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No.19 短期の海外ビジターハム in ニュージーランド
憧れのニュージーランドをレンタカーで回る計画を立てました。日本とニュージーランドの季節は逆になりますからせっかく行くのなら、夏のニュージーランドを体験したくて2月と設定しました。季節はまだ夏、きれいな花がきっと迎えてくれるに違いない、そんな期待を抱きながらニュージーランドを訪ねました。
1985年、ニュージーランドへはIARU*1 第3地域総会の取材で北島のオークランドを訪ねた思い出があります。やはり12月に成田を発って夏のオークランドを訪ねました。総会会場の真向かいに色とりどりのバラが咲き誇っていました。うれしいことにNZART*2 のお世話でZL0ZUYのコールサインとQSLカード100枚をいただきました。
このとき第3地域総会の取材に張り付いていましたので、観光に出かける余裕など全く無くてせいぜいダウンタウンに出かけて食事をするのが息抜きと言う状況でしたから、いつの日かもう一度ニュージーランドを訪ね、ゆっくりと見て回りたいと誓いました。
144MHz以上なら事前申請なし
今回は南島を重点にレンタカーで周遊することにしました。レンタカーで走るなら無線機をつけてモービル運用を楽しみたい、これは自然な流れです。日本とニュージーランドの間では相互運用協定が結ばれていませんが、その頃、日本人でも「4週間以内の運用ならば144MHz以上のアマチュアバンドで事前申請なしで運用できる」という規定がニュージーランド当局から発表されました。
短期の海外ビジターハムにはうれしい制度です。もちろん自国の無線局免許状・従事者免許証と英文証明などを携帯しなくてはなりません。事前に申請しなくても良いというのは大変な英断です。この規定の詳細はNZARTのWebサイト(http://www.nzart.org.nz/nzart/)でいつでもご覧になれます。コールサインはZL/JA3×××のように用います。ただし、HF~50MHz帯の免許申請は所定の手続きが必要となりますのでご注意ください。
短期ビジター用許可証ZL0ZUYをいただいた(1985年)
ほかに必要なものとしては、レンタカーを借りるために日本の運転免許証と国際免許証、それに支払能力の証明としてクレジット・カードを用意します。カードは世界で使いやすいVISAなどが1枚あると便利でしょう。入国のビザは観光や商用など、就職や報酬を目的としない90日以内の滞在ならビザは不要です。
IC-207をレンタカーに搭載!
2台の車が近距離で交信すると言う想定で送信出力は5~10W程度の無線機をレンタカーに搭載することにしました。電源のDC12Vはシガープラグからとることにしました。アンテナは短めの144/430MHzホイップアンテナをマグネット基台と組み合わせて車のルーフに装着し、同軸ケーブルは窓かドアから引き込みます。4~5日の運用ですから簡単なセッティングで十分でしょう。
無線機はICOMの144/430MHzデュオバンドFMトランシーバーIC-207(¥59,800)を持ち込みます。車載用としてコンパクトなサイズと使い勝手の良さが気に入っています。IC-207は2バンド切り替え式を採用して表示が見やすく、操作系がやさしい。さらなる小型化も実現しています。外形寸法わずか140(W)×40(H)×175.8(D)mm(突起物を除く)のコンパクトボディを実現(IC-207Dは185.4mm)、取り付け場所を選びません。
IC-207を新車のコロナのセンターコンソールにセットしました。停車時に無線機が飛び出さないように持参したスポンジを隙間に詰め込んでモービル機を固定しました。他の1台はハンディ機とマグネット基台のアンテナを使いましたので、セッティングは30分ほどで済みました。送受信を確認して出発を待つばかりとなりました。
南島のクライストチャーチを出発してテカポ湖、マウントクック、ワナカ、アロータウン、クイーンズタウン、ダニーデン、そしてクライストチャーチに戻る800キロほどの行程です。泊まる場所と夕食をご一緒するほかは、独自の行動も可という気ままな旅です。つかず離れず、それでいて友人が近くにいる安心感は心強いものがあります。
道路沿いで見つけたアマチュア局のアンテナ。
同行のMさんがRTTYで交信したことのあるZL3ZZZマクドナルドさんのお宅にお邪魔することになりました。144MHz帯FMで誘導を受けながらお宅に向かいました。大きなアンテナタワーが見えてきました。広大な農場にマクドナルドさんの住まいがありました。ここで手作りのクッキーと紅茶をいただきながらラグチューに興じ、次の行き先“テカポ湖”までのルートを教えていただきました。
ZL3ZZZから道路の説明を聞くM氏。
幹線道路に入りますと、モーターウェイ*3 の制限速度は100キロですから、2台の車はあっという間に離れてしまいます。曲がるところを間違えてまっすぐ進み、方向違いの隣町まで行ってしまい、気付いて引き返す頃には対向車線にアンテナを付けたMさんのモービルを発見して、互いのミスコースに笑い転げてしまいました。
道路が羊の群れで埋まり身動きできなくなり、しばらく通り過ぎるのを待つニュージーランドらしい体験もありましたし、赤茶けた山肌を眺めながら快適なドライブもまた楽しく、道の駅のような村に到着して現地の人に混じって食事する楽しみも格別です。途中、道路沿いにアンテナタワーを見つけて無線で連絡をとりあい2台が一緒に訪問するなど、アマチュア無線が旅の面白さを倍増させてくれます。大自然に抱かれながら2台のモービル局が走行した800キロは、南島を大いに満喫する旅となりました。
*1 IARUはInternational Amateur Radio Unionの略称。国際アマチュア無線連合。
*2 NZARTはNew Zealand Association of Radio Transmittersの略称。ニュージーランドを代表するアマチュア無線組織。
*3 モーターウェイ=郊外の幹線道路の制限速度100km、市街地で30~50km。