ドイツの6月といえば、南ドイツのフリードリヒスハーフェンで開かれるヨーロッパ最大のハムのイベント「HAM RADIO」が思い出されます。6月27日〜29日の3日間、フリードリヒスハーフェン・メッセ(見本市)で開かれます。同地はヨーロッパのほぼ中央に位置することから陸路、乗用車やキャンピングカーでやってきてキャンプ村ができるほどのにぎわいを見せます。フレアマーケット(Flea Market)は東欧諸国の高周波部品や電子機器が豊富に出回り、EU諸国のいろいろな言葉が飛び交うのが特徴です。因みに入場料は1日7.5ユーロ、3日間14ユーロ。前売り券、10代の割引があり、12歳以下は無料。詳しくはHam Radio 2008を参照ください。

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ヨーロッパ最大のハムのイベントHam Radio

Ham Radioの訪問から6年

ミュンヘン空港でレンタカーを借りてアウトバーンを走りフリードリヒスハーフェンのHAM RADIO 2002へ出かけたのが6年前の2002年、見聞するものすべてが珍しくJAIG*の壱岐さん(DF2CW)の手引きでドイツ人ハムと交流しました。取材を終えてミュンヘンに戻る途中、有名なノインシュヴァンシュタイン城に立ち寄ったのが唯一の観光で、ベルリンやフランクフルトなどドイツの主要な都市を回ることなく帰国しました。その後、ドイツ訪問の機会をうかがっていると、その機会が巡り2008年4月「ドイツ大周遊10日間」という名のツアーに参加することができ、25の世界遺産のうち8つを回ることができました。

*Japanese Radio-Amateur's In Germany。

ドイツの基礎知識

日本語表記はドイツ連邦共和国。英語表記はFederal Republic of Germany。通称はGermany。人口約8,210万人、面積約35万7千平方キロメートルで、日本の面積約37万8千平方キロメートルとほぼ同じだが、山地が多い日本と違い平地が多いらしい。首都はベルリン、自動車王国(ベンツ、BMW、VWなど)。メイン・プリフィックスはDL(DAA-DRZ, Y2A-Y9Z )。

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germany ドイツ(DL)のマップ

ウィキペディア・フリー百科事典によると、ドイツの領域は1990年のドイツ再統一によって、旧東ドイツの15県と東ベルリンがドイツ連邦共和国に編入されて16州になりました。アメリカ、日本に次いで世界第3位のGDPを誇る経済大国であり、世界の先進7ヶ国(G7)の一つ。フランスと並ぶ欧州連合 (EU) の中核国でもあります。

個人的な興味で旧東独の支配地域を調べてみました。ウィキペディアに大まかな境界を示す地図区分が載っていましたので、現在の地図と照合してみました。北はシュトラールズントから東ベルリン、ポツダム、ブランデンブルグ、マイセン、ドレスデン、ライプツィヒのあたりが旧東独のようです。面積10万8千平方キロメートル、人口1,700万人(1989)

旧東独の東ベルリン、ポツダム、マイセン、ドレスデン、バンベルクの世界遺産に興味津々です。統一から19年が経ったいまでも民家や公共の施設がそのまま残っており、世界遺産の保存に多くの労力と莫大なお金をつぎ込んでいる様子を目の当たりにして、ドイツ人の気性に触れた思いがしました。

モダンな未来都市ベルリン

「ベルリンの壁」が1991年に崩壊し、ベルリンが統一ドイツの首都になりました。未来都市を思わせるモダンなデザインの建造物が競うように林立し、東西ドイツの市民の分断と疎外感を吹き飛ばすようなエネルギーのほとばしりを感じました。ブランデンブルグ門、ベルリン大聖堂など歴史的な建造物と近未来的な空間の「ソニーセンター」、緑のショッピングモール「アルカーデン」、コンサートホール「フィルハーモニー」など斬新なデザインが渾然一体の都市は博覧会を回遊しているような錯覚に陥ります。市内のあちこちに「ベルリンの壁」が記念碑のようにその姿をとどめているのは過去を忘れない戒めと受け取りました。壁の崩壊を目前にして、東ベルリンから市民が壁を越えて射殺された悲運な人々の名前が刻まれたプレートに花が手向けられていました。

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ベルリンの崩壊した壁

ペルガモン博物館 古代都市の一部を再現した一大考古博物館。古代ローマ・ギリシャのコレクション、古代西アジア博物館に圧倒されます。古代ギリシャのペルガモン(現在はトルコ領内)から発掘された紀元前2世紀に建てられたゼウスの祭壇が復元されていて圧巻。ほかに新バビロニア王国(現在はイラク領)のイシュタール門、ネブカドネザル2世時代(紀元前603〜562年)の貴重なコレクションもあります。

ツェツィリエンホーフ宮殿 1945年、米・英・露の首脳が第2次大戦後の日本の戦後処理を話し合ったポツダム会談の会場として有名。トルーマン大統領、スターリン、チャーチルらの連合国の首脳が集り、戦後処理を協議し決定を下した当時の部屋、会議室がそのまま保存されている。英国のカントリーハウス風な建物はドイツ最後の王、ヴィルヘルム2世が1913〜1919年に掛けて王子とその家族のための住居として建てたもの。

