Onlineとーきんぐ
No.37 もう一つのモービルオペレーション
前回、北海道の広い大地をモービル機の名機"IC-706MKⅡGM"を搭載のマイカーでドライブして、HF帯のモービル運用を満喫したと書きました。北海道と関東エリアの28MHz帯における電波伝播の相性がよくて一日中、SSBによる交信が可能でしたから、留守宅の植木の水遣りなどが気がかりで関東地域のお天気情報をお尋ねしては安心していました。久しぶりに1700キロもの長距離ドライブを楽しみ、同時にHFモービルオペレーションをしっかりと堪能できたのはこの上ない幸でした。
アマチュア無線の交信が優先するのは当然ですが、今回の北海道旅行ではノートパソコンを持参してフェリーや車の中でインターネットに接続してEメールの送受信やホームページの書き込みを行いました。宿泊は積丹岬の民宿(北都)と5つのユースホステル(YH)を利用しましたが、いずれの施設もインターネットに接続できる環境にはありませんでした。中でも雌阿寒岳近くの野中温泉YHに到着してはじめて携帯電話が圏外であることを知り、悔しい思いをしました。
国道241号から離れて、湖の透明度が秋田県の田沢湖に続いて2番目に高いと言われる湖"オンネトー"(アイヌ語で年老いた沼)へは、原生林の中を延々とドライブを続けていましたから携帯電話が圏外でも納得できる環境にありました。野中温泉YHはその原生林にたたずむただの一軒、まさに浮世離れした宿のように思えました。硫黄泉につかった後、足寄国道まで出かけてEメールのチェックをしたいと思ったものの外は漆黒の闇、熊の出没を恐れて出かけるのをやめました。
フェリーからのEメールチェック
茨城県の大洗から東日本フェリー(http://www.higashinihon-ferry.co.jp/)の"ばるな"(13,654トン、インドネシアの守り神、星座の名前)に車と共に乗船したのが午後5時過ぎ、18時30分きっかりに岸壁を離れました。2等寝台に収まり20時間かけて苫小牧を目指します。この間、持ち込んだ2冊の本「DVDビデオの作り方がよくわかる本」「DVDコピー&DVDビデオ完璧マスター」を読むことにしました。アマチュア無線もインターネットもできない環境では読書が唯一の時間つぶしになりました。時間がたっぷりあると理解が殊のほか早くて驚いてしまいました。
船窓から眺める海原は暗くて何も見えません。もちろん陸地の陰すらも目に入りません。午前五時半ごろ、携帯電話の電源スイッチをオンにしてディスプレイを見るとアンテナが1~2本立っているではありませんか。これならインターネットに接続できるとノートパソコンを広げて見ましたが、ACコンセントを探すと2等寝台のベッドには見当たりません。通路の壁際を探すと幸運にもACコンセントを発見しました。ACアダプタのコードを一杯に伸ばして通路の一隅にノートパソコンを置いて携帯電話に接続し、アンテナが2本立つところを見つけて、「@niftyのアクセスポイントを調べなくっちゃ」。
東日本フェリー"ばるな"の2等寝台でインターネットに接続
東日本フェリー"へすていあ"の2等寝台 照明器具にACコンセントを装備
船の速度はおよそ50キロ。出発から11時間が経過していました。大洗から550キロ進んでいるはず、全行程の約半分なら「アクセスポイントは函館でいいか」と推測して、パソコンのダイヤルアップネットワークを開いてアクセスポイントの電話番号を入力しました。接続ボタンを押すとあっさり函館に接続してEメールを受信、QTC-Japanのアクセスカウンターのチェックを済ませて、急ぎのメールには返信を書いて送りました。(ご参考:帰途のフェリー"へすていあ"(13,539トン、ギリシャのかまどの女神)の2等寝台は、部屋の照明器具にACコンセントが付いていました。)
車の中でインターネットに接続
