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No.26 英会話上達法!【気力編】
英会話を耳からなんとなく聞いているうちに突然、英語をしゃべりだして周りの人を驚かせ、いつの間にか英語が話せる自分に驚いてしまうという"通信教育の広告"にお目にかかることがありますね。こんなに上手い話はあるのかなと疑いつつ、こんなにいい学習法があるならあやかりたい気持ちがあります。あなたはこの上手い話が信じられますか。
東京とその周辺ではFEN(Far East Network=駐留米軍のラジオ放送、810kHz)が軍人軍属とその家族を対象にニュースやスポーツ中継、音楽などを流しています。定時に伝えられるニュースは、しばらく聴いていると断片的ながら内容が理解できるようになります。ブッシュ大統領の動静、その日の世界の事件を取り上げていて日本の新聞やラジオとほぼ同じ内容だけに、英単語がつなぎ合わされると全体像が浮かび上がってくるのです。
FENを長い時間聴いていますと、ヒアリングの向上と共に発音がよくなるのも確かです。何気なく簡単な言い回しを使っているということもあります。ただし、いいことばかりでなく発音ばかりが先行して実力を伴わないと、この人は英語が達者と見られて英語の嵐に巻き込まれて立ち往生することもありますので気をつけなくてはなりません。実力に見合った発音がちょうど良いに決まっていますね。
アメリカのCQ 2002年10月号の表紙 JOTA(Jamboree on the Air)のステーション(K4BOY)でICOMのトランシーバーを操作するW4SNW。
発音が良すぎて失敗?!
(1)デイトンハムベンションのフリーマーケットに"COLLINSの復旧とサービス"の看板を掲げて出展しておられるW3ST David A.Knepperさんにお目にかかったとき、「コリンズのメンテナンス」(JA3FR 上銘正規著 電波実験社刊)の編集に関わった経緯からW3ST Davidさんを一方的に存じ上げていましたので、自己紹介と初対面のご挨拶をしましたところ、「貴方の英語はベリーグッド!」と褒められてはや口の英語の洗礼を受けましたが、言っていることの2、3割しか分からず実力を伴わない発音に問題があるという見本になりました。
(2)ハムフェアの会場でJAIA(日本アマチュア無線機器工業会)の昼食会に招かれたときに、CRSA(中国ラジオスポーツ協会)の訪日団と隣り合わせてBY7WGLの頼(ライ)先生にお目にかかリましたので、とっておきの中国語で「ニィシェンテハオマ? ウォダァミンツー チュアンホウシンサンラン チントゥトォクワンツォウ」と歓迎の気持ちを込めて話し掛けてみました。すると頼先生の顔がぱっと明るくなり速射砲のような中国語の嵐に巻き込まれてしまいました。流暢な中国語はここまで。ここから先は日本語に切り替えて「これ以上は話せません」とお詫びしましたが、上海の鄭正文(BY4ALC)先生に挨拶の言い回しを特訓されていましたから、発音だけは良いのです。
IARU国際アマチュア無線連合の会長、W4RAラリー・プライスさんとHAM RADIO 2002の会場でお目にかかってご挨拶。
気力で話す英会話とは
ここで"気力編"としたのにはちゃんとした意味があります。なんとか英語が話せるようになりたいと挫折を繰り返して日夜努力しておられる方にお勧めしたいのが気力で英語を話す。そんなことができるのでしょうか? 答えは「イエス」相手に伝えたい内容があれば、ほとんどの方が英語を話せると言ったら驚いていただけるでしょうか。
RTTYやPSK31で英語による交信を楽しんでおられる方なら、英文の手紙を書くぐらいは問題がありませんね。後はパソコンのキーボードに向かうのと同じくらい気楽に口を動かせばいいのです。そしてSSBによるワンパターン英語交信も卑下することはありません。これからは「混信が出てきたので・・・さようなら」は使わなくて済むようになります。それは伝えたい内容を持っていれば、気力=迫力で相手に伝えることができるからです。
