Onlineとーきんぐ
No.89 ジャンクの見きわめと再生の楽しみ
最近は中古品の売買のお店で「ジャンク品」の表示を見かけるようになりました。アマチュアにとっておなじみの用語が、一般社会でも使われるようになったのには軽い驚きがあります。手元の「カタカナ語辞典」で調べるとジャンク【Junk】(1)廃品、がらくた (2)ヘロインなど麻薬 (3)中国独特の運送用平底帆船 とありました。アマチュアはもっぱら "がらくた"の意味で使っているので、それ以外の意味についても再確認した次第です。
ジャンク市、フレアマーケット(ノミの市)で、珍品はそれなりの力量がなくては見つけられるものでなく、素人は"がらくた"に手を出してはいけないといわれています。その理由はジャンクを生かせなくて文字通り"がらくた"に終わるからです。それでも目利きのできるOMに便乗して宝物を手にすることはできるわけで、友達同士のコミュニケーションに気を配っていると良いことに出会います。今回はメーリングリストに流れた一通のメールからジャンクの「液晶プロジェクター」を信じられないような低価格で手に入れて再生した話を紹介したいと思います。
液晶プロジェクター SANYO LP-Z1
【始まりはメーリングリストの書き込みから】
〈第1報〉近くの中古品売買の店にSANYOの液晶プロジェクターLP-Z1が大量に陳列してありました。上物が17,000円、電源ケーブルが欠品したものが15,000円でした。特殊な形状の電源ケーブルは150円(秋月電子通商)で手に入るから欠品でもかまわないと思い、その日はやり過ごして後日、店をのぞくと7,000円の一台を発見しました。電源スイッチを入れて5分後に電源が切れるという曰くつきの代物でした。故障は内部の温度ブレーカー(回路遮断機)が効いて動作を停止していると推測、低価格に惹かれて購入を決めました。持ち帰ってケースを開けると、吸気口は埃で詰まり、空気の流れが極端に低下していました。吸気口および排気口周辺の埃を掃除機で吸い取り、レンズを清掃して点検を終え、電源スイッチを入れると何事も無かったように正常動作に戻りました。
液晶プロジェクターの内部
吸気孔は埃で詰まっている
【液晶プロジェクターLP-Z1】
〈第2報〉SANYO LP-Z1は2002年のモデルです。リモコンが付属していないが本体の操作パネルで同じことができるので不自由しません。これでホームシアターが楽しめると思うと安い買い物になりました。「チェック時、映りました。映りが少し黄色っぽいです。17,850円」「チェック時映りました。黄色転びしています、若干焦げ臭い 15,750円」が売れ残っています。欲しい方のために買いに走りますのでご連絡ください。他の不具合情報としては全体に画像が黄色いということでしたが、画質調整で青を強くしたら、そこそこ見えるようになりました。黄色というから、タバコの煙もどこかに入っているのかもしれません。de JF1×××
【色めき立つ友人たち】
『このプロジェクターは名機ですよ。ハイビジョン用のD端子がでる前では一番人気の
高画質機です。一時代、名前を売った機械です。1万円以内なら私も欲しい』
『一台ほしいです。画像が黄色いというのが気になるが、試して見る価値はありそうです。手を上げますのでよろしくお願いします。手入れをする楽しみがありそうです。』
〈第3報〉7,000円になる条件としては、先に入手した誰かが手におえなくなってくれることが必要ですので、粘り強く待つことにします。入手まで3週間チラチラ見ていて、7,000円の値札を見たときは「やった!」と思いました。電話で問い合わせたところ15,750円が1台と、17,850円が2台ありましたのでただ今、確保しました。LP-Z1の取扱い説明書はPDFファイルとして見ることができます。
130W UHPランプは近くの電気店、量販店などで3万円前後です。アマゾンでも売っていますし、ヨドバシならポイントで購入することもできると思います。なお、ランプが熱いときに移動すると球切れを起こしやすいので注意が必要です。欠品のリモコンは5,250円で入手可能とわかりました。de JF1×××
【清掃と点検】
〈第4報〉3台のLZ-P1を引き取ってきました。外見上は少々の傷がありますがどれも同じくらいの痛み具合です。画面がどのような状態かというと、未調整の状況では黄色が強い感じです。先に購入したものは標準設置の設定でしたが、今回の3台は天井から吊り下げる形で設置する設定になっていました。この設定はメニューで簡単に変更できました。
