Onlineとーきんぐ
No.86 ARRL/VEC ボランティア・エグザミナー
[VEデビュー]
9月29日、東京・豊島区の滝の川東公民館でARRL/VEC東京VEチーム(代表・KH2J/JA1TRC)によるFCCアマチュア・ライセンスの試験が行われました。ARRL/VECからVE証(試験官の証明書)を交付されて初めての試験に臨むことになりました。この日はVEデビュー、部屋に入るとすでに14名の受験者が席について、後方に顔見知りのVEが10人ばかり待機していました。試験はテクニシャン級、ゼネラル級、アマチュア・エクストラ級の三つの試験が行われました。
交付されたVE証
当日の試験会場
出題はテクニシャン級35問中26問、ゼネラル級35問中26問、エクストラ級50問中37問の正解で合格です。つまり75%の正答を要求されます。試験問題はクエスチョン・プール(テクニシャン約385問、ゼネラル約385問、エクストラ約800問)として公開されています。受験料は14ドルか1,700円のどちらかを添えて申請します。パスポートなどで本人確認があります。テクニシャンから始めて、ゼネラル、エクストラに進んでも受験料は14ドルでOK。不合格でも14ドルを払って再試験も可能。実際に3名の方が各級を受けて、1名がみごとエクストラ級に合格、雪辱を晴らしました。
VE(ボランティア・エグザミナー)は、「自由意志に基づいて自発的に無報酬で試験に携わる試験官」ということになります。当日参集した11名が受付、採点、CSCE(資格証明)の発行にあたりました。午後1時30分に始まった試験はアマチュア・エクストラ級7名、ゼネラル級3名、テクニシャン級3名の合格があって、午後4時ごろに散会しました。
米国のアマチュア・ライセンスついては、OnlineとーきんぐNo.65「FCCアマチュア・ライセンスに挑戦」、No.67「目指せバニティ・コール! FCCアマチュア・エクストラ級」に詳しく書いてあります。ただし、2007年2月23日以降、モールスの試験がなくなりましたので、ご注意ください。受験の詳細は国内5チーム、それぞれのホームページをご覧ください。
[ARRL/VEC とW5YI/VEC]
全米的なARRL VEC、W5YI VEC、地方のSunnyvale VECなど計8つVECがあります。日本ではARRL/VEC東京VEチーム、ARRL/VEC名古屋VEチーム、ARRL/VEC岡山VEチーム、W5YI-群馬チーム、W5YI-九州チームなどが定期的に試験を行っていますので、それぞれのホームページの告知をご覧ください。不定期に開催するチームについてはARRL Exam Session Searchで調べることができます。
[VEになるには]
VEはゼネラル級またはエクストラ級の資格が必要です。ただし、ゼネラル級VEはテクニシャン級の試験のみで、ゼネラル級とエクストラ級の試験に関われない限定的な資格になります。オールマイティなエクストラ級がお勧めです。VEになるには、Become an ARRL VE のARRL Volunteer Examiners Manual ARRL VEC VOLUNTEER EXAMINER APPLICATION FORM(p.5〜8)の46問に回答してARRL/VECに郵送あるいはFAXで提出すると2週間ほどで、A4判サイズの資格証と横64ミリ×縦90ミリのVE証が送られてきます。
ARRL Volunteer Examiners Manual
ARRL VEC VOLUNTEER EXAMINER APPLICATION FORM
VE申請書の46問に答えるにはVEマニュアルを読まなくてはなりません。クエスチョンの答えがこの辺りと見当をつけて、分厚いマニュアルの中から答を探すのは根気が要りますが、VEの行動規範など重要な記述がありますのでおろそかにできません。時間をかけて徐々に完成度を高めて行きました。この申請書をFAXで送っても良かったのですが、デイトンハムベンション2007の直前でしたので、ARRL EXPOにARRL/VECのブースを訪ねてVECマネージャーのマリアさん(AB1FM)に直接、手渡しました。
ARRL/VECブースの様子
[VEになったら]
ARRL/VEC東京VEの代表者にメールを送り、次回の試験に参加したいと申し出ました。VE証を取得していること、コールサインとライセンスの種類、VEの有効期限を記載しました。参加を承認されると、晴れて試験場にVEとして入場できます。VE新米に何ができるかわかりませんが、その日を待つことにしました。
試験日まで少し間がありましたので、The SignManでARRLの役職者用のバッヂを作ることにしました。VEは茶系のTANという指定色で名前とコールサイン、VOLUNTEER EXAMINER、JAPAN、ARRLのシンボルが印刷された名札で、横85ミリ×縦7ミリ。価格は9ドル、送料(航空便)12.20ドルの計21.2ドルかかりました。このバッヂの注文はARRL/VECのVEであるのはもちろん、ARRLの会員であることが求められます。バッヂを発注した後に、TheSignManのNV5A RickからARRLのメンバーIDを知らせるようにメールが入りました。というのも日本のコールサインと、NV1Jが同一人と分からなかったためで、IDを知らせて一件落着となりました。
完成したバッヂ
[新米VE雑感]
試験の受付が進む中、本人確認のためにパスポートの提示を求められて「持ってきていない」「運転免許証はありますか」「持っていない」「本人確認ができないので、申し訳ないが受けつけられません」というやり取りがありました。ARRL/VEC東京VEチームは、受験の申込みをするとIMPORT INFORMATIONが送られてきて、それにはA Photo ID(パスポート、運転免許証など)を持参するように求めています。これを見落としたのでしょうか。また、簡易な電卓はVEのチェックを受けて使用可能ですが、VEがチェックできない多機能電卓は使用不可と判定されました。ほかに試験が始まってトイレに立つと、その時点で試験が終了になるという注意もありました。
試験が始まってすぐに採点に加わるよう先輩VEから指示があり、不安な気持ちを抑えながら採点席につきました。ほどなく答案用紙が回ってきたので隣のVEの採点を真似て採点用の定規を取り出し、点検を済ませてVE欄にイニシャルを書き、3人目のVEへ手渡しました。答案が次々に回ってくると、採点の定規が変わるので、間違いのないように取り出して答案用紙に載せます。点数を記入して、合格・不合格の□にチェックマークを入れます。この後、2人のVEが採点をチェックするので、ミスが生じない仕組みになっています。
しばらくすると、A5判サイズのCSCE(試験の無事完了の証明書)が回ってきました。Passed written element と資格に囲いがあり、合格を証明してくれるもので、チーム代表が必要事項を記入して、受験者が自署した後、3人のVEがコールサインと名前をサインします。11人のVEが交互にCSCEに署名しました。
[あとがき]
14名の受験者に11名のVEは多いような印象でしたが、始まってみると採点とCSCEの署名に大忙しでしたから、もしVEの人数が半減すると採点に時間がかかるかもしれません。エクストラ級の合格者には「次回はVEになって戻ってきてください」と、先輩VEが声をかけていました。エクストラ級は日本の第1級アマチュア無線技士とイコールですから、挑戦する価値は高いと思われます。ARRL/VECはアマチュア自らの手でアマチュアを増やす心意気が伝わってきます。テクニシャン・ゼネラル・エクストラの3クラスを、すべてVECにゆだねるFCCとの信頼関係に感心しましたし、コストを抑えた運営にも注目しました。VEはみな誠実で全員の合格を期待するやさしさにあふれていました。