Onlineとーきんぐ
No.95 FCCライセンスARRL/VEC試験 in 台湾
6月26日、27日の両日、ARRL/VEC VE東京チーム(Liaison:KH2J)のVE(ボランティア試験官)15名が三々五々、台湾桃園国際空港に降り立ちました。これは台湾で初めてのFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス(以下FCCライセンスと略)の試験を行うもので、現地アマチュアの要請に応えてVE東京チームのVEが台北に出張しました。ARRL Exam Session Searchには、次のように告知されました。
28-Jun-2008
Sponsor: UNSPONSORED
Time: 1:00PM (No walk-ins)
Contact: KENICHI HOSHINO
VEC: ARRL/VEC
Location: MINTRON ENTERPRISES CO., LTD (CONFERENCE RM 9F)
NO. 123, WU-KUNG 1ST RD
WU-KU IND. PARK
TAIPEI 248
TAIWAN
試験は米国以外でも
7月6日、ARRL Exam Session Search http://www.arrl.org/arrlvec/examsearch.phtmlによると英国、伊国、日本、韓国で試験が行われることがわかります。FCCライセンス(テクニシャン級、ゼネラル級、エクストラ級)はARRL VEC 東京VEチームによって台湾での試験が進められました。受験者は当初40名くらいと予想していましたが、試験が近づく頃には76名に達していました。うまいことに15名のVEが台湾行きを決めていましたから大勢の受験者に対応できたのは幸いでした。
試験に先立ちVEのミーティング
大会議室で試験
6月28日土曜日、会場は台北市の郊外、工業団地の一隅にあるMintron Enterprise社の9階会議室で試験が行われました。11時半から1階ロビーでVEが3人一組の受付を4つ設けて、パスポートの写真で本人確認、英文表記の姓名とForm605記入の姓名を確認、Mailing Addressの確認FRN(FCC Registration Number)の確認、受験料US14ドルまたは台湾500元を受け取り、Form605をクリア・ファイルに入れて受験者に渡しました。
13時からリエゾン(連絡、代表)の岡さん(KH2J)から試験の問題用紙と解答用紙の記入の仕方、卓上計算機のメモリーの内容が消去されていること、トイレに立つときは手を上げてVEと一緒に行く、再試験は一回に限り認める、終了時刻は16時30分まで等々の説明があり、これを通訳の星野さんが中国語で繰り返しました。
試験の諸注意を聞く受験のみなさん
VEが解答用紙、計算用紙(白紙)をいっせいに配りました。受験者は解答用紙の左側各項目(問題用紙の通し番号、名前、FRNナンバーなど)の記入、右上に座席番号を記入するように告げました。この後、問題用紙を配布し13時30分から試験を始めました。実際には76名中、11名が欠席して65名が着席しました。BVのコールサインを持つアマチュアが半数、他はアマチュア・ライセンスを持たない一般大学生でした。BVのアマチュアは最後まで粘り、テクニシャン級6名、ゼネラル級7名が合格しました、エクストラ級の合格はゼロに終わり、期待の大学生からの合格者はなかったのが惜しまれます。16時45分ごろに試験を終了しました。
ボランティア試験官たち
台湾の試験に参加したVEは、KA8A KA1Z AC5TB W6HGY AB2MJ N1KS AE6UR W6LJ WH7P NV1J AC6XT W1XMN AB2ST AI9C KH2Jの15名(順不同)でした。VEが往復の航空運賃と宿泊代を自己負担してまで、台湾行きを志願したのでしょうか。台湾は近い隣国ですし、BV局のFCCライセンスへの挑戦に手を貸してあげようと言う気持ちから参加したものと思われます。VEはアマチュア運用歴が長く、第一級アマチュア無線技士を持ち、エクストラ級を取得して、次になすべきこととしてVEがあったといいます。