サンスーシ宮殿 プロイセン国王フリードリヒ2世が憂いのない(サンスーシ)場所を求めて夏の離宮として建てた宮殿。ブドウ畑の6層の大階段と宮殿が景観の特徴。

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ポツダム会談が行われたツェツィリエンホーフ宮殿

マイセン

ドイツが誇る国立マイセン磁器製作所に立ち寄る。1階の見学工房と2階・3階の美術館がみどころ。日本語の案内が流れる中、形成・接合・下絵付け・上絵付けの工程を見学できる。1階入り口付近のショップでマイセン磁器のお買い物もできるが日本でも良く見かける人形や皿などに高値がついていて手が出ませんでした。

ドレスデン

チェコの国境近くに位置するドレスデンに優美なツヴィンガー宮殿、フラウエン教会などがエルベ川沿いに並んでいる光景が壮観、砂岩のブロックで積み重ねた建造物が黒く変色して金色の飾り物がおとぎの国のような雰囲気をかもしだしている。ツヴィンガー宮殿は第2次大戦の爆撃で破壊されたが、戦後再建されたという。膨大な絵画コレクションは疎開して無傷、「システィーナーのマドンナ」「レンブラントの自画像」の2大作品のほか「書物を読む少女」など著名な作品がみられる。

フラウエン教会はNHKテレビの特別番組で再建の様子が放映された。18世紀半ばに建てられたバロック様式の教会。第2次大戦の空爆で崩壊し、瓦礫のまま放置されていたが、1994年から再建をはじめて崩れた砂岩をパズルのように組み合わせて元の位置に戻すという方法で修復、2005年に再建を完了。歴史的な遺産を再興したいと言う市民の熱意が描かれており、日本の宗教関係者の協力もあったと知りました。同教会を見上げてテレビの映像と重ね合わせながら感慨にふけりました。

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瓦礫の山から再建したフラウエン教会

ドレスデン城の東側の道路に沿って建つ建物の壁面(高さ8m、長さ102m)に「君主の行列」が2万5千枚のマイセン磁器で描かれている。ほかにオペラハウス「ゼンパー・オーパー」、大聖堂(旧宮廷教会)に観光客があふれている。

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マイセン磁器で作った「君主の行進」

バンベルク 世界遺産の古都バンベルク、レグニッツ川の橋の上に建てられた旧市庁舎、丘の上のガイヤースヴェルト城、4本の尖塔がそびえる大聖堂、司教区博物館、フランケンビール醸造博物館が見学コース。レグニッツ川に船が往来する美しい街並みが有名。

ニュルンベルク ヒトラーが最初のナチス党大会を開き、戦後はニュルンベルク裁判が開かれた街として有名。聖ローレンツ教会の「受胎告知」のレリーフ、ステンドグラスは必見。フラウエン教会、おもちゃ博物館、ヴァイスゲルバー小路の木組みの家並みが美しい。

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ドイツ独特の木組みの家

レーゲンスブルク 16世紀に完成した大聖堂が美しい。高さ100m以上の2本の尖塔は19世紀に入って造られた。ローマ法王ベネディクト16世の出身教会としても知られる。ゲーテが訪れた石橋、ケプラーの法則で有名なケプラーの家が記念館として公開されている。

ミュンヘン バイエルン州の州都、人口130万人。ミュンヘン工科大学、BMWや情報通信のジーメンスなどの本社があるハイテクの街。聖ミヒャエル教会、フラウエン教会、聖ペーター教会などが有名。中でも旧市庁舎の時計仕掛けが人気を集めている。

ニンフェンベルク城 バイエルン選帝侯*や国王の離宮。美人画ギャラリー、うまや博物館、狩猟用の宮殿が一見の価値あり。城の近くに3エレメント・トライバンダーを載せたタワーを見つけ、続けて5エレメントHFバンド八木アンテナを見かけました。バスの車窓から一瞬のできごとでした。

*選帝侯(せんていこう)は、神聖ローマ帝国において、ドイツ王ないしローマ王に対する選挙権を有した諸侯のこと。選挙候または選定侯ともいう。

まとめ

世界遺産を中心に憧れのドイツを慌しく半周してきたため、見聞が重なり合って記憶に混乱を来たしているところもありますが、感じたままを紀行にまとめてみました。残念ながらミュンヘンの辺りで紙面が尽きてしまい、「ヴィースの巡礼教会とノイシュバンシュタイン城」、「ロマンチック街道と古城街道」、「ハイデルベルク城とライン川クルーズ」などを割愛しました。旧東ドイツのホテルに滞在して歴史の抗しがたい流転を感じると共に、戦争で崩壊した歴史的な遺産を次々に再建した熱情と先進的なハイテク産業を生み出したドイツの国民性に改めて畏敬の念を抱きました。

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ライン川の中洲に通行税徴収のために建てたプファルツ城(14世紀)

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旧東独の乗用車「トラバント」(ミニチュア)

参考文献:

ワールドガイド「ドイツ'08」JTBパブリッシング

るるぶ情報版「ドイツ'02〜'03」JTB