中古の液晶プロジェクターが山積みに(SANYO LP-Z1)
【動作チェックと設定】
〈第5報〉1)シネマモード 2)青レベルを60くらいに引き上げる に直しておきました。ポータブルDVDプレイヤーの画面と液晶プロジェクターの画質を近づけてみました。黄色を弱くするフィルターも市販されているようです。de JF1×××
黄色が強い映像とDVDプレイヤーのディスプレイ(右)
『清掃済みのきれいなビデオプロジェクターを手に入れました。液晶プロジェクターにDVDプレイヤーをつないで動作を試みました。スクリーンは白い壁で代用しましてバッチリです。黄色がかっているように見えるものの、なれるとこのままでも問題ない感じです。80インチぐらいに設定して迫力満点!明日は「24」(米国の人気TVドラマ)を映写してみようと思います。』
『パソコンに接続のDOS/Vケーブルを買ってきてノートパソコンをつなぎました。IT講習会でビデオプロジェクターを操作していたので、直ぐに使いこなせました。15,750円はお買い得でした。家に持ち帰るとXYLは「あなたも好きね」と冷ややかですが、いずれ孫のムービーを映写してポイントを稼ぐつもりです』
〈第6報〉6畳の長辺で投射するとワイド100インチ〜120インチになり、壁一杯がスクリーンになります。オーディオは昔ゲートウェイパソコンを直輸入したときの付属品YAMAHAのアンプ付きスピーカをポータブルDVDプレイヤーにつなぎました。スクリーンは遮光ロールカーテンか、紙製の専用スクリーンを思案中です。de JF1×××
【スクリーンを入手しました】
〈第7報〉ニトリの遮光ロールスクリーン(幅176×高さ180cm)を買ってきました。表は薄いグレーですが、反射係数が高そうなので試してみると画面がギラつく感じがしたので、表の薄いグレーに映してバッチリ。色調を調整してホームシアターが完成しました。使わないときはロールカーテンを引き上げておき、使う時だけ下げます。映画を100インチスクリーンで見てみると迫力があります。de JF1×××
遮光ロールカーテンをスクリーンしました
『ニトリ新座店(埼玉県)に行ってきました。遮光ロールカーテン(3,990円)は直ぐに見つかりました。10本以上の在庫があったように思います。サイズ(176×180cm)が大きいので家内が驚いています。丸棒カーテンレールにどう取り付けるかを考えています。明日、DIY店にでかけて金具を見つけてきます。オーディオアンプはDENONアンプ+VICTORウーファーを使い、DVDプレイヤーあるいはノートパソコンにつなぎます。』
『遮光ロールスクリーンを壁にセットして6畳間でスクリーンから3m離して液晶プロジェクターをおくとおよそ100インチになります。DVDプレイヤーを接続して映画「フラガール」を試写しました。映画を見ながら手探りで調整してみましたが、納得できるカラーバランスが得られません。無手勝流ですから変なところに迷い込んだ感じです。そこで《コントラスト、明るさ、色の濃さ、色合い、色温度、ホワイトバランス(赤・緑・青)、画質、ガンマ補正、白黒伸張、肌色補正》をすべてリセットして初期値に、すると黄色が強かったのがウソみたいになくなりました。その後、肌色補正だけをONにしました。』
〈第7報〉秋葉原でD端子=>コンポーネント(Y色差)のケーブルを購入しました。5mもので1,330円(千石電商)。このケーブルを使って気がついたのは、ピントが合わせやすくなったことです。映像のエッジが立ってにじみが少なく画面全体がすっきりした感じになります。安いケーブルを5mも引き回わすと画面に縞模様が出ましたので、ケーブルの両端にEMIコアを挿入して障害が無くなりました。
【あとがき】
目利きのできるOMのおかげで中古の液晶プロジェクターを手に入れた友人たちは、内部の清掃とイメージの調整を体験し、映写幕の代替品を見つけてくるなどアマチュアらしさを大いに発揮しました。ジャンクはリスク(損害の恐れ)を負った買い物になりますので、それなりの技術と覚悟が必要なのはもちろんです。ジャンクを首尾よく生かしたときの喜びは何物にも変えがたく古今東西、永遠に続くラジオ少年のロマンと申しておきましょう。「焦げ臭い液晶プロジェクター」に果敢に取り組んだ勇気に敬意を表しますが、もし運が悪ければ修理不能に陥る危険もありうるわけで、この点を忘れてはならないと思います。