長い間アマチュア無線を楽しんだ感謝の気持ちから後に続く後輩に手を貸したいという方もおられます。結局のところ「自由意志に基づいて自発的に無報酬でFCCライセンスの試験活動を行う人」に共鳴してVEになったのは間違いのないところでしょう。試験は厳格に行われ、答案は3人のVEによって採点が行われ、採点結果を通知し、合格者には合格したエレメントを記載したCSCE(試験の無事完了の証明書)に3人のVEが署名して発行します。
CSCEを作成するVEのみなさん
日本のVEとBVの関係者で記念撮影
試験会場になったミントロン・エンタープライズのビル。屋上にBV0Jのアンテナが上がっている。
クラブ局BV0Jのシャック。ICOM IC-756(HF/50MHz)、IC-821など。
試験のあとは・・・
亜熱帯に属する台北の6月下旬は28〜32℃、湿度64%、雨期ということもあり、蒸し暑さは相当なものです。ホテルやレストランは室温が低く設定してあり、涼しくていいのですが、高温と低温を往き来するのはつらいものがあります。せっかくの台北ですから観光に出かける人も多く、故宮、総統府、中正紀念堂、龍山寺、国父紀念館など見所が多いのですが、親しいVEから台湾新幹線の体験乗車に誘われて、観光は二の次にして台北駅に出かけました。真新しい車両に乗り、いろいろ見聞を広げました。
台湾新幹線のマップ
台湾高鉄について
車輌は日本の新幹線技術(JR東海・JR西日本共同)を使っているため、台湾でも「台湾新幹線」と呼ばれることがあります。正式名称は「台湾高鉄」(Taiwan High Speed Rail)と呼ばれます。台北駅から左営駅(高雄)までの距離345kmを約1時間半で結び、最高時速300 km/hで走行します。開業は2007年1月5日。台北駅にタクシーで乗り付けてチケット売り場に向かいました。駅舎は空港の施設に似たモダンなつくり。カウンターを探して長い列の後ろに並ぶと、女性のフロア・マネージャーが近寄ってきて「あなたは何歳か?」と尋ねられ、「あなたは優待窓口に行くべし」と案内される。シルバー割引があるとに聞いていましたが、専用の窓口があるとは知りませんでした。親切な誘導に感激!
台北-左営の料金は平日(月〜木)片道1,190元 敬老優待745元、週末(金〜日)片道1,490元 敬老優待745元でした。日曜日ですから敬老優待(65歳から)の745元(約2,980円)で購入。一般の1,190元(4,760円)の0.63掛けと優遇されています。年齢確認はパスポートで行われ、旅券番号を控えられました。他に障害者、妊婦の割引があります。写真に示すような切符をもらい自動改札を通り、ホームへ急ぎました。
台湾高鉄の乗車券。敬老割引
日本はJR東海・JR西日本共同の700系を改造した700T型の車両。分岐器(ポイント)はドイツ製、列車無線はフランス製の日欧混在システム。なかでも軌道はほぼ全線でジェイアール式スラブ軌道を採用。スラブ軌道はコンクリート路盤上に軌道スラブと呼ばれるコンクリート製の板を設置し、その上にレールを敷く構造です。軌道中心間隔は4,500mm(新幹線:4,300mm、東海道新幹線のみ4,200mm)
台湾高鉄(新幹線)の車内
乗務員はCA(キャビンアテンダント)並みの容姿と魅力的な制服姿の女性でした。写真撮影を申し込むと、流暢な英語でやんわりと断られました。車両は日本の新幹線と同じデザインで違和感がなく、各所に中国語の表記を見つけて台湾を実感しましたが、乗り心地は日本の新幹線と同じか、それ以上に静粛で揺れの少ない「300キロ」の走行を体感しました。車内販売のコーヒー40元(160円)も美味しくいただきました。
まとめ
台湾で初めてのFCCライセンス試験ということもあり、多くのVEが台北に出かけましたが、合格者の数は期待を下回りました。モールス・コードの試験がなくなったとはいえ、英語による問題のハードルが高かったのでしょう。事前にQRZ.COMの模擬試験を繰り返し受けると自らのレベルを知ることができるはずなので、テクニシャン級の合格率が20%にとどまったのは、受験の知識が不足していたと考えられます。公開されている問題の中文訳があったかどうかわかりませんが、これからはそうした受験対策をしっかり準備することで合格率がさらに上がるものと思われます。ともあれ今回のFCCライセンス試験を通じて、日本と台湾のアマチュア同志の交流が深まったのは大きな成果と考えられます。
丸山大飯店の前でみかけたタクシーのナンバー「777-CQ」