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No.34 SSTV全国大会(横浜)で最新情報をゲット!
アマチュア無線の世界ではバンド、周波数、モード別のミーティングが各地の持ち回りで技術交流と懇親を深める目的で開かれます。先日、横浜のJR鶴見駅に近い某ホテルに約100名のSSTV愛好家が各地から集まりました。参加者は北海道から九州までを網羅する文字通りSSTVの全国大会が横浜で開かれました。
日ごろSSTVの画像交換により顔見知りの間柄とあって和気あいあいのうちに親しい交流が繰り広げられました。今回は特にSSTVはフリーウエア(無料のソフト)として有名なMMSSTVの作者、森さん(JE3HHT)とデジタルSSTVの開発者、西村さん(JA6UHL)、HAMLOGの作者、浜田さん(JG1MOU)の3人による豪華な講演が実現したことに大きな特徴があり、参加者の技術的な興味と期待を集めました。
MMSSTVの作者、森さん(JE3HHT)の素顔
MMSSTVはSSTVのフリーウエアとして多くのSSTV愛好者に使われ、いまでは世界中で使われるようになりました。受信画像のヘッダーに"MMSSTV"の文字を発見して「ああ、海外でも使われている!」とわかり普及の度合いがよくわかります。MMSSTVが世に出るまでは外国製(米国やEU)のソフトウエア(数千円~)に頼っていましたから、英文のマニュアルを読むのに苦労が伴いました。日本発のMMSSTVがWebサイトから無料でダウンロードできるようになると、一気に愛用者を広げたのは当然の成り行きと考えられます。
横浜大会を主催した山越さん(JA2HYD)が挨拶の中で「おかげで日本人の肩身が広くなった」と誇らしげに述べて参加者たちの共感を呼びました。山越さん自身もかつて"コント1200"(PC-9801用、MS-DOS3.3)というソフトウエアを開発、無料でSSTVの愛好家に提供して喜ばれた経歴の持ち主です。ソフトウエアの開発に取り組む方が少ない中で、森さんのMMSSTVやMMRTTYの開発はまことに貴重な行為といわねばなりません。横浜大会ではこの功績を称えて主催者から森さんに感謝状が贈呈されました。
代表世話人の山越さん(JA2HYD)の開会挨拶
世界に誇るフリーウェア"MMSSTV"
MMSSTVが日本はもとより世界各地の言語に変換されて多くの愛好家に支持されるに至りました。
MMSSTV(Ver.1.09)のメイン画面。
JE3HHT(http://plaza27.mbn.or.jp/~je3hht/)のWebサイトで最新のバージョン1.09(2003.Feb.09)がダウンロードできます。英語版の最新バージョンは1.09(2003.Feb.08)、英語圏のアマチュア(W4HIJ、W0EBなど)の手により英文に翻訳されて入門者の便宜を図っており、同WebサイトのLINKSをクリックしてみると世界の国々(英国、イタリア、ドイツ)の言語に変換されたMMSSTVのダウンロードができるようになっています。多くのアマチュアがボランティアでマニュアルの翻訳を買って出ている様子が伺えます。これはやはりフリーウエアのMMSSTVが先進的な内容と使いやすさを備えていたために世界のアマチュアに支持されたに違いありません。もし、有料のソフトウエアであったならここまで発展したかどうかですね。
MMSSTVのLOGエリア
森さん(JE3HHT)を講師に日ごろMMSSTVを使っていてわからないこと、いろいろな要望に直接答える時間が設けられました。MMSSTVのユーザーが事前に提出した《質問・要望事項》を抜き書きしてみますと、(・・・以降は回答です)
「LOGエリアのQSL欄の用途は?」・・・ QSLマネージャーを書き込む
- 「LOGエリアのABCボタンの用途は?」・・・ 文字入力の反映
「DSPのAFCとLMSの用途は?」・・・ 音のデータを入れておく
「ノイズ等で受信が始まるが、これを防ぐ方法は?」・・・ 検出スケルチレベル
「ログリストをエリア別のコールサイン順に並べ替えるかえる機能は?」・・・ ない
というように30項目にわたる質問と要望に丁寧に応えていました。さすがMMSSTVの作者だけに即座に明快な答えが返ってきて、日ごろの疑問がすっきりと解消しました。
v ここで MMSSTVの特徴である"LOGエリア"について触れておきます。MMSSTVのメイン画面の左側が受信と送信の画面、右側が交信相手のCall、RSV(His,My)、Name、QTHなどを記入するスペースがあり、ここにタイプした文字は送信画像に書き込まれ、同時に[QSO]ボタンを押すことでログ・データが作成されます。[Data]ボタンを押すとQSOのデータ(日付、時間、Call、RSV、Bandなどがひと目でわかり、その下にはLOGが自動的に作成されます。
さらに[List]ボタンを押すとLOGの一覧が見られますので、ログブック(業務日誌)のペーパーレス化が実現したことになります。ログソフトとの手厚い連携が多くの愛好家から支持される所以でありましょう。実際、コンテストログが同時に作成できるために送信画像の文字挿入と送出の時間が短縮されてベテラン並のスマートな運用ができるようになったと言ったら褒めすぎになるでしょうか。
見逃せない講演会の効用
絶大な人気を誇る"HAMLOG"を作者の浜田さん(JG1MOU)からTurbo HAMLOGとリアルタイムにリンクを行うことができるといい、MMSSTVはHAMLOGの検出に成功するとメイン画面のLOG枠に[Link to Turbo HAMLOG/Win]を表示するというお話を聞きました。もっともMMSSTV Ver.1.09のUPDATE.TEXを読み返してみると、そのように書いてありましたので、知らないことを気づかせてもらいました。ほかに"デジタルSSTV"を開発された西村さん(JA6UHL)は、新開発のモデム(ARD9800)を使ったHF帯におけるデジタルボイス、デジタルSSTV、デジタルデータの送受信デモがあり、最新の話題を熱心に聴き入りました。
西村さん(JA6UHL)のHF帯におけるデジタルSSTVの実験
アマチュア無線の全国大会といえば懇親会と抽選会、オークションあるいはジャンク市と大体の構成が決まっていますが、これではEyeball QSOが楽しめても技術志向のアマチュア無線家としては少なからず欲求不満が残ります。その点、横浜大会は新しい技術や研究成果の発表・討論に重点をおいて大変に有意義であったと高く評価できます。
講演が終わりに近づくころ、鍵本(JA4DCG)さんによる「MMSSTV用のテンプレート」の自主的な発表がありました。続いて清水さん(JA6AP)から「NVCGコンテスト」の参加状況と総括が報告されて、すべてのプログラムが終了しました。MMSSTV、HAMLOG、デジタルSSTVのそれぞれの巨匠からお話を聴く機会をいただいた刺激的な大会に名残を惜しみながら大会会場を後にしました。
鍵本さん(JA4DCG)さんのMMSSTV用テンプレートの発表