DVとはデジタルボイスの略でJARLが推進するD-STARの運用モードの一つ。このDVモードによる交信に挑戦するため08年末、ID-92(62,790円)の増設に伴う変更申請を「電子申請・届出システムLite」により済ませました。これでいつでもオンエアできるようになりましたが、しばらくは交信を控えていました。というのもオンラインでJARLに登録してIPアドレスの貸与を受けるなどの手続きが残っていましたし、1965年開局の柔軟性を失いつつある脳が「ムリ!」と悲鳴を上げるために態勢を整える時間が必要でした。たいていの無線機を使いこなしてきた自信はどこへ行ったのやら。携帯電話は必要な時だけ電源ONにして通話を終えるとOFFにする、高齢者特有の「持ち歩く公衆電話ボックス」的使い方をしてきたツケが回ってきました。

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ID-92にGPSスピーカーマイクロホンHM-175GPSを接続

リベンジ!

08年5月、デイトンハムベンションの会場にてNV1JコールでIC-92ADによるDVモードを運用し、日本との交信を試みたものの、操作に不慣れなことに加えて、バッテリー上がりを起こし、予備バッテリーの用意がなくて交信を断念した経緯があります。こんどはデイトンから日本との交信に成功させたいと思っていますが、行ってみないことにはレピーターの周波数等がどうなっているのかわからない部分もありますので確約できません。

会場に特設されたW5DITレピーターの周波数は440.60MHz +5MHzシフトでしたから日本仕様の無線機はオフバンドで対応できない上に、米国のコールサインを持っていなければ運用できない事情があります。日本は430〜440MHzで、440.60MHz +5MHzはオフバンドになるため、相互運用協定による運用ができないわけがここにあります。因みに米国の70cmバンドは420MHz〜450MHz、2mバンドは144MHz〜148MHzの広いバンド幅があります。レピーターの周波数にもよりますが、日本のコールサインで運用する場合は周波数が限定されますので注意が必要です。

免許申請の実際

D-STARトランシーバー(付属装置を使用しない)の発射可能な電波型式はF1D,F3E,F7Wになりますが、ID-92は工事設計書に技術基準適合証明番号を記入することで,「発射可能な電波の型式,周波数の範囲」より下の欄の記入が省略できます。今回は移動する局の無線設備を増設する形で「電子届出システムLite」で変更申請を行いました。

JARL登録とプライベートIPアドレスの貸与

ID-92による増設に伴う変更申請を済ませた上で、 [D-STAR管理サーバー登録サイト] の[D-STAR利用申込み]画面でコールサイン、名前、住所、電話番号を記入、JARL会員・非会員を選択、パスワードを設定してJARL登録とプライベートIPアドレスの貸与受付などの手続きを行いました。次いで「ログイン」画面でコールサインとパスワードを入力して、メニュー画面に進み、管理サーバーへのコールサイン登録のほかに、使用する機器情報の登録を行いました。ここでは、登録情報の変更、機器情報の登録変更、機器情報登録の方法はこちら、登録局の機器情報の参照などがありますが、機器情報の登録をしなければD-STARによる交信をすることができませんので要注意です。

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D-STAR管理サーバー登録サイト(ログイン画面)

初交信に熱くなる!

自宅から直線で約5キロの地点にあるJP1YIW (西東京市・スカイタワー)の受信を始めました。丸1日、交信のやり取りを聞いて運用方法や交信のタイミングを知った上で、某日、JI3IBK(京都・嵐山)が聞こえたので[CALL]ボタンを長押し、コールすると室内から楽にアクセスできました。すぐに応答があり、デジタル音声がスピーカーから流れてきました。D-STAR初めての運用に興奮しながらおしゃべりに興じ、お互いの無線機の紹介や桜の開花状況などを話しているとハンディ機は徐々に熱くなってきました。ハイパワーで連続送信すると無線機本体を保護するために放熱し、温度が上昇していることがわかります。送信出力を下げるなどの操作をするべきでしょうが、初めての交信にハンディ機の操作に余裕がなく、早めにファイナルを送り交信を終えました。

