日本と中国、中華人民共和国との間ではいわゆる相互運用協定が結ばれていません。国を代表するアマチュア無線の団体、JARL(日本アマチュア無線連盟)とCRSA(中国ラジオスポーツ協会=中国無線電運動協会)の間で親しい交流が続いていても、いまだ両国の間で相互認証が行われていないのです。

国同士の運用協定が結ばれていなくても、中国は外国人ハムに運用の道を開いています。CRSAに申請書を送りますと2~3週間でビジター用の証明証(Amateur Radio Operator’s Certificate for Visitors)を送ってきます。

日本人は証明証を持参すれば中国に出かけてクラブ局の運用ができます。一方、ハムフェアにあわせて来日する中国人ハムは、日本での運用が全く開けていません。中国人が日本のアマチュア無線局を運用するには、日本の国家試験を受けてアマチュア無線技士の資格取得の道が開けていると言いましても、日本人ハムが中国で容易に運用させていただいている観点からは肩身を狭くしているように思えます。

ビジター用オペレーター証明書

外国人向けの “オペレーター証明書”は、政府から証明書の発行を代行するCRSAが行います。証明書は縦8.5センチ、横12.5センチのサイズに英文で名前・生年月日・ライセンス・国籍・パスポートナンバー・性別・コールサイン、そして証明書の発行年月日と有効期日が記載されています。そしてCRSAの大きな承認印が押してあります。

ビジター用アマチュア無線オペレーター証明(個人のデータを削除してあります)

証明書の有効期間は発行から1年です。たとえば、発行日が2002年4月10日なら有効期間は2003年4月10日となります。2000年までの申請は翌年の12月31日までが有効と記載されましたが、2001年からは翌年の同月同日までとなりました。

証明書の裏面にある注意書きを要約しますと次のようになります。
1.当局の任命によりCRSAが証明書を発行する。
  BY & BTプリフィックスのステーション(クラブ局)で運用できる。資格明記。
2.コールサインはWA1AA/BY1PKのように使う。BY1PKでもよい。
3.と4.で規則の遵守を求めています。

この証明証で運用ができるのは、BYあるいはBTで始まるクラブ局のみです。BY1PKやBY4AA、BY4HAMなど。クラブ局の責任者に運用の許可をもらう必要があります。使用するコールサインは自国のコールサイン+クラブ局のコールサインとなります。JA3×××/BY4HAMのように使います。BY4HAMを使い、オペレーターがJA3×××とか、名前を言っても構いません。

BA、BDプリフィックスの個人局で外国人ハムが運用することができません。証明書をもとにして運用ができるのは、クラブ局だけと覚えておいてください。外国人にはアマチュア無線局の開設は認められていません。BWプリフィックスが外国人に用意されているという話は聞きますが、いまのところ発給された実例はありません。

オペレートの許可を申請する用紙

申請に必要な書類等

1.申請書
2.無線局免許状と従事者免許証のコピー各1枚
3.パスポート(1~2頁)のコピー1枚
4.写真(縦35ミリ、横32ミリ)
5.手数料としてUS 5ドル。
なお、返信用の封筒は必要ありません。CRSAの封筒に中国切手を貼って送ってきます。
申請書の様式を掲げます。これはJARL国際課(TEL.03-5395-3106)からFAX(03-3943-8282)にて送っていただいたものを繰り返しコピーして使っています。

記入欄は、漢字氏名・ローマ字による氏名・旅券番号・生年月日・性別・日本の従事者免許証番号・コールサイン・申請者住所・滞在予定期間(入国、出国日)・渡航目的・運用予定の市かクラブ名・特別な運用上の希望を記入します。渡航目的は「観光」あるいは「友好交流」などと記入しておくとよいでしょう。また運用上の希望は、「RTTYやSSTVの運用を希望」などと特記したいことを書きます。Dateは申請日です。Signatureは自署(署名)ですからパスポートと同じ署名をしておきます。

申請用紙は、ここに示す様式であれば受け付けてくれるようですから、ワープロで自作されてもよろしいと思います。ただし、申請書の記入はタイプライターの使用か活字体で記入するように求めています。漢字氏名と運用予定の市かクラブ名以外は英文による記載をお勧めします。もちろん中国語も受け付けてくれるはずです。

申請書の宛先は【中国北京6106信箱、100061、中国無線電運動協会】と書いて航空便で送りますと2~3週間で証明書が送られてきます。

運用上の注意点

証明書を示して運用の許可をいただいてからクラブ局の無線機に触ります。無線機の操作は申すまでも無くていねいに扱ってください。クラブ局の係員の指示に従い証明書に記載されたライセンスの範囲を超えてはなりません。日本の局と交信する際には、クラブの由来や地域の様子など明るい話題を選ぶとよろしいでしょう。

できたら英語による交信をお勧めします。英会話を理解する中国人に喜ばれるでしょう。日本語による会話をほとんど理解しませんので、話題を共有するという意味で英会話によるQSOがお勧めです。交信が終ったらクラブのQSLカードをいただいてデータを記入して持ち帰ります。交信局数が多いときに、クラブに迷惑をかけないという意味で帰国後に特製のカードを作って発行してもよろしいと思います。

BY4BHK、上海市虹口区青少年科学技術指導センターのクラブ局 Op.王勇さんは台長です。ICOMのHFトランシーバー、アンテナチューナーを愛用しています。

BY4BHKのQSLカード

中国に入国するにはビザが必要です。観光ツアーの場合は旅行代理店が用意してくれますが、個人旅行の場合は、渡航先の組織を通じて地方政府(例・上海市人民政府外事弁公室)が発行するビザ通知表を受け取り、駐日中国大使館/領事館にパスポート共にビザの申請書を出しますと1週間でビザが発行されます。

出張や観光ツアーでお出かけになる方は前もってビジター用のオペレーター証明書を取得しておきますと、突然HF帯のアンテナを発見して訪ねる際にも、ビジター用の証明書を提示して運用させていただける楽しみもあります。友好を第一に中国のアマチュア無線家と交流されてください。