Onlineとーきんぐ
No.90 サテライトTVIを解決したいい話
メーリングリスト(ML)にAさんから次のような書き込みがありました。
『いまBSI(放送衛星の障害)に悩まされています。気がついたのは昨夜、1298.××で送信中に「テレビが見えないよ」という妻の声に驚きました。 BSデジタル4/NTVで、調べるとほかにBS-D/NHK1、2、3チャンネルにも障害が出ています。基本波がBS放送のIF(中間周波数)に飛び込んでいるようです。ハンディーの出力を100mWに下げてもテレビが全く見えなくなります。BS放送のIFと1200MHz帯が近いので気にしていましたが、これまでBS受信機がなかったので気がついていません。皆さんはどんな対策をしていますか。私にはコネクタ周りの始末を丁寧にするくらいしか思いつきません。』
【Bさんから】
『The ARRL RFI BOOK』2nd Edition Chapter 6.6を拾い読みしますと、ディッシュ部のFコネクタおよび同軸ケーブル、ACラインからのまわりこみに問題あり、対策はコネクタの点検、良質なケーブルの使用並びにフェライト・コアを適切な部位に付ける必要があると書いてあります。この本はARRLのWEBサイトから注文して送ってもらえます。$29.95 日本の当該書籍もいろいろとあると思いますが、調べていないので不明です。』
The ARRL BOOK 2nd Edition
いろいろなフェライト・コア
【Cさんから】
『ハンディーは乾電池で動かしましたよね。BSチューナー側の電源コードにフェライト・コアを挿入してありますか? BSサイドに別個のRF増幅機が入っていないですか?BSデジタルはなにが違うのでしょうか?コモンモードというより、静電結合されているような気がします。ハンディー機+電池+内蔵ホイップで障害が起きるなら、チューナーを銀紙で包むとか、それでもダメなら、原因はアンテナと同軸ケーブルに絞られます。』
RADIO WORKSのコモンモード・チョーク(上)、自作(下)
【Aさんから】
『いろいろなアドバイスをありがとうございます。1298.××MHz(10W)でTVIが発生、いやなことに乾電池使用のハンディー(100mW)でもTVIを確認しました。BS-13ch、BS-15chでTVI発生。日本のBS放送は偶数チャンネルに割り当てが無く、BS-13ch、BS-15chは隣接しています。BS-14chは両方にまたがり重なっているようです。フェライト・コアなど未対策です。 UHF用旧式ブースタを使用中のため臨時に撤去しました。BSアンテナ(110°CS対応DXアンテナ)+TV受像機のみにてテストを行ったが症状が変わらず。
BS-13chにはNTVとフジ、15chにはNHK-D1、NHK-D2、NHK-DHIの合計5局が入っているため5局とも障害が発生しています。BS2アナログは11chでアマチュア・バンド外です。ハンディー100mWでアンテナの位置から20m離れなければ障害が無くなりません。10Wではかなり広範囲に障害が起きている可能性があります。現在、TVのアンテナ系を点検中で基本波直接混入と思われます。送信周波数をずらすと障害が無くなり、1298.××MHzはどちらにも入ります。インターネット検索にも症例の書き込みが無くて困っています。』
【再びAさんから】
『我が家のテレビ配線はBSアナログ対応です。新設のパラボラ・アンテナの点検は後回しにして、アンテナから分配器を含むUHFブースタ部分以外をコネクタタイプに交換しました。屋内配線の同軸ケーブル(5CFB)は敷設済みで交換ができません。壁面直列ユニットはBS対応で、壁内部の同軸接続部分は線を剥いてネジ止めするタイプなので芯線露出部分があります。これをコネクタ接続タイプの新型(芯線露出無し)に交換しました。この結果、1200MHzハンディー機100mWでも障害を発生しなくなりました。続いて直列ユニットからTV受像機までの同軸ケーブルの両端をロックナット付きFコネクタを付けてS5CFB、5mのケーブルを作りました。この改良で1.2GHz10W FMでもTVIが発生しなくなりました。』
