東北6県、福島・宮城・岩手・青森・秋田・山形を8日間で回る計画を立てました。取材などで県庁所在地を訪問したことがあっても、名所旧跡などを知らないに等しいと気づいて、車で回ってみたいと計画を立てました。愛車のスカイライン250GTにはHF〜430MHz帯のコンパクト・トランシーバーの名機IC-706MKIIGMをセットしてありますので、各地を巡りながら28MHz帯あるいは50MHz帯のEスポ(スポラディックE層)による交信をしてみたいと期待を膨らませました。

[出発前の準備]

出発前にモービル局の無線設備を点検するのは当たり前、同軸ケーブルのコネクタのゆるみなどがトラブルになることがあります。IC-706MKIIGMにアンテナチューナーAT-180をACCケーブルや同軸ケーブルをつないでいますので、接続箇所の差込やコネクタの締め付けなどを確認しておきます。無線設備を車にしっかり固定しておくと、トラブルを起こさないものですが、振動の多い車載の環境では、出かける前の定期点検がかかせません。

アンテナは、全長1.5mのマルチバンドのホイップです。短縮コイル入りエレメントをバンドの数だけそろえてあり、7MHz〜50MHz帯を一本のアンテナで対応します。144MHz、430MHz、1200MHzは別のホイップアンテナをリアフェンダーに付けてあります。アンテナ基台が車のボディにしっかり付いているか、ネジの締まり具合を点検します。トラブルに見舞われたときに備えて、ラジオ用の工具のほか、直流12ボルト用半田ごて、ガスボンベ装着の半田ごて、ポケットマルチメーター(METEX P-10)をトランクに乗せています。

[行き先と宿を決める]

東北6県は本州の4分の一くらいを占める広い面積ですから、名所旧跡の立ち寄り先や絶景ポイントを、1日の走行距離は300キロを目安に宿を決めるため、昭文社のエリアマップ「東北全図」1:700.000、定価714円を購入しました。また地域別のドライブ・コースが参考になる、るるぶ情報版「ドライブ東北」A4変形判、113頁、JTBパブリッシング、900円と、るるぶ東北’08「みちのくめぐり旅」A4変形判、199頁、定価880円を加えて、ルート作りの参考にしました。

7泊8日の旅の宿は、かんぽ松島、グリーンピア田老、下北半島の脇野沢YH(ユースホステル)、町営国民宿舎・おおわに山荘、ウエルサンピア秋田、ひがしねベアフットYH、番外としてウエルサンピア栃木の7泊をWEBサイトと電話で予約を済ませました。料金はYHが1泊2食付、一人約5千円。かんぽ・グリーンピア・ウエルサンピア・おおわに山荘は、いずれも一人8千円前後でした。

[1日目(421キロ)松島へ]

外環自動車道の和光ICから入って東北自動車道−仙台南部道路を経由して松島北まで一気に走りぬきました。IC(インターチェンジ)を下りて直ぐ、松島・瑞巖寺を訪ね国宝の庫裡・本堂(方丈)・御成玄関・廻廊などを見学した。今晩の宿「かんぽ松島」へ。雨が激しく降り視界が利かないため、牡鹿コバルトラインのドライブをあきらめる。悪い天候の中、28MHz/50MHzバンドは何も聞こえない。夕食は新鮮な刺身がたっぷり、もずくのお吸い物が美味、鰯の山芋かけ、陶板焼き、かぼちゃの煮物、卵豆腐、茶碗蒸し、穴子の黄身煮、オレンジと煮貝、生姜の炊き込みご飯などに大満足。朝食はバイキング。

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松島・瑞巌寺の庫裡(国宝)

[2日(323キロ)遠野へ]

朝から激しく降る雨と雷鳴の中、R108を東北自動車道の古川ICへ駆け込む。北上市まで走り、民話の里「遠野」へ。NHK朝の連続ドラマ「どんど晴れ」の舞台にもなっているところ。常堅寺・カッパ淵や遠野風の丘、伝承園のおしら様、福泉寺の大観音、南部曲がり家千葉家など見所が多い。この日もHF帯のコンディションは最悪、ノイズばかりで信号は聞こえない。天候が悪いので期待の浄土が浜をあきらめる。グリーンピア田老の夕食は山海の珍味、中でもホヤの酢の物は絶品。朝定食の食材は地方色豊か、特にシジミとわかめの味噌汁が美味しい。

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遠野昔話村の入り口

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南部曲り家「千葉家」200年前の建築

[3日目(332キロ)下北半島へ]

午前8時、気温13℃、霧雨降る中、陸中海岸の真崎トンネルを抜けて左折、R455をしばらく走って岩泉町の龍泉洞へ。日本三大鍾乳洞のひとつに数えられる国の天然記念物。龍泉新洞科学館とあわせて入場料千円。この後、R340を北進、九戸ICから八戸自動車道へ入り、下北半島に突入する。R338を北へ、六ヶ所村の原子燃料PRセンターの前を通り霊場・恐山(入山券500円)を目指す。三途の川を渡り、総門、山門を経て地蔵堂にお参りする。総門の前に入浴無料の恐山温泉がある。再びR338を走り脇野沢YH(電話0175-44-2341)へ。ここは写真家のご主人から四季を通じて自然体験、サル・カモシカの観察アドバイスが受けられる。夕食のサツマイモと鯖のてんぷらが美味。気温12℃、真冬並みの寒さに閉口、これも下北半島らしさか。

[4日目(223キロ)津軽半島へ]

