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No.17 個人局の台頭と中高生の運用にかげり?!
中国を代表する大都市“上海”は、東京を凌ぐ人口(1,300万人)が醸し出す活力が未曾有の好景気を支えているように見えます。名物の道路を埋め尽くす自転車の群れに混ったモーターバイクの多さに目を見張ります。市内には高速環状道路と縦断的な中央道路が建設されていて、どこへ行くのも大変快適になりました。道路のつくりと交通標識などは日本をお手本に作ったと言われていて、どこか親しみがあります。ただし、市内の高速道路は通行料が無料ですし、右側通行が日本と大きく違うところです。
フォルクスワーゲンが上海郊外の工場でサンタナを製造していて、タクシーは100%サンタナを採用、マイカーにも人気があります。大型はビュィックとBMWが定番です。日本車はネギとしいたけのセーフガード発動と報復的100%関税が掛けられている間に、新型の日本車を見ることはなくなりました。 2000年モデルのクラウンやセフィーロをみかけた位で、やはり米国とドイツにやられたような気がします。
日本企業に勤めていたという中学の教師に偶然会いましたが、現地採用の中国人を全員解雇して撤退、夢が破れたといいます。いま人気の外資企業は米国系、ついでヨーロッパ、その次が日本企業のようです。留学先は口をそろえて米国をあげ、日本は2番か3番目くらいでしょうか。そうは言っても、テレビやオーディオセットは日本製が一番人気ですし、アマチュア無線機は香港経由でIC-756PROIIが入り、性能の良さとモダンなデザインが羨望の的です。中国のもっとも有名なアマチュア無線家のBA1CY、周海嬰さん(作家・魯迅の子息)はIC-706MKIIを愛用していて、小型なのにデスクトップ機に負けない性能が気にいっていると言います。
HST世界選手権大会に初参加
上海市楊浦区ラジオスポーツ協会の副会長、高明さんはBA4GMのコールサインを持ち、青少年の養成に熱心に取 り組んでおられます。2001年11月にBD4GMからBA4GMに昇格したばかり。BDは2級、BAは1級に与えられるプリフィックスです。サフィックスがそのままでBDからBAに変わる方式は、資格別コールサインとともに理想的な制度に映ります。その高明さんは、CWの名手として知られているばかりでなく、小中学生にCWを教えるのが上手いと定評があります。
第4回HST世界選手権大会の中国選手団 左端がBA4GM、右端が韓団長
2001年6月6日~10日、ルーマニアのコンスタンカンで開かれたIARU(国際アマチュア無線連合)第1地域主催の第4回HST(High Speed Telegraphy=高速電信術)世界選手権大会に、高明さんの手腕が買われて中国代表団(韓兆方団長=中国無線電運動協会秘書長、BG1HZF)にBY4BAのメンバー3人と共に参加しました。今回はHSTの視察を兼ねて出かけたと言うことです。高速電信の世界レベルに圧倒されながら手ごたえはつかんできたそうですから、近いうちに中国選手の活躍が期待できるでしょう。
先進的な資格別コールサイン
21MHzバンドで中高生の元気な声が聞こえると、それは中国のBYステーションと言うのが定番になりました。中国のアマチュア無線はクラブ局の普及と共に発展してきました。北京のBY1PKを皮切りに、上海のBY4AA、福州のBY5RAの順で競うように全国各地に展開しました。BA4CH許さんが編纂の「CALL BOOK 2000」(B5判62頁)によればクラブ局の数は182に上ります。その後も増え続けて200は超えたのは間違いないでしょう。因みに個人局(BA、BD、BG)は、2,156が収録されています。なお、BGプリフィックスは3、4級と定義されています。
CALL BOOK 2000
3級は30MHz帯以下(14MHz帯を除く)で10W、30MHz帯以上で3Wと規定されています。ついでに書き添えますと、1級HF500W、30MHz以上50W、2級HF100W、30MHz以上25Wと規定されていて、日本の制度をモデルに欧米の良いところを取り入れたと言われています。中国のアマチュア無線制度を知るには、1995年に発行されたBA1AAとBA4RC編著「業余無線電通信」(人民郵電出版社刊)B5判、233頁を見ると良くわかります。隣の国なのに中国のアマチュア無線事情を知る機会が少なかったように思います。著者のBA1AAの童效勇さんは、BY1PKの台長、CRSAの秘書長を歴任されて現在、CRSAの副会長を務めておられ、BA4RCの陳方さんは江蘇省南京のBY4RSA台長として後進の育成に定評があります。お兄さんは元CRSA秘書長のBA1HAM陳平さんです。
業余無線電通信(人民郵電出版社刊)
話が横道にそれましたが、中国のアマチュア無線界を背負う若い世代に最近、異変が生じているようです。熱狂的なBD、BAの1級と2級局の健全な発展に疑いを挟む余地が無いものの、中高生のアマチュア無線熱にかげりが見えてきたのです。地方都市ごとに開催されるコンテストで上位1~3位に入賞すると、これまでは大変なご褒美が出ていました。大学の入学試験の総得点に20点~50点ほどが加点されたといいます。中高生が夢中になる理由が、なんとなく納得するものがありました。しかし、ここに来て学校を管轄する教育局が「加点しない」と決定したことにより、中高生のコンテストへの参加がすっかりさめてしまったというのです。
中国ではアマチュア無線の監督と育成が、国家体育委員会に属していて、地方レベルでも体育委員会、体育総会などの管轄の下に民間の組織「無線電運動協会」が結成されて、それぞれ活動を展開しています。つまり、教育部門における解釈の変更が中高生のコンテスト熱を一気に下げてしまった背景があります。コンテスト上位の入賞者にご褒美をあげる制度は、世界的に見てもユニークで面白い制度なのに止めるのは実に惜しい気がします。上位に入賞するには、無線機の操作はもちろんのこと、電波法や電波伝播、オペレートのテクニックなどにすぐれていなければ、入賞に及ばないのは明らかですし、「加点する価値は十分にあるのに」と惜しまれています。
ある意味では日本の一芸に秀でた者が優先入学できる制度と相通じるような気がして、加点制度を止めるのはいかにももったいない気がします。とは言うものの大学受験が過熱して、父兄から不公平とする意見に押されるように加点を止めた事実から、ある意味では民衆が自由に意見が言える国になった証と見られないこともありません。