長い間使っていた自作のVOXタイプSSTVインターフェースがひょんなことから壊れましたので、この機会に新しいインターフェース(以下、I/Fと表記)を作ることにしました。基本回路はJF1GUQが05年4月に設計したもので、最近のノートパソコン(以下、ノートPCと表記)のサウンドカードの出力が低レベルでVOXタイプのI/Fでは送信・受信の切換えに難点があるため、より確実なPTTの制御を採用するとともに、シールドタイプのトランスとフォトリレーを使って回り込み対策を厳重にしました。

確実なPTT制御と回り込みに強いI/F

新しいI/Fは基本的に5つのコンセプト(概念)によります。

(1)強電界で回り込みにくい回路。

(2) ノートPCでも確実にPTTが働くようにRS-232CからPTTを制御する。

(3)RS-232C端子の無いノートPCには、USBからRS-232Cが取り出せる接続ケー ブルを使用。

(4) マイク切換回路を設けず、トランシーバーのDATA端子に接続する。

(5) 作りやすいシンプルな回路

ビデオカセットテープのケースにI/F基板を収めた友人の製作に影響されて、始めのころ100円ショップに出かけて2個、百円の透明なケースを購入しましたが、もう一人の友人が小型のアルミケースに収めた本格的なI/Fを作り上げるに到り、そのいずれでもない個性的なケースに収めたいと思うようになりました。ホームセンターでケースになりそうなものを探していると、電気工事に使うジョイントボックスにたどり着きました。これは写真でおわかりのようにマウスのような外観で周りに突起がありません。

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マウスのような形状のインターフェース

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インターフェースの裏面



部品点数が少ない簡単回路

回路図を実体配線で示しました。この回路はSSTV、FSK、CWに対応しているために抵抗・フォトリレー・コンデンサで構成する回路が3系統あります。SSTVだけなら1系統でよく、回路もさらに簡略化されます。トランスにJRCのSTF-9004を使用したのはインピーダンスの整合よりもアイソレーションを取ることを目的としています。ジャンクでしたから価格が安い上に、全体にシールドされていることも高周波を扱う場合には有利でした。

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インターフェースの実体図(by JF1GUQ)



フォトリレー(TLP227G) は、内部の LED が発光している時だけオンになるもので、MMSSTVの送信時にPTTがGNDに落ちてトランシーバーが送信になります。フェライトコア(フェライトビーズ)はPCのサウンドカードへつなぐ入力・出力回路、並びにDB-9コネクタDTR・TXD・RTSの配線に挿入して電波の回り込み対策としました。

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インターフェースの基板裏面(by JF1GUQ)

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ジョイントボックスに収容したインターフェース



SSTVの信号はPCのSP出力から送られて、トランシーバーのDATA端子に入ります。最近のPCはアンプ内蔵のスピーカーを使用することを前提にしていて、直接スピーカーを駆動しないため数kΩのハイ・インピーダンスであり、トランシーバーのDATA端子もハイ・インピーダンスですから整合しています。STF-9004(600Ω:1.2kΩ)が手に入らない時は、同じような特性を持つサンスイの小型トランスST-72(600Ω:1kΩ)、ST-73A(1kΩ:1kΩ)、ST-78(10kΩ:10kΩ)が使えます。インピーダンスが多少違ってもインピーダンスのミスマッチは問題になりません。サンスイの小型トランスの定格については、次のWEBサイトを参考にしてください。http://www.jarl.or.jp/Japanese/7_Technical/lib1/sansui.htm

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完成したインターフェースとUSB-シリアル変換ケーブル(中央)


パーツリスト

パーツの名称型 名個 数価格(円)
トランス(JRC)STF-9004@300円×2600
フォトリレー TLP227G@70円×3210
フェライトコア(ビーズ)-一袋200
DB9コネクタとカバーDB91100
コンデンサ0.1μF 330
抵 抗2.4kΩ320
蛇の目基板40×70mm1100
多芯ケーブル 4芯・3芯シールド2330
ピンコネクタ Din13 1500
USB-シリアル変換ケーブル*エレコムUSB-RS23211,400
ミニジャック付シールドケーブルジャンク 2-
ケース(松下電工)ジョイントボックス 1560
合 計4,050
*USB-シリアル変換器(秋月電子通商)CD(ドライバソフト)付属

