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No.39 山岳ドライブにモービル運用がおすすめ
28.640MHz を連絡周波数にSSBによる交信を楽しむグループ(NET28グループ)の親睦会に参加して、標高1,600m紅葉真っ只中の静岡県県民の森(静岡市井川656-2)を訪ねました。ロッジを貸し切りバーベキューとオークション、夜は近くのスキー場で満点の星と天の川を鑑賞し秋の夜長を過ごすという趣向です。
静岡市井川のスキー場で富士山を望む。ここで昼食をとった
5時半起床、支度を済ませて東名高速の瀬田IC(インターチェンジ)を目指しました。青梅街道から環状8号線に入り、瀬田まで1時間半。富士川SA(サービスエリア)に待つ友人たちと10時半の合流を予定しています。センターコンソールに設置したIC-706MKIIトランシーバーのコントロールパネルに手を伸ばして電源スイッチをON、メインダイヤルを28.640MHz に合わせて周波数をロック、モードをSSBに合わせました。
トランクリッドに設置した全長1.5mのモービルアンテナに21MHzと28MHzの短縮コイル付のエレメントを装着してあります。ボリューム上げると微かに仲間の声が聞こえてきました。信号強度から見て距離はかなり遠いようです。東名高速に入ったのが午前8時、到着時刻までは2時間半の余裕があります。
富士川SAに近づくにつれて28.640MHzがにぎやかになってきました。友人たちと久しぶりの挨拶を交わしながら法定速度で走行しました。突然、438.640MHz FM機のスピーカーから「いまどの辺りですか」JA1WC九保さんの声が流れました。7月の北海道周遊ドライブの際に、苫小牧付近で交信いただいた九保さんです。定刻の30分前に「あなたを除いて全員が到着している」と知らされて、少なからず慌てました。
富士川SAに入り横浜寄りのパーキングエリアに車を進めるとモービルアンテナをつけた車が数台停まっていました。参加各位に挨拶して会計係に会費を払い手続きを済ませ、この後8台の車列を整え出発しました。清水ICで降りて国道1号線をしばらく走り、安倍川沿いに北上、約50キロの山岳道路をひた走り井川湖を目指しました。
静岡県県民の森ロッジでバーベーキュー
険しい山道に無線交信が有効
安倍川を右に見ながら走行するにしたがい道幅が狭くなり、すれ違いがいよいよ難しくなってきました。見通しの利かないカーブなどでは、先行する車からの対向車情報が安全なドライブに欠かせません。先頭を走るJA1HIN亀井さんからが「黄色のワンボックスカーが行きます。スピードを出しているので注意してください」と438.640MHz FMトランシーバーから流れました。
圏外では使えない携帯電話
「ダンプカーが2台続いて下りていきます」
後続車はすれ違いが可能な道幅を見つけて停車、ダンプカーを待ちます。スムースな走行が実現しました。
「バイクが2台続きます。スピードが出ているので注意」
減速して2台のバイクが現れるのを待ちます。なるほどやってきたバイクは危なっかしい感じです。安全にやり過ごして再び走り始めました。
「大勢の人が雑草の刈り込みをやっています。注意してください」
きめ細かな情報が頻繁に流され、最後尾の車から「了解」の声も入ります。
「次のY字路を右側に入るとスキー場です。この駐車場に車を停めて弁当にします」
スキーシーズンを前にして駐車場はガラガラ停め放題です。標高1,600mのスキー場を見渡すと一隅にピンクのコスモスが群生していて、遠くに美しい富士山の頂きをはっきりと眺めることができました。正に絶景ポイントでの昼食になりました。 険しい山道をドライブしながら気づいたのは、携帯電話が圏外では使えないという当たり前のことでした。都市部では万能を誇る携帯電話も人里離れた山岳地帯で使えない弱みを見つけて「やはりアマチュア無線に限る」と快哉を叫びました。
携帯電話をアマチュア無線のライバルと考える方もおられますが、そうした意見に同調できないのは「アマチュア無線は青少年の科学する心を育て、通信訓練を通して社会に奉仕・貢献できる趣味」と考えてのこと。今回の山岳ドライブを通じて改めてモービルハム(=車で無線運用する)の効用に気づかされたからにほかなりません。やはり車にアマチュア無線が似合うのは昔も今も変わらないという思いでした。
都市部で便利な携帯電話も山中の圏外ではただの小箱、さっぱり役に立ちません。日本のスイス村と呼ばれる井川湖は携帯電話の圏外地域、一泊2日の間、電話の呼び出し音から解放されて、なぜかのんびりゆったり気分になれました。
翌朝、再び車列を整えて山伏峠を越えて林道勘行峰線の厳しいドライブに挑戦しました。山深い林道には携帯電話の中継局がないらしくしばらく圏外が続きました。幹事のJA1INY笠原さんが、携帯電話の電源スイッチを切るように仲間に声をかけていました。圏外に入るとスキャニングを始めて電池を消耗するのだそうです。皆、慌てて携帯電話を出して電源スイッチを切っていました。
28.640MHz NET28グループのモービル局の車列
峠越えは仲間と一緒に
井川湖から標高2,000mの山伏峠を経て雨畑川沿いに進むとみごとな紅葉に囲まれて、その美しさに歓声を上げました。未舗装のでこぼこ道や工事中の悪路に悩まされて慎重な運転を余儀なくされました。オフロード車は別として、都会を走るセダンやワゴンは車体が低くて凹凸の激しい山道走行に向いていません。
一台の仲間のワゴンが足回りから異音が出て立ち往生したと無線連絡が入りました。足回りを注意深く点検するとブレーキのディスクに小石がつまっているとわかり、車に詳しい友人の助言により車を前後に小刻みに動かして小石を取り除くことに成功しました。
先頭を行く車にも438.640MHz FMで連絡がとれて全車両がいったん停止し、アクシデントにすばやく対応できたのは、やはり無線運用の大きな効用でした。この辺りは携帯電話の圏外ですから頼りになるのは、やはり無線交信のできる仲間たちでした。
雨畑ダムを経て早川町に至る山岳道路は携帯電話が依然として圏外で役に立ちません。人里に下りてきて早川町でようやく携帯電話が生き返りました。ここで昼食を済ませて方面別に分かれました。
早川町からは甲府へ抜けて中央高速で向かう人、本栖湖から河口湖へ向かう人、身延山の周遊に出かける人に分かれたため、438.640MHz FMと28.640MHz SSBによる交信が始まり、にぎやかなお別れの挨拶が交わされました。
静岡県の山伏峠で参加者による記念写真
むすび
無線運用とドライブ "モービルハム"に新鮮な印象を抱いたNET28グループの親睦会でした。ややもすると携帯電話の利便性に目を奪われがちな昨今の風潮を憂えながら、今回の山岳ドライブを通してモービルハムの面白さと優位性などを改めて考えてみました。
同時に古くて新しいモービルハムがD-STARやeQSO、EchoLinkなどインターネットとの接続をイメージすると新たなモービルハムのスタイルが浮かび上がり、アマチュアコードの一つ「進歩的であること」を思い出し、これからが挑戦という気持ちに駆られました。