eQSO(イーキューエスオー)、EchoLink(エコーリンク)が先進的なアマチュア達により世界的な規模で利用が始まりました。これはVoIP(ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル)※1と呼ばれるIPネットワーク上に音声通話を実現する技術をベースにM0ZPD、K1RFDによりソフトウェアが開発され、パソコンを持つ誰でもが音声とキーボードによって他のeQSOやEchoLinkを装備したアマチュア無線局と通信することを可能にしました。V/UHF帯ハンディ機あるいはモービル局、固定するアマチュア無線局がノード・ステーション※2をはさんで交信できるのですから、これはもうアマチュア無線そのものと思って間違いはありません。
電離層反射の短波通信が大好き!

アマチュア無線の醍醐味はやはり電離層反射による短波帯通信が最高!コンディションを予測してHF帯トランシーバーを最良に調整、アンテナビームを西へ東へ回して珍局を待ち受ける、海外のラグチュー仲間が出ていないか、相も変わらずスリリングな交信を一番の喜びとしています。例年、桜が散る頃になると8月のSSTVコンテストに備えてHF帯トランシーバーとアンテナの点検整備を始めます。

JASTA、日本アマチュアSSTV協会のSSTVコンテストは1ヶ月の長丁場なので、無線機器類を最高の状態に手入れを怠りません。その上で使用するSSTVのソフトウェア"MMSSTV"(Ver.1.09)のバージョンアップを済ませておくほか、パソコンとHF帯トランシーバー(V/UHF帯オールモード・トランシーバー)を結ぶSSTVアダプタを実戦さながらに各部の点検を済ませておきます。

こうして迎える8月は真夏の一ヶ月、YU1NRやSM5EEPなどをパイロットにアンテナビームをヨーロッパ方面に向けてダイヤルを3kHzおきに回す楽しみは格別です。どこが聞こえてくるか、どんな画像がディスプレイに映るか、画像に目を凝らす毎日はアマチュア無線をやっていて良かったなと感じる瞬間でもあります。14.230MHzや21.340MHzを運用する合間に430.450MHzに切り替えることもあります。12エレメント×2のヘンテナは半径500キロ位をカバーするため、HF帯とは一味違う電波伝播に夢中になることがあります。
ノード・ステーションとは?

HF帯通信大好き人間は、時としてインターネットにはまることがあります。それもパソコンにV/UHF帯の無線機をつなぐのであれば目の色が変わります。これはもうアマチュア無線の立派な範囲と言わなければなりません。好奇心一杯のアマチュアなら早速に情報収集に取り掛かるのは自然の成り行きでしょう。さて、そのノード・ステーションとはいかなるものでしょうか。

パソコンをインターネットにつなぎ、サウンドカードとインターフェースを介して144MHz帯/430MHz帯FMトランシーバーに接続するとレピーターとしての出力にも入力になるという仕組みです。これをEchoLinkノード・ステーションと呼びます。eQSOやEchoLinkのノードを作るには、それぞれのWebサイトにアクセスしてソフトウェアをダウンロードするところから始まります。コールサインとEメールアドレスの書き込みを要求されることぐらいで難しい手続きはありません。

eQSO.orgのWebサイト。ソフトのダウンロードはここで。

ただ、日本ではオンラインに無線機を接続するとリピーターとみなされたり、インターネットと無線機の接続が国を超えた交信に電波法上の制約があるなど厄介な一面もありますので注意を払わなくてはなりません。とはいえ技術の進歩を停めるわけにも行きませんし、世界的に多くのアマチュアが参加していることを考えると、ここはやはり知識として最新の情報を押さえておく意味は十分にあるかと思います。

今回はeQSOのご紹介です。eQSLに続いて英国で開発されたiLinkシステムが登場して大いに盛り上がりました。クリックひとつでアクセス可能なレピーターと個人局のコールサインがずらり出てきて、いずれの局とも交信可能なのですから夢中になりました。ただし、iLink(M0CSHが主宰)のWebサイトはすべて英語で書かれていたために、登録設定に戸惑うことも多くて日本での普及はゆったりしたものでした。

しばらくするとiLinkは当初の使命をまっとうしてより進化したEchoLinkに受け継がれました。機能を強化して使いやすくなったeQSOはデジタル好きのアマチュアの心をとらえて愛好家を一気に広げました。eQSOはアマチュア無線のコールサインの所持を参加条件に、オンライン上に音声と文字でラウンドテーブルが楽しめる環境を整え、ゲートウエー※3がインターネットとアマチュア無線の本格的な融合にいっそう拍車をかけました。

eQSO.orgで登録

eQSOを始めるにはeQSO.org※4にアクセスしてソフトウェア(Version1.13)をダウンロードするところから始めます。メールアドレスは[コールサイン@jarl.com]で登録すると承認が下りやすいとか、QRZ.COMに登録済みの局は問題ないなどと言われていますが、とにかく所定の手続きを進めて見ることです。