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インターフェースの全パーツ



トランシーバーとPCの接続

IC-706MKIIGMとI/Fの接続はDIN 13pinでリアパネルのACCソケットに接続しました。取扱説明書のp.69「ACCソケットについて」を参考に、〔11〕MOD (変調回路の入力端子)  → PCサウンドカードSP OUTへ。〔12〕AF(AFツマミに関係しない受信検波の出力端子) → PCのサウンドカードMICまたはLINE INへ。〔3〕HSEND(本機と外部機器を連動して送信状態にする入出力端子) → I/FのPTTに、〔2〕GND(アース端子)→ I/FのGNDへ接続。

トランシーバーのマイクコネクター、ACCソケットのどちらにつなぐかは、好みによりますが、ここではマイクとI/Fの切換えの必要のないACCソケットに接続する方を選びました。なお、IC-706MKIIGMの場合、SSTVの送信時にマイクから音を拾うことはありません。

DELLノートPCとI/Fの接続

ノートPCのサウンドカードMICとSPの端子にI/Fのミニジャックをつなぎ、送信・受信の切換えはI/FのRS-232Cで制御します。最近のノートPCにシリアルポート(COMポート)がないのでUSBからRS-232Cが取り出す「USB-シリアル変換器」(秋月電子通商)を使いました。開封するとエレコムのUSB-RS232Cケーブルとドライバー(CD)が入っていました。市販の「USB to シリアル変換器」(3千円前後)の利用もお勧めです。

COMポートを合わせる

PCとMMSSTV(SSTVのフリーウェア)http://www33.ocn.ne.jp/~je3hht/mmsstv/のCOMポートを合わせます。MMSSTVを起動してツールバーの〔オプション〕をクリックして〔MMSSTV設定画面〕を開き、〔送信〕をクリック、PTTのPort「COM2」にしてOKする。次にPCのUSBポートにUSB to シリアル変換器を挿入した状態で〔スタート〕 → 〔コントローパネル〕 → 〔デバイスマネージャー〕 → 〔ポート(COMとLPT)〕を右クリックでプロパティを開き、「ポートの設定」 → 詳細設定をクリック、COMポート番号を〔2〕に変更してOKする。なお、COMポート番号はPCの空きを考慮して決めます。

FSK、CWの接続先

IC-706MKIIGMの場合DIN13ピン、ACCのFSKK=11、PTT=3、GND=2となり、IC-756の場合ACCのFSK端子はDIN8ピン ACCのFSK=1、PTT=3、GND=2となります。 実体配線図のFSK、PTTの配線はどちらをGNDにしても良いので片方をFSK(1番ピン)、もう一方をGND(2番ピン)に接続してください。 PTTも同様にどちらかをPTT(3番ピン)に、もう一方はGND(2番ピン)と共通にハンダづけします。 詳しくはトランシーバーの取扱説明書を参照ください。CWは背面のCWジャックにI/FのCW端子を接続して、表パネルのELEC-KEY端子にパドルをつけます。こうするとトランシーバーの設定コマンドを変えるだけで、パドル操作によるエレキ-とPCプログラムによる自動送出が切換えられると思います。

あとがき

ここにご紹介したI/Fは8人の仲間が製作を競ったもので、各人のPCが異なっても製作したI/Fはうまく動作していることを報告しておきます。それぞれケースや入出力のコネクタ、ジャック、ボリュームなどを加えて使いやすくアレンジされており、シンプルな回路だけにいろいろと応用が利くことを証明しました。部品代は約4千円になりましたが、手持ちの部品を利用するとほとんど費用がかからないかもしれません。新しいI/FとDELLノートPCの相性はよく送信・受信ともに快調に動作していますので、さらなるテストを兼ねて移動運用に出かけたいと思っています。

参考:「新しいインターフェース」JF1GUQ、www.qtc-japan.net