抑揚のない発音発声はたとえ文法的に正しい会話でも相手に伝わり難く損をしています。欧米人の大仰な抑揚を真似して大きな声を出して話してみることをお勧めいたします。きっと相手は耳を傾けてくれるはず。恥ずかしそうに話したのでは、せっかくの会話力が半減するというものです。下手でも構わないからお腹に力をこめて話すことで、こちらの意思が相手に伝わり自信につながります。
ツェッペリン博物館で出会ったDK8CK Werner Knorleさん。日本人ハムに出会った喜びをいっぱいに表しながら"ツェッペリン賞"を熱心に説明してくれました。
英語を使う機会を作る
以下は必要に迫られて目的達成のために英語を使った事例です。
(1)アマチュアなら海外との交信でいつでも英会話の実践ができますね、ただ、ローカルの友人達が聞いていると思うだけで恥ずかしさが先に立ち萎縮するばかりです。「下手だから仕方がない」と開き直って自分流の会話に徹すると徐々に上手になっていくパターンがよく知られていますし、また、お酒の力を借りて精神的な緊張を解くのも英会話の練習に効果があるといわれています。
(2)英語を母国語としない外国人、例えばヨーロッパやアジアの国々の人たちとの英会話は、お互いにとり英語は外国語ですからハンデは同じ、簡単な言葉が頻繁に使われて分かりやすのでお勧めです。友人の一人G3NOM Rayさんはれっきとした英国人ですが、まずい英語にも思慮深そうな顔つきでしっかり耳を傾けてくれますから、英会話が上手になったような錯覚を覚えるほどで本当にありがたい存在です。
(3)オーストラリアのシドニー空港でJAL(カンタスと共同運航)に重量物を載せて欲しいとオーストラリア人と渡り合い、押し問答の末にファーストクラスのシートにくくりつけて日本に持ち帰ることに成功した経験があります。一時はチェックイン後の搭乗をあきらめるシーンもありましたが、重量制限の難関を突破できたのは、こちらの熱意に押される形で希望をかなえてくれたからに他なりません。
(4)ワシントン空港でニューヨーク行きの搭乗案内がないままに長い時間待たされて、空港係員に「いかなる事態か、適切なる告知が必要ではないか」と迫り、"機材遅延"のアナウンスを引き出しました。今考えますと米国の首都で一介の日本人が無謀なクレームをつけてしまったかなという反省があります。正義感も程ほどにしなくてはなりません。
(5)ARDF国際競技の取材で北京を訪ねました。この競技に記念局"BT××ARDF"が併設され、役員・参加者・取材陣にも運用が許可される見通しでした。ところが許可証の発給が滞り「いつになったら運用させてくれるのか?」と夜更けの直談判に及びました。どうやらVIPの許可証が優先されて下々までは手が回らなかったようです。そこで、私にも運用する機会が欲しいと熱心に訴えて、ようやく許可証を手にすることができました。
シドニー在住のVK2AOTルディーさんはドイツ系オーストラリア人。久しぶりの再会を記念写真に収めました。
英会話をモノにする10か条
次に<英会話の上達法>らしく体験に基づく標語を掲げておきます。
・英語を使う機会を作る。英文の手紙を書いてみる。
・ネイティブスピーカーから発音を学ぶ。
・決まり文句を覚える。覚えたらどんどん使う。人が使っている言葉をいただく。
・ヒアリングは全部分からなくても一部が聴き取れれば十分。
・分からないときは聞きかえす。分かった振りはしない。
・英語の映画を観る。FENなどを聴く。
・恥ずかしがらずに、とにかく英語でしゃべる。
・間違えても構わない。発音をあまり気にしない。
・英語漬けになる。英語を話す必要がある、外国人のパーティーに出てみる。
・アマチュア無線(SSBによる音声通信や、PSK31などの文字通信)で英語による交信を実践する。
まとめ
英会話に精神論を振りかざす可笑しさを指摘されることを覚悟の上で本稿をまとめました。目的の達成に後一歩のところで自信がもてない仲間に向けて"気力"による英会話の試みが「目からウロコ・・・」と説いてみました。中学・高校の6年間で基礎的学力は十分のはず。文法に完璧さを求めてみっともない会話を人前で披露できないと自信のない英会話に終始していたのでは実にもったいない。英会話が少しできるだけで友人達がもたらすニュースにも敏感になり、先進的な技術にいち早く気付く手段にもなりますので、たかが英語と侮ってはいけません。インターネットの世界の共通語としての"英語"の重要性はますます高まっているのです。