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No.36 IC-706MKIIGMでHFモービルを満喫 in 北海道
茨城県の大洗港から東日本フェリーの"ばるな"(13,654トン)に車(ニッサン・セフィーロ)を載せて約20時間、はるばる北海道の苫小牧にやってきました。13:30上陸してすぐに名物のラーメンで昼食を済ませて、GPSナビゲーターを頼りに支笏湖・洞爺湖を経て北湯沢へ。翌朝、ニセコ・パノラマラインをドライブして積丹半島へ。
苫小牧のフェリー乗り場
北海道を走るのはほぼ初めてとあって地元の車の走り方や癖を観察するところから始め、無線運用はドライブに慣れるまでお預けとしました。車は6気筒2.500cc、曲がりくねった山道を加速しながら小気味よく走行。車にはモービル・トランシーバーの名機、IC-706MKIIGMとアンテナチューナーAT-180を搭載、前面パネルをセンターコンソールに取り付けてあります。左右のトランクリッドにHFオールバンド対応アンテナをつけてあります。
ファーストQSOは28.640MHzで
Eスポに期待して21MHzと28MHz帯のエレメントを装着、HFモービルの運用を始めました。第一声は積丹岬から28.640MHzでJA1BUをコールしてみました。一瞬の間をおいてJA1JJV小栗さんから応答がありました。「どこにいるの?」小栗さんの信号は強くIC-706MKIIGMのSメーターが"9"を振っています。「日本海が見えるパーキングエリアで運用している」と言うと、「後ろの小さなトンネルをくぐると絶景ポイントにでられますよ」とリアルな案内にびっくり! そのうちに小野さん(JA1BU、元JARL技術研究所の所長)が加わって東京・八王子、日野と積丹岬を結ぶラウンドテーブルが始まりました。
積丹岬は小高い山の上にありロケーションが抜群。東京の信号が安定しているので車を走らせることにしてR229に向かいました。車は坂を下り山間を縫うように走ると東京の信号が急激に下がり始めました。小さな山が周囲を囲み見通しがよくありません。見通しがきく海沿いで「これ以上の交信は無理」と判断してファイナルを送りました。それでも北海道で初のラウンドテーブルに大満足したのはいうまでもありません。
JA1BUとJA1JJVのQSOがまだ続いていましたので、その後も受信を続けながら余市を経由して小樽を目指しました。
花人街道で21MHzを運用
前日、深川のユースホステル"イルムの丘"に投宿。早朝、ジャガイモの花に送られて美瑛(びえい)、富良野方面に向かいました。旭川を経由して花人(はなびと)街道に向かうR237で、埼玉県杉戸町の岡田さん(JA1CVF)と21.346MHzで出会いSSBにて近況を交換しました。RS43くらい、いまいちのコンディションに見切りをつけて交信を切り上げることにしました。やはり28MHz帯がいいようです。
ユースホステル"イルムの丘"で
アンテナは1.18mのエレメントの先に21MHz帯(33cm)と28MHz帯(28cm)の2本の短縮コイル付エレメントをつけて2バンドに対応しています。ほかに7MHz(130cm)、14MHz(27cm)、18MHz(35cm)、24MHz(36cm)の短縮コイル付エレメントをトランクに収納してあり、短縮コイルの交換で任意の2バンドを運用できるようになっています。6m帯は約1.5m(1.18cm+33cm)で4分の1波長として動作する仕掛けです。そして144MHzと430MHzはトランクリッドの2バンドアンテナに接続してあります。
トランクリッドにセッティングしたHFモービルアンテナ
旭川から美瑛、富良野を経由して占冠(しむかっぷ)村までのR237号を別名「花人街道」といい、この辺りは緩やかな丘陵にラベンダーの紫、黄金色のひまわり、そしてジャガイモの白い花がパッチワークのように広がっていることで有名です。「かんのファーム」や「日の出公園」「ファーム富田」などの観光スポットが多く、全長57kmの"花人街道"は必見に値します。6月~8月がお勧めで、花が咲きそろう7月がベストのようです。
ラベンダーが咲き誇り、芳しい香りが漂っている
HFモービルは遠距離交信にあり!
