのか考えても分かりません。推測できるのは「8873」の番号違い、つまり登録申請の際になにかの手違いで数字を間違えたのではないかと推測してみました。もし他に意味があるとすれば、ぜひ教えていただきたいですね。

「周波数」をナンバープレートに

モービル運用の周波数3.543MHzが「3543」、同じく7.099MHzなら「7099」、そして「2134」はSSTVの運用周波数の21.340MHz、「2864」は28.640MHzモービルハムグループというふうになります。V/UHFバンドでも良く使う周波数を4桁の数字に置き換えることができると思います。

トランシーバーの型名をナンバープレートに

アイコムから百万円の最高級トランシーバーIC-7800がまもなく発売されますので、愛用される方は新車の購入時に「7800」とつけてみてはいかがでしょうか。IC-706MKⅡGMなら「706」、これはよく似合うと思われます。

希望ナンバーの申し込みは

希望ナンバーには、「抽選希望番号」と「一般希望番号」の2種類があり、「抽選希望番号」は一週間に1回行われる抽選で当選すると与えられます。「一般希望番号」は、陸運局に付属する"希望番号予約センター"に申し込み好きな番号をもらうことができます。代金は先払いで4,000円~6,000円くらいです。

抽選対象希望番号は、以下の13種類です。

1  7  333  555  777  888
2000  1111  3333  5555
7777  8888  3000

 

むすび

少し前まで数字の語呂合わせや略符号を車のナンバープレートにつける意義を深く考えていませんでした。最近、あるミーティングで友人のピカピカの新車を見る機会がありました。ナンバープレートを見ると、「8873」が燦然と輝いていました。にんまりする友人の顔を見ながら「ミーハーだ!」と思いながら、見ているうちにうらやましくなってきました。同時にここまでアマチュア無線に入れ込む友人の心情に思いを馳せて人柄を知るよすがとなりました。

JA1IZ竹内さんと“8873”を付けた愛車

「8873」がひと目でアマチュア無線の車とわかる効用を認めて、私も車の代替の際に「8873」を申し込むことにしました。できればコールサインをナンバープレートに付けたいくらいアマチュア無線に入れ込んでいますが、現行の制度の中ではこれはとうてい叶いません。せめてアマチュア無線によく利用される略符号をナンバープレートに置き換えてみたいと思うようになりました。

車を注文して待たされること1ヶ月、ようやく「8873」のナンバープレートを付けた車がやってきました。これで押しも押されもしないミーハーの仲間入りを果たしたことになります。