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No.105 「7MHz拡大バンドをバドダイポールで運用」
1960年7月開局、7MHz帯(7,000kHz-7,100kHz)のAMモードでアマチュア無線に入門して49年が経過しました。途中、運用モードはAMからSSBに変わり、7MHz帯のモービル運用も体験しました。その間、一貫して変わらないのは7,000kHz-7,100kHzのバンド幅でした。CW、RTTY、SSTV、SSBの各モードが100kHzの間に調和を保ちながら共存してきましたが、このほど長年の粘り強い運動が実り7,100kHz-7,200kHzが拡大して2倍のバンド幅になったのはめでたいというほかはありません。
バンド拡大の喜びにあわせて
7MHz帯の半波長ダイポールを張ることのできる敷地がある場合は別として、そうでない場合はエレメントを折り曲げるベントタイプ、あるいはコイル(ローディング・コイル)を挿入してエレンメントを縮めて敷地に合わせた長さにして使います。特にモービルアンテナは使用範囲が狭いので、CWなら7,000-7,030kHzをカバーすればいい、SSBなら7,050kHz+-30kHzで十分という限定的な使い方があります。
7,100kHzを超えて送信できるアンテナ
例えば7,050kHz付近を常用周波数として使ってきたモービルアンテナは、7,100kHzを超えるとSWRが高くなり再調整しなくてはなりません。手始めに移動運用に使っているW3FFのバドダイポール(Buddipole)をIC-706MKIIGMにつないで7,100kHz超えの電波の発射を試みました。このアンテナはアメリカ育ちの移動運用のベストセラーですから、米国のバンド(7,000kHz〜7,300kHz)をカバーするはずですから、コイルのタップを変えて7,100kHz-7,200kHzに使える確信はありました。
バドダイポール 水平ダイポール
バドダイポールはその名前のごとく、ダイポールアンテナで両端のエレメントにコイルを挿入して7MHz〜28MHzの各アマチュアバンドに対応するポータブルタイプのアンテナです。コイルを外してホイップの長さを調整すると50MHz帯、144MHz帯のダイポールとしても使えます。コイルのタップを変えてSWRがどのように変化するか、実用帯域幅がどれくらいとれるか、測定する楽しみがわいてきました。ところが、アンテナの調整を前にしてHFトランシーバーが7,100kHz以上で送信ができるか心配になりました。
7MHz〜28MHzに対応したローディングコイル
トランシーバーの7MHz帯周波数拡張情報
さっそく7,100kHz超えの送信テストをIC-706MKIIGMからやってみました。まったく問題なく送信ができます。「知らなかった!」で済みましたが、後に送信できない機種もあることもわかりました。念のために他のHF帯トランシーバー(TS-950S、FT-1000MP)をテストするといずれも7,100kHz以上でも送信できてほっとしましたが、一部の古い機種に送信できないものがあるようです。
ICOMのWEBサイトのHFサポートセンター(iUSE)の周波数拡張情報(2009/03/17)に改造が必要な機種としてIC-706、IC-721、IC-723、IC-726、IC-729、IC-732、IC-736、IC-760PRO、IC-775DX2、IC-780が挙っており、これ以外の機種は改造不要。有償改造は¥7,350(送料別)、また、改造資料をダウンロードしてユーザーが自ら改造する方法が載っていました。KENWOODとYAESUのWebサイトにも、それぞれ無償改造、有償改造の情報がありました。
バドダイポールの手入れ
半年ぶりに収納袋からパーツを取り出すと、アルミ部分に白い粉をふいたような腐食が見られました。-アルミに他の金属が接触している時、そこに水分が付着すると、アルミと他の金属で電池が形成されて、プラスとマイナスをショートした状態になり、アルミはイオン化しやすいので溶け出して腐食する- 戸外で一晩雨ざらしにして、水気を切らないまま収納したのが腐食の原因と反省。各パーツを風通しの良いところに広げて日光浴をさせ、乾いたところでやわらかな金属ブラシでさびを落としてメンテナンスを完了しました。
7MHz帯のSWRと帯域
バドダイポールを組み上げて、MFJ-259B(1.8〜170MHz) SWRアナライザーを使い、7,150kHzのSWRと実用バンド幅を測定します。コイルのタップを使わずに7,010kHz辺りでSWR1.1、100kHzほど上にずらすには、BLACKサイドの短縮コイルを1〜2ターン減らして測定してみると7,150kHzでSWR1.1でした。
MFJ HF/VHF SWRアナライザーで測定中
オリジナルは下の表の一行目であり、2行目が今回の測定値を示します。7,090kHz-7.150kHzは1.5以内に収まり60kHz幅。SWR2.0以内で7,80kHz-7,160kHz、80kHz幅です。給電点のインピーダンスは50Ω、実際の運用ではアンテナチューナーAT-180を使います。
BASIC DIPOLE TUNING
エレメント | RED SIDE 赤いリード側 | BLACK SIDE 黒いリード側 | ||||
BAND | COILS | ホイップ | タップ | COILS | ホイップ | タップ |
7,025kHz | YES | 5.6−6 | NO | YES | 5−5.5 | NO |
7,150kHz | YES | 5.6−6 | NO | YES | 5−5.5 | 2ターン減 |
8J1Pと交信
モービルシャックのIC-706MKIIGMにバドダイポールをつなぐと信号が賑やかに聞こえてきました。7,119 kHzで8J1PのCQを見つけてコール、RS59/59で交信できました。QRP(小電力)の記念局だそうです。東京・品川区から運用していると話してくれました。地上高3mの短縮型のダイポールでも実用になりますが、遠距離交信を狙うには、給電点を高くする工夫の一つとしてアンテンのGPL-45伸縮ポール(4.5m)を用意してあります。また、バーチカル(垂直)タイプに変えると遠距離交信に有利になります。今回はV型のままJA4○○のCQを見つけてコールすると「QRZ JA1・・・」が精いっぱいで、やはりという感じで交信を断念しました。
バドダイポール V型ダイポール
あとがき
バドダイポールの調整の後、HF帯モービルホイップのSAGANT CM-144WとDIAMONDベースローディングタイプのモービルアンテナを7,120kHz付近に調整して拡大バンドに備えました。モービル運用はハイバンドで海外交信が好きでよく運用していますが、サンスポットナンバーの上昇が期待できないいまは、7MHzの拡大バンドで国内の遠距離交信を楽しむのも悪くないと考えています。HF帯トランシーバーが7.100kHz超で送信できるかどうかを確かめて、もし送信ができない場合は早めの対策をお勧めしておきます。なお、BUDDIPOLEのデラックスパッケージは399ドル、ホームページはhttp://www.buddipole.com/です。
デラックスパッケージ