東大雪の糠平(ぬかびら)湖に"幻のめがね橋"があると聞いて、宿でもらった手作りの地図を頼りに糠平川林道に入りました。路面の凹凸にモービルアンテナが激しくゆれてアンテナ基台が心配なので、モービルアンテナをいったん外すことにしました。道路にはみ出した樹木の枝にアンテナがあたり、ステンレスのエレメントが曲がり、アンテナ基台を損傷したことがあります。悪路を走るときはくれぐれもお気をつけてください。
糠平湖を周回(32km)しながらCQを出してみました。周波数は28.640MHz、早朝から関東方面にパスはあるだろうか? おなじみの小野さん(JA1BU)からすぐに応答があり、朝の挨拶を交わしました。いうまでもなくアマチュア無線の面白さは「偶然の出会い」とわかっていても、モービル運用の場合は、出会いの場(周波数)があるといっそう面白くなるということです。全国的に運用局が広がる28.640MHzは、モービル局にとっては灯台のような存在であり、コンディションの確認にうってつけの周波数といえましょう。
釧路湿原の展望台に向かう道で
原始の自然を残す"釧路湿原"が見たくて阿寒湖から足寄(あしょろ)国道(R241)から本別町を経て釧勝峠(R274)、R392を走り抜けました。曲がりくねった釧勝峠のドライブは厳しくて長い道のりで何十キロも信号なし、もちろん停止なしの長距離走行に北海道らしさを感じながら快適なドライブを楽しみました。釧勝峠ではコンディションに恵まれてJA1BU、JK1BKB、JA1JJVの皆さんとRS59のラグチューに興じました。
白糠(しらぬか)町を経て海岸通り(十勝国道)に出ると右側に太平洋を望み、はるばる釧路まで走ってきたことを実感しました。ふと気づくとJR根室本線と並んでいました。釧路が近づくと無線運用の虫が起きてくるのは都会人の悲しい性でしょうか。海辺の"道の駅"で休みを取り、モービルアンテナを点検してドライブを再開。CQを出すと28.640MHzで再び小栗さん(JA1JJV)からコールがありました。釧路市湿原展望台に到着するまで快適なQSOが続きました。展望台は小高い丘の上にあり抜群のロケーションに助けられて信号はRS59プラス、公衆電話並に安定した交信が続けられました。
IC-706MKIIの前面パネルをセンターコンソールに取り付けた
東京の山手線に囲まれたエリアとほぼ同じ面積の"釧路湿原"を展望台から眺め、手つかずの大自然を堪能しました。釧路湿原と言えば"丹頂鶴"のイメージが湧いてきましたので、受付の女性に尋ねると近くの「釧路市丹頂鶴自然公園」で見られるといい、タンチョウ公園に回ってみることにしました。展望台から自然公園までは地図を頼りに走るので、安全な運転を期して無線運用はいったんお休み!
釧勝峠でHFモービルを満喫!
釧路湿原と丹頂自然公園を観光して釧路を後にしました。今夜の宿泊地「新得町」まで帯広を経由して150キロのドライブです。再び釧勝峠にさしかかる頃、28.640MHzに小川さん(JK1BKB)と速水さん(JJ1BQX)のラグチューが聞こえてきましたので、しばらく聴き入っていると、デイトンハムベンションのフリーマーケットで見つけたマイクとKWM-2(往年の名機)につないでマイクの音質をテストしていました。
タイミングを計りながら小川さんをコールしてRSは59。おしゃべりにはもってこいの安定したコンディションです。デイトンの様子やハンドマイクの話などを伺いながら、行って来たばかりの釧路湿原や丹頂自然公園の様子などを話しました。途中から速水さん(JJ1BQX)が加わり、互いにの近況を交換しました。この日は日曜日とあって、旧知の笠原さん(JA1INY)からコールをいただいて、またまたおしゃべりに花が咲きました。
まとめ
日曜日は6局と交信を楽しむことができ北海道と関東の相性のよさ、Eスポの出現に助けられて快適な交信が楽しめたことで、HFモービルのよさを改めて認識しました。今回は144MHzや430MHzで地元の局との交信・交流を狙っていましたが、北海道の大自然に魅せられて運用時間が窮屈になり、結局、コンディションが読めて旧知の局が多い28.640MHzに偏ってしまいました。ほぼ決まった時間帯に関東地域と交信できて、北海道の辺境を走行中でも安心感が得られる効用がありました。
使い慣れたIC-706MKIIGMは、いつも通りの安定した性能を発揮してくれましたので安心して操作することができました。来年の7月に再び北海道を訪れて道北、道東をくまなく回りHFモービルを試みたいと思いました。