翌朝、携帯電話が圏外の"野中温泉"を出発して、足寄国道に戻り帯広へ向かう道すがら、携帯電話の接続を確認して休憩ゾーンで車を停めて後部座席にノートパソコンを広げました。AC電源は持参のインバーターHF-100(DC12V → AC100V)最大出力容量100Wをシガーソケットに接続して使います。アクセスポイントは帯広に設定、昨日から今日のEメールは問題なく受信できました。メールの中に吉池さん(JA0SC)の"SSTV DXニュース"を見つけてDreamweaver(ホームページの制作ソフト)を立ち上げ、20分ほどで作業を済ませて記事をサーバーにアップしました。
車の後部座席でパソコンに携帯電話をつないでEメールのチェック
Yahooメッセンジャーに挑戦
足寄(あしょろ)国道を帯広に向けて走りながらカーナビを見ていると、本別町から国道274号と392号線で白糠(しらぬか)町を経由して釧路に行けると気づきました。急遽、予定を変更して釧路湿原に行くことにしました。途中の釧勝峠では28.640MHzにて関東地域の皆さんと大いに交信を楽しませていただきました。車の走行が極端に少ない山岳道路をすいすい、本州なら有料高速道路なみの快適な道路を無料で堪能できました。
往復300キロを無事に走り通して今夜の泊まりは、蕎麦の栽培で有名な"新得"のサホロYH(ユースホステル)です。最近のユースホステルは夫婦に一室が与えられるほか、宿泊者による"ミーティング"もありません。一人1泊2食で約4千円というリーズナブルな宿泊料金が人気です。友人の川島さん(JJ1HKS)からユースホステルの様子を伺って、北海道に出かける直前にオンライン入会(http://www.jyh.or.jp/index2fr.html)にて申し込みを済ませました。夫婦で利用するために"家族パス"3,500円をクレジットカードで支払い、10日ほどで家族パスと「ホステリングガイド」を郵送で受け取りました。
サホロYHにチェックインして和室に通されました。例によってパソコンを広げて@niftyのアクセスポイントを帯広に設定してEメールの受信をしていると、早くも夕食の支度ができたと声がかかりました。接続をオフにして食堂へ。食卓にボリュームたっぷりのチキンカツと豆腐とワカメ・トマト・キュウリの新鮮サラダ、ジャガイモのひき肉あんかけ、ご当地名物の盛り蕎麦、オレンジとゼリーのデザートがのっていて食欲をそそりました。
新得からキャンベラの荒さん(VK1ARA)とYahooメッセンジャーで通話。(サホロユースホステルにて)
自室に戻り再びインターネットに接続。Yahooメッセンジャーを開くと、荒さん(VK1ARA、オーストラリアの首都キャンベラ在住)がオンラインになっていました。早速、コネクトして文字チャットを始めました。「新得YHから・・・」というと「ボイスチャットに移れるか」と聞いてきました。伝送速度が56kbpsの携帯電話で音声がスムーズに通るだろうか、パソコン用のマイクを取り出してサウンドカードに差し込みボイスチャットのボタンを押してみました。「聞こえますか?」と問いかけると、「お元気ですか?」と荒さんの声が聞こえてきました。心配したとおり音声が途切れがちで間引かれている感じです。それでも内容は完全にわかります。これも実験と割り切りながらおしゃべりに興じました。新得から帯広のアクセスポイントまでの市外通話に過ぎないのですから笑ってしまいます。
むすび
はじめVHF/UHF帯のFMを運用して地元の局と交流を期待していましたが、北海道の広い大地に魅せられて観光に専念する場面が多くなり、結果的にHFバンドの運用に終始してしまいました。今回は北湯沢、積丹岬(民宿)、深川イルムの丘、糠平、野中温泉、新得サホロのユースホステルに6泊しましたが、野中温泉を除いていずれの地域でも携帯電話が使えたためにパソコンにつないでインターネットの利用が容易でした。
観光化されていない糠平湖の幻のめがね橋。(東大雪)
とはいえ車の中でわざわざインターネットに接続してメールのやり取りをする、Webサイトに記事を書き込むという行動は、見方を変えると異常な行動に映るかもしれないと思ったりもしますが、HFバンドで友人たちとの交信・交流に加えてもう一つのモービルオペレーションがアマチュア無線をさらに面白くしてくれたのも紛れもない事実です。