【The ARRL RFI BOOK 2nd Edition】
ARRL EXPO 2007のブックストアで購入した「The ARRL RFI BOOK」定価29.95ドル、A4判のハンドブックタイプ、1章〜19章からなるRFIの分析と対策を網羅した一冊です。6章「アンテナに接続したテレビ」(Antenna-Connected Television)の項に「サテライトTVI」(Satellite TVI)を見つけました。記事を要約すると、サテライトTVIは緩んだコネクタに原因があると分析、スクリューオン・コネクターと質の悪い同軸ケーブルの使用は接触不良を起こしやすい。屋外では日照による劣化、風雨によるコネクタの緩み。100%シールドの同軸ケーブル、Fコネクタの使用が望ましく、同軸ケーブルにフェライトビーズやトロイダルコアを挿入する。ACラインフィルターを挿入する。ビデオやオーディオの出力に使うフォーンジャック(RCAジャック)は清潔に保ち、金メッキのコネクタを勧めたい、と書いてあります。
「サテライトTVI」の記事。The ARRL BOOK 2nd Editionより
ハムフェア2007で見つけたACラインフィルター
なお、RFI(Radio Frequency Interference)は「無線周波数干渉」、TVI(Television Interference)「テレビジョン妨害」とか「テレビジョン干渉」などと直訳しますが、電波を出す側の人たちの間では「無線局障害」というように限定した意味で使用しています。因みにBCI(中波放送帯干渉)、FMI(FM放送帯干渉)、AFI(可聴周波数干渉)といい、音響機器への混入障害の意味でステレオI、テープレコーダーI、アンプI、電子楽器I、DVDプレイヤーIなど、機器名を付して使われています。
【The ARRL RFI BOOKの目次】
1 ファーストステップ W1RFI KU7G(故人)
2 EMC(電磁環境適合性)の基礎 NU1N W1RFI
3 RFI(受信障害)トラブル・シューティング技術 N9RF(故人)
4 無線方向探知 K0OV KU7G(故人)
5 アンテナにつないだテレビジョン干渉 W1RFI KU7G(故人) N0IVN
7 ケーブルテレビジョン W3HJ N0IVN
8 DVD装置とVCRs(ビデオカセット・レコーダー) N9CH W1MG
9 電話RFI WA8KZH W1MG
10 ステレオと他のオーディオ機器 W6VAT W1MG
11 パート1 電力線と電気的装置 WA1ZBL K3RFI W1MG
パート2 送電線雑音共同訴訟を解決する方法
12 外部整流 さびたボルト効果 W1MG K3RFI
13 相互モダン 現代の都市問題 W1OQ
14 受信機のRFI W1OQ
15 コンピューター N6TPT
16 自動車 W8TR WW9MS
17 RFI規則と標準 N1KB(故人) W4PWF K0PS W3DTN W1RFI N1ND
18 地方のRFI委員会を組織する方法 W1RFI W1MG
19 RFIおよび無免許のRF雑音源 W1MG
【まとめ】
サテライトTVIを早期に解決した好例として紹介しました。TVIの原因と究明を一人で考え込んでいると、往々にして袋小路に迷い込んで解決に程遠くなることがあります。そのような時は一人で悩むことなく友人に相談して気分を変えることで、結果的に障害の状況を客観的に分析できて解決に至ることを教えてくれました。適切なヒントを出すきっかけになった「The ARRL RFI BOOK」は英語で書かれていますが、見慣れたアマチュア用語に戸惑いは少なく、豊富な写真と回路図等により視覚的に理解できる “RFI対策のバイブル”として、日本のアマチュアにも役に立つハンドブックを紹介しました。
『参考文献』「電波障害ハンドブック」神戸幸生著(JA2JA)電波実験社 p.16 電波障害の用語について「無線局障害ハンドブック」神戸幸生著(JA2JA)電波実験社