ハムフェア2008は8月23日、24日の2日間、東京・江東区有明のビッグサイト西館に29,000人の入場者を記録して盛会裏に幕を閉じました。今回は33回目を数える「ハムフェア」に焦点を当て、その生い立ちに触れながらビッグサイトに足を運べなかった方々のために「ハムフェア2008」の感想をお届けします。

ハムフェアの変遷

1975年(昭和50年)4月12日、13日の2日間、「第1回全日本ハムベンション」(主催:同実行委員会)が富士山麓の朝霧高原グリーンパークで開かれました。日本初の本格的なハムの集いはメーカー各社による最新機器の展示、販売店による無線機器類の即売、フレアマーケット(のみの市)が人気を呼び、当時あこがれの的だったデイトン・ハムベンションの日本版としてアマチュア無線家を熱狂させました。続く1976年(昭和51年)9月25日、26日の2日間、「第2回全日本ハムベンション」が富士山麓の朝霧高原グリーンパークで開かれました。このときJARLは創立50周年を記念してハムベンションを後援しました。

1977年(昭和52年)「全日本ハムベンション」に替わってJARLの主催による「第1回アマチュア無線フェスティバル」が登場、9月23日、24日、25日の3日間、東京・中央区晴海の東京国際貿易センター南館で開かれ26,000人が入場しました。このとき特別記念局8J1HAMが開設されて人気を呼びました。この後、1995年(平成7年)まで東京・晴海の国際貿易センターを開催場所に続きました。

1996年(平成8年)8月23日〜25日、東京・有明のビッグサイトに会場を移しました。その後、横浜のパシフィコ横浜を会場に2度開催して、再び東京・有明のビッグサイトに戻り今日に到ります。入場者数の過去最高は1993年(平成5年)の61,000人。1983年(昭和58年)JAIAフェア(日本アマチュア無線機器工業会)が同じ会場で開催するようになりました。1987年8月21日「ハムフェア’87」(11回目)に名称を変えました。

コンベンション、フェスティバル(フェスト)、フェア

催事の名称にカタカナ語が使われていますので、その意味を探ってみました。コンベンションは【集会、大会】ですからハムベンションは「ハムの大会」あるいは「ハムの集り」、米国の有名なデイトン・ハムベンションは「デイトン・ハム大会」となります。因みにハムベンションはハム(Ham)とコンベンション(Convention)を合わせた用語ですから、DXとExpedition(旅行、遠征、探検)を合わせてDXpedition(DXぺディション)がつくられたように、ハム界で合意された用語の一つとして使われています。

「アマチュア無線フェスティバル」のフェスティバルは、【祝典、音楽祭、お祭り騒ぎ】の意味から「アマチュア無線祭り」。フェア(展示会)の意味からハムフェアは「ハム展示会」となります。ARRLのQSTにはコンベンション(CONVENTION)やハムフェスト(HAMFEST)のコーナーがあり、膨大な催事の日程が掲載されています。いずれもフレアマーケット、無線機器類の販売、VEセッション(FCC試験)、セミナーなどが盛り込まれていて、コンベンションもハムフェストも「ハム祭り」の意味で定着していると考えられます。一方、HAM RADIO(南ドイツ)はInternational Exhibition for Radio Amateurのサブタイトルから「国際展覧会」を意図していることがうかがえます。

ハムフェア2008ハイライト

秋を想わせる絶好のハムフェア日和を迎えた8月23日(土)、大勢のアマチュア無線愛好家が開場を待ちかねて入場門に長い列ができました。開会式は9時45分から、入場券を買う列と入場を待つ列が長く伸びてきました。JARL原昌三会長(JA1AN)、JAIA塩畑一男会長、IARU(世界アマチュア無線連合)第3地域の理事らによりテープカットが行われ、入場が始まりました。キャッチフレーズは「電波で遊ぼうアマチュア無線」、年少者のための「スタンプラリー」、「電気の散歩道」が行われ「工作教室」では「モールス練習機」「IC高感度ラジオ」「電波チェッカー」を親子で作る姿が見られました。

photo

ハムフェア2008の会場を待つ長い列

photo

工作教室でICラジオを作る小学4年生

イベントコーナーでは「電波で遊ぼう!」、「Saint Barthemy島DXペディション」、「富士山頂からのマイクロ波帯・準ミリ波帯電波伝搬調査」、「海外のD-STARの動向と自作で楽しむD-STAR」、「ソーラーサイクル24と宇宙天気について」、「アマチュア無線のプロモート・ARRLの方法」、「スペックの読み方大研究 アンテナ・周辺機器」、「D-PRSとこれからのD-STAR」の講演が行われ、表彰式(自作品コンテスト、絵画コンクール、オールアジアDXコンテスト、関東UHFコンテスト)などがありました。

photo

自作品コンテスト最優秀賞(JH2ECU)

photo

日本大学理学部のSRRDS(シーズ)衛星08年4月28日打ち上げ

会場は、JARL(A-01〜16)、メーカー&販売店(B -01〜14)、クラブ一般(C001〜114、JAIA(D-001〜004)、クラブ純粋(J-01〜56)の計204小間の展示がありました。総務省電波利用のブースは「電子申請に関心が高く、新規ユーザー登録に長い列ができました。

photo

JASTA 日本アマチュアSSTV協会(代表のJA2HYD)

photo

総務省・電波利用コーナー電子申請・届出システム

JAIAはアイコム、ケンウッド、コメット、第一電波工業の4社が出展しました。

アイコムは、IF DSPを搭載したHF+50MHz機IC-7200を展示するほか、フラッグシップ(最上級機)のIC-7800やIC-7700、D-STARとGPSマイクに標準対応したハンディ機ID-92など、話題の製品を展示しました。中でも参考出品のIC-7600が高い関心を集めました。

主な特徴は

・IC-756PROIIIの後継機。性能をさらに向上。

・前面USB端子にキーボードを接続するとRTTYが運用できます。

・後面にもUSB端子があり、マイク入力・SP出力などのオー ディオ関係を接続します。パソコンから見た場合はUSB型のサウンドブラスタになるのでしょうか?発売は来春、価格はIC-756PROIIIとほぼ同じと予想されています。

photo

アイコム・ブースのD-STARコーナー

photo

D-STAR+GPSのIC-2820G

photo

アンテナを接続中のIC-7600(参考出品)

ほかにBブロックのSTANDARD、TOKYO HY-POWER、AOR、ALINCOなどのメーカー展示、日栄無線、東名電子などの販売店がにぎわいました。

まとめ

1977年から33回目、前身のハムベンションを加えて35回を数えるに到り、多くの先人によりハムフェアのスタイルを築き上げてきました。1980年11月、割安なハンディ機IC-2Nの登場に先を争って手に入れた仲間の様子を今もって忘れられません。ハムフェアの会場を行き交う人のほとんどがハンディ機を持ち熱気であふれかえった当時を懐かしく思い出されます。あれから28年、無線機の参考出品の説明に熱心に耳を傾けるマニアの表情、会場特価の即売に群がるアマチュアたち、会場のあちらこちらで繰り広げられるアイボールQSOの光景は昔から変わらずにハムフェアにありました。

参考資料:

「アマチュア無線のあゆみ」1926〜1976、(続)1926〜1986、(III)1926〜1996

JARL50年史、60年史、70年史