曇りのち晴、仏が浦を往復したのち、朝一番のむつ湾フェリーに乗りたいとペアレントに相談すると、気のいい女将が朝食を1時間も早めてくれた。仏が浦は、津軽海峡の荒波と風が作り上げた奇岩群が2キロにわたって続く。「熊出没」の看板におびえて展望台からの眺望で満足する。脇野沢にもどるとき、サルの群れが道路をふさいで餌をねだるが、警笛を鳴らして散らす。陸奥湾フェリー「かもしか」は611トン、240名、乗用車20台、バス4台を乗せて脇野沢−蟹田を1時間で結ぶ。料金は4m以上5m未満、期間限定割引運賃8,580円(運転者1名分含む)、同乗者片道1,120円。脇野沢10:50発、蟹田11:50着。船内は団体のツアー客でにぎわっていた。

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下北半島の仏が浦の奇岩

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津軽半島と下北半島を結ぶフェリー「かもしか」

蟹田に上陸してマルチバンドホイップを装着する。21.200MHz付近で3、4、6エリアの信号を聴きながらR339号線を走る。はじめに太宰治記念館の「斜陽館」(入館料500円)に立ち寄る。太宰の父が建てた豪邸を見学。次いで三内丸山遺跡(見学・無料)を駆け足で散策。急ぎ弘前城(入館料300円)を目指す。5時の閉館まであと1時間、本丸に駆け足で向かう。満開の桜が似合う弘前城は津軽を統一した津軽氏の居城。夕暮れ迫る中、大鰐温泉の「おおわに山荘」へ。夕食は、かもなべ、ふき・しいたけの油揚げ巾着、たらの粕漬け、イカとはまちの刺身など。

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太宰治記念館「斜陽館」

[5日目(257キロ)男鹿半島へ]

晴、気温30℃。旅の疲れも手伝って世界遺産の白神山地をキャンセル。R7を走行して能代市から日本海沿岸を男鹿半島へ。スカイパーク寒風山展望台は360度見渡せる絶景ポイント。入道岬の観光レストランでいくら丼と岩のりラーメンを食べる。八望台を経由して男鹿真山伝承館(入場料800円)へ。男鹿のなまはげは重要無形民族文化財。なまはげと主人の問答がおもしろい(30分)。展示館には地区別のなまはげが何十体も保存してあり壮観だ。ウエルサンピア秋田(由利本荘市)の夕食は海の幸がいっぱい、煮物、鉄板焼きなど、ちりめんじゃこ炊き込みご飯が美味しい。朝食はバイキング。

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男鹿半島の突端「入道崎」

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男鹿真山伝承館のなまはげ

[6日目(232キロ)酒田、鶴岡へ]

晴。沿岸道路R7を酒田に向かう。豪商、本間家旧本邸と本間美術館(共通券1400円)を訪ねる。幕府の巡見使の宿として1768年に建築。武家屋敷と商家がひとつの建物内に存在する珍しい様式。このあとR112で鶴岡へ。庄内藩校致道館(しょうないはんこう・ちどうかん)に立ち寄る。酒井忠徳公が藩士の士風刷新と人材育成を目的に1805年に建てられた。入場無料。致道博物館(700円)、旧西田川郡役所、多層民家、旧鶴岡警察署庁舎などが見学できる。R112を進み、湯殿山から分岐して羽黒山五重塔、出羽三山神社三神合祭殿に参拝後、再びR112に戻り、天童を経由して山形空港近くの「ひがしねベアフットYH」(電話0237-47-1057)にチェックイン。夕食は鳥のから揚げ、ごまどうふ、がんも・しいたけの煮物、ジャガイモとチーズ、吸い物など、簡素だが味わい深い。デザートはさくらんぼの産地だけに佐藤錦とナポレオンが出て感激。食後、近くの温泉へ。

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旧西田川郡役所の展示品、モールス通信機の音響器と電鍵

[7日目(342キロ)会津若松へ]

R121を一気に南下して喜多方市へ。ラーメンの名店「まこと食堂」に行ったが、祭日の翌日とあってお休み。2番人気の「源来軒」、「坂内食堂」も同じく休店。会津若松では、幕末の戊辰(ぼしん)戦争の舞台となった名城、鶴ヶ城天守閣を見学(500円)。1874年取り壊され、1965年の再建。R118を走り芦ノ牧温泉を過ぎたあたりで右折して「大内宿」へ。江戸時代の会津西街道の宿場。茅葺屋根の集落が軒を連ねて、江戸の旅人気分にさせてくれる。そば屋をはじめ地元産のお土産が人気。R112にもどり日光を経由してウエルサンピア栃木に到着。夕食は千円アップの豪華で手の込んだ料理が並んだ。

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大内宿の茅葺屋根が連なる町並み

8日目、栃木の蔵屋敷を見学して帰宅の途に着いた。164キロ。

[まとめ]

28.MHz、50MHz帯は東北−関東のパスはなく交信ができませんでした。14MHz〜21MHzは、それなりに開けていたものの、ハイバンドにこだわったために、交信ゼロの無残な結果に終わりました。433.00MHzFMモードをつけっ放しにしていましたが、信号を聞くのはまれでした。06年の北海道モービル運用の好コンディションに比べると寂しい結果に終わりました。それでもみちのくの独特の曲がり家に懐かしさを覚え、名所旧跡に感動した充実の旅になりました。今思い返しても太宰治の豪華絢爛たる実家の建造物に驚かされ、寒風山のパノラマ絶景に心を洗われました。全走行距離約2,300キロ、1日当たり288キロ、燃費は1リッターあたり12kmを記録しました。