フリーマーケット(Flea Market)を直訳すると“蚤の市”、Fleaは虫のノミですからノミのように小さい市と解釈すればいいのでしょか。因みに蚤の市を国語辞典で引いてみますと「パリ市外の古物市」と記されていました。つまり古い物を並べて売る小さい市と解釈するのが妥当のようですが、本来の由来がもしかして古物プラス虫から来ているのではないかという疑いが消えません。

昨今の若者はフリーマーケットを縮めて「フリマ」と親しみを込めて呼び、古着の中から見つけた一枚を新しい感覚で個性的な自分を装うなど、自由奔放な若者に脱帽するばかりです。売買されるのは古着や季節のもらい物、引き出物、記念品などが一番多くて、ついでアクセサリーや家具などが一般的です。一方、団地の一隅や公園を借りて開かれるフリーマーケットが盛りあがっていますし、ガレージセールもベッドタウンで普通に見られる光景になりました。

ワンボックスカーのドアを開ければお店にはや変わり。

フリーマーケットの“フリー”を自由(Free)と思い込み“自由市場”と解釈する向きも無しとはいえません。それはそれでなんとなく形になるところからほほえましく、一方的に笑い飛ばすわけにはいきません。そこでFreeと区別する意味でFleaを「フレア」と発音する方もおられます。文字にすると「フレアマーケット」ですね。発音表記ではやはりフリーが近いように思えますが 、そうするとまた“自由”と混同する人が出てきて英語のカタカナ表記はやはり難しいなぁと考え込んでしまいます。

英会話ではFleaのエルをきちんと発音すると格好が良いですね。最近のテレビ局は女子アナに英会話に長けた帰国子女を採用するのが流行のようで、その女子アナがネイティブと見まごう流暢な英会話と正しい日本語を鮮やかに切り替えているのを見るにつけ、私たちアマチュアも「Flea」と「Free」の区別をきちんとつけたいと思いながら簡単でないのが実情です。

フリーマーケットは目利きと値切り

4月下旬、神奈川県厚木市のお寺の境内で開かれる神奈川コンテストクラブ主催の「エレクトロニクス・フリーマーケット」に友人を誘って出かけてみました。お寺の住職がアマチュア無線家とあって駐車場スペースをフリーマーケットに開放していました。車1台のスペースが千円と言う破格な出店料が人気を呼んで参加者が年々増える傾向にあります。会場費が安くないと成り立たないのがフリーマーケットですから好評な理由が頷けるというものです。

出店者はアマチュアが持ち寄るパーツや珍品が中心になりますが、プロのジャンク屋さんも参加して米軍通信機や古典ラジオがずらり並ぶので、小型のデイトンハムベンションの趣があります。最近の傾向はやはりパソコン関連のパーツや少し前のパソコンの出品が多くなってきました。売買されるアマチュア無線機の値段は高めに推移しているようです。それでも目をつけたら値切り次第で安く買えるかもしれないので粘ってみる価値はありそうです。

ぶらり歩きをしていたら、ふとアイコムの往年のHF帯トランシーバに目がとまりました。手入れのよさと懐かしさで立ち止まり発売当時の思い出にふけりながらしばらく見入っていました。フリーマーケットでは、買う立場から「目利きと値切り」が欠かせませんし、売る立場からは「良いものを安く」売るのがコツではないかと思っています。ただいくら安くても不要不急の品は買わないほうがよろしいでしょう。結局、手元に置いても使われないままジャンク市などで売る破目になるのはよくあることです。

アイコムの往年の名機が出品されていました。

朝からあいにくの雨にたたられて、傘を差しながらのショッピングになりました。それでも珍品を見つける好事家も少なくなく、それなりに売買が成立していたのはさすがと言うべきでしょうか。私たちはアイコムの名機“IC-3N”をペアで並べたところ、あっという間にマニアに引き取られて行きました。IC-3Nはサムホイルとスケルチ、ボリューム、そしてPTTだけの超簡単操作に人気はいまだ健在! IC-3Nの良さを知り尽くしたアマチュアが即座に購入を決めて大事そうに抱えて行きました。

まもなく世界最大の「デイトンハムベンション2002」が米国のオハイオ州デイトンのHaraアリーナ-で開かれます。ハムベンションにあわせて発表されるアイコムなどメーカーが満を持して発表する新製品がとても楽しみです。研究発表や各種ミーティングに並ぶフリーマーケットが目当てと言い切る人も少なくありません。真空管やバリコン、BIRDなどに代表される測定器、コリンズなどの送受信機、特殊工具、なんでも手に入る宝の山を目前にして興奮のるつぼと化します。

めっきり手に入りにくくなった真空管にお目にかかりました。

続く6月下旬は、南ドイツのフリードリヒスハーフェンで開かれる「Ham Radio 2002」のハムショーが有名です。メーカー展示と販売、ここでもフリーマーケットが繰り広げられると聞きました。ドイツを中心としたSHF帯の高性能プリアンプやコンバーター、個性的なアンテナや精密工具などにも期待がもてそうです。筆者ははじめてかの地を訪ねることにしており、SSTVで交信したドイツやフランスのアマチュアとアイボールQSOができないか考えているところです。

省資源、リサイクルの観点から古いもの、使い終わったものの再利用を考える風潮が世の中で広く浸透するようになりました。ただ、アマチュア無線機に限って言えば愛着が深い分だけ手放させないまま、押入れで眠ってしまう例も珍しくないようです。この機会に使いたい人に使っていただく意味合いからフリーマーケットに出品してもう一度愛機に光を当ててはいかがでしょうか。