モニターを見ると日本の局がずらりと並ぶようになりました。eQSOの面白いところは音声による会話を続けながら文字の伝送ができる点にあります。パソコンのキーを叩いて名前や地名、天候などを送ります。中でもWebサイトのURLやメールアドレスを送る場合にもっとも有効で一目瞭然ですね。音声が表なら文字は裏回線のようなもの。2つの回線を使って情報を共有しながら通信できる点が優れています。

eQSOのコントロール画面。参加すると自分のコールサインが見える。

eQSOシステムのモニター画面。参加局が一望にできる。

eQSOを体験して

[Client_PCM0ZPD]アイコンをクリックしてjpnqso.dns-tokyo.jpの部屋をのぞいてみました。そこにはおなじみのDX局がずらり並んでいました。ヨルダンJY9NY、オーストラリアVK1ARA、シアトルWB6Zのコールサインに目が釘付けになり、 [Connect To Selected Room]のボタンをクリックして話の輪に加わりました。3大陸と日本を結ぶスケールの大きいラウンドテーブルは、高品位の音質とコンディションに左右されない安定した通話に新鮮な衝撃を受けながら初体験を済ませました。翌日、eQSOの興奮がさめないまま米国・豪州・日本を結んだN2ATF、VK1ARA、7K1NAQ、JK1BKBのラウンドテーブルに加わり、オンラインの醍醐味を十分に味わいました。

101 ENGLISHの部屋を覗くと英国が数局、それにカナダ、スウェーデン、マレーシアに混じって日本のコールサインも見えます。[101 ENGLISH]をクリックしてConnect To Selected Roomを押すと自分のコールサインが追加されてモニター状態になり、ヘッドフォンから会話が聞こえてきます。参加者が多いので自分の出番がいつ回ってくるか分かりません。その間は生の英会話を聴きながら耳を慣らしておきます。そのうちに指名があるかもしれません。そのときはコントロール画面のPTTを押して話し掛けます。無線の会話と同じで自己紹介からはじめて天候や得意分野を手短に話して見てはいかがでしょうか。
むすび

MSNメッセンジャーやYahoo!メッセンジャーなどで音声通信のできるパソコン環境なら問題なくeQSOを始められます。はじめに戸惑うのはサウンドカードのマイクとヘッドフォンの出力調整でしょうか。いざ通話の段階に入り音声が相手に届かないこともありますので、事前にMSNメッセンジャーを立ち上げてオーディオ・チューニング・ウィザードをクリック、マイクとスピーカの通話テストを済ませておかれると安心です。

本稿を書き始めたところで「eQSOはアマチュア無線と異質なもの」とする電離層反射通信を信奉する熱心なアマチュアから何人ものeQSOを利用するアマチュアたちが厳しく問いただされて説明に苦労したと聞きました。いろいろな考え方が交錯する中で新しい技術の普及と定着に時間がかかるのも、またやむを得ないのかもしれません。

アパートやマンションなどでアンテナを建てられなくて不遇を嘆くアマチュアにも、またリニアアンプを使えない住宅密集地でDX交信ができない方にも等しく世界中のアマチュア局と交信の機会を与えてくれるeQSOやEchoLinkをアマチュアの良きツール(道具)として使い分けてみてはいかがでしょうか。最近、登場したISSTV(インターネットSSTV)※6についても大いに興味をそそられるものがあり、先入観を捨てて取り組み体験してみようと思っていいます。

※1 ボイス・オーバー・アイピー(Voice over IP)の略称です。インターネットの通信手順 「IP(インターネットプロトコル)」を使い、音声を細切れデータに分けて送受信する電話技術・サービスです。現在、VoIPといえばLAN同士をデータ通信網で結び、相互にVoIPゲートウェイを設置し、電話対電話で通話を可能にする企業向けのシステムを指すことが多い。
※2 ネットワークに接続されている端末やネットワーク機器のこと。
※3 ゲートウエー(Gateway)門口、出入り口。インターフェィスを介してインターネットに接続されたアマチュア無線局(無線機)。
※4 eQSO.org http://www.eqso.org/
※5 EchoLink http://www.synergenics.com/el/
※6 ISSTV http://www.hb9tlk.com/isstv/