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ID-92でJP1YIW 439.310MHzを受信。(所沢航空記念公園にて)

午後8時ごろテレビを観ていると、手元のID-92から西東京レピーターを経由してJO3PCG/1のCQが聞こえたのでコールしました。すぐに応答があり、東京・千代田区のホテルの部屋からSAGANTの144/430MHzのアンテナにID-92をつないで運用されているとのこと。千代田区と所沢の距離は約30キロ、レピーター経由のイージーな交信が続きました。兵庫県たつの市から東京に出張しているといい、横浜開港150周年記念局の8N1Yと交信した話や、秋葉原の電気街に行ってみたいので、お勧めの店はどこかなどのお尋ねがありました。

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JP1YIWレピーターを設置した「スカイタワー西東京」

用語に戸惑う

取扱説明書とID-92を見比べ徐々に操作に慣れて行きました。ただ初めて出会う用語に戸惑い、DV(デジタル音声)モードってなに? MY CALL SIGNを指定する? Bバンドにする? R1 R2、異なるゾーン? ゲートウェイレピーター? などの独特の用語を少しずつ理解して先に進むため、運用に至る道のりが順調だったわけではありません。これも初心者が乗り越える壁の一つと考えてあせらずにD-STARに取り組んでみました。

ベテランに手続きや操作、運用法などの手ほどきを受けると理解が早まるに違いありません。友人たちと一緒にD-STARを始めると無線機の設定や操作がすぐに覚えられる効果がありそうです。いずれにしても一人で始める場合は、めんどうでもID-92の取扱説明書を読み操作を覚えるのが正しい方法ですが、同時にIcom Webサイトの「D-STARサイト」を見て、いろいろなハウツーを得られましたことを報告しておきます。

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D-STARのことなら何でも分かる「D-STARとは?」(Icom Web サイト [ D-STAR サイト ]

交信後の印象

西東京レピーターJP1YIWをワッチしていると、新潟、札幌などの局が「誰か聴いていませんか?」などとCQを出します。レピーターの使用頻度が少ないためでしょうか、ラグチューも問題ないように見受けられました。利用者はレピーターを使わせてもらった気遣いから「西東京各局お借りしました」というアナウンスを入れていました。

デジタルボイスは透明感のあるすっきりした音ですが、時折、声が裏返りモガモガあるいはピポプポ音が入り交信が不能になることもあります。通信が輻輳したときに「けろった」と言っていました。さらに頻繁に使われる「山かけ」については、「アップリンクとダウンリンクのレピーターが同じ場合」に使うようですが、レピーターのコールサインに加えてレピーターの名称や山かけなどを送信する習慣があるようです。交信マナーは総じて上々で、送信のたびにコールサインを言うのも気持ちよく感じました。

GPSスピーカーマイクロホンによる位置情報

オプションのGPSスピーカーマイクロホンHM-175GPS(20,790円)をID-92の[DATA/SP/MIC]ジャックに接続しました。HM-175GPSはマイクとスピーカーのほかにGPSレシーバーを組み込んであり、自局の位置を表示(FM/AM/DVモード)するほか、自局の位置情報などを相手局に送信(DVモード)できます。ID-92の取り扱い説明書のp.65〜76を読み、ボタン操作を終えてベランダに出てGPSマイクのトップにある[GPS]ボタンを押すと1分ほどでボタンが点滅し、ID-92のディスプレイに写真で示すようなデータが表示されました。

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ID-92の自局のGPS位置情報画面

まとめ

携帯電話を使いこなせない世代には、D-STAR無線機の操作に戸惑いがあります。とは言いましても先進技術について行けなければ「生きた化石」になりかねない一面もありますので、そうした意味でID-92の操作に頑張ってみました。D-STARはハンディ機で全国と交信できるすぐれたシステムですから、趣味にとどまらず災害時の通信にも役立つと想定されますので、いざというときに備えてスムーズな交信に慣れておきたいと思います。D-STARレピーターの開設状況や入門に必要な情報は「D-STAR入門」をご覧ください。

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