1キロワット局の開設

10月23日午前11時40分、山梨県南都留郡山中湖村の山荘において、関東総合通信局・無線通信部陸上第三課のI 総務事務官とK総務技官による変更検査を受け、無線設備共用で6局が同時に1キロワットの無線局免許状をいただきました。JH1VVW、JA1FUY、JA1IFB、JA1KJW、JA1XVY、JF1GUQの6人です。それぞれ米国のコールサインNI2J、NV1J、KA1Z、AK0J、NI1J、KF7ECC(General)を持ち、しかも、このうち5名がARRL/VEC VE(ボランティア試験官)の資格を有します。ただし、開局申請は6人全員が第1級アマチュア無線技士の資格で行いました。

変更検査は12時30分ごろに終了、「無線局検査結果通知書」(合格)と無線局免許状を手にしてビールと麦茶でキロワット局の落成を祝いました。なお、免許されたバンドは、1910kHz(3MA)、3537.5kHz(3HA)、3798kHz(3HD)、7100kHz(3HA)、10125kHz(2HC)、14.175kHz(2HA)、18118kHz(3HA)、21225kHz(3HA)、24940kHz(3HA)、28.85MHz(3VA)の空中線電力1kW、52MHz(3VA)100Wとなっています。カッコ内は電波型式です。

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免許状を交付されて記念写真 左からJA1XVY JA1IFB JA1KJW JA1FUY 後列JH1VVW JF1GUQ

都会の住宅密集地での1kWの開設は、電波防護指針をクリアするのが難しい状況にあること、さらには電波障害を抑え込むのが大変ですから、自宅での開設は200Wを上限の電力とあきらめていました。毎年のように知人の山荘に出かけてフィールドデー・コンテストに参加している時に、「山荘に1kW局を開設しよう」という提案がありました。開局申請に際して、(1)無線局免許情報検索で≪1kW≫の表記を得たい (2)JARL会員局名録に≪◎=200Wを超える局≫の表記を得たい (3)素直に1kWの電力を楽しみたい (4)無線設備共用で免許申請・・・が1キロワット開設の共通の原動力となりました。

(1)と(2)は米国のVANITYコールサインにも似た虚栄心を満足させるものです。(3)はいつか実現したい夢のキロワットですし、(4)はローコストという観点から参加者を喜ばせました。別荘のオーナーのご好意によりさっそくシャック作りに向けて無線設備の整備に取り掛かりました。中でもWARCバンドを含む1.9MHz〜50MHz各バンドのアンテナの建設は時間を掛けて取り組みました。難関は各バンドのアンテナ・エレメントの展開や1.9MHzダイポールのワイヤーを引き回すための空間確保にありました。というのも山荘周囲の伸び放題の樹木を整理するためにチェンソーを持ち出してかなりの力仕事になったからです。

無線設備の共用

山中湖村の山荘に100ワットの固定局を開局して、この設備を1キロワットに変更する方法によりました。これですと申請料がかなり安く上がりましたし、設備も大げさにならなくて済みました。6免許人が設備共用で同時に受験する場合、検査手数料は国が直接行うため1,941円 、内訳は基本7800/6=1,300円、変更装置1台3,850/6=641円となり、その合計が1,941円でした。

10月中旬、免許人6人により山荘周辺の樹木の枝を払うなど環境を整え、1.9MHz帯フルサイズ・ダイポール、WARCバンド(10/18/24MHz)のV型ダイポールなどを上げてSWRの測定と調整に続いて、電波障害の調査と対策を行いました。これら作業の後遺症として高所作業で手が震える、筋肉痛のため靴下が履けなくなる、肩まで手が上がらなくなるなど、日ごろの運動不足が露わになりました。因みに14MHz/21MHz/28MHz帯は既設のHB9CVタイプのアンテナを流用するとともにバランを1kW用に、また同軸ケーブルを8DFWに取り換え工事を行いました。

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3.5MHz/7MHz帯ダイポールを張るために枝を剪定している

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給電部の取り付け工事

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ダイポールの両端に「高圧注意」の標識

IC-7600とIC-4KL

関東総合通信局から『総合通信局内の資料ではIC-4KLは500Wリニアアンプとなっている。輸出仕様では1kWとだが、その場合24MHz〜28MHzでは使えないので改造したか?』という問い合わせがありました。

これに対して『JA3RLがIC-756pro+IC-4KLで1kWの免許が降りているので問題ないはず。アイコムに修理を依頼するときに1kWの免許申請に使うと伝えてあり、28MHz帯で少し力不足になるという説明を受けています。実際、28MHz帯ではBird43電力計で800Wを計測しています(免許は500W+20%=600Wを超えたら1kWの表記になります)。それ以外の周波数は1kWを計測済み。IC-7600に同軸ケーブルとACC2を接続するとIC-4KLは完璧に動作しました。ALCの動作も問題ありません』と答えました。

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IC-7600とIC-4KLコントローラー

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IC-4KL本体

無線設備の共用

変更申請の流れは始めに6人が100Wの固定局を申請する、その後に無線設備を共用して変更申請で1kWの免許を受ける。

(1)JH1VVWが100W固定局を1kWに変更申請。防護指針等の書類は1局分で良い。

(2)同じ封筒でキロワットクラブ人数分の「変更申請書」とJH1VVWのはんこが押してある「設備共用同意書」を同封して申請する。

 a:山中湖村100W固定局免許番号(関A第○○○○号)が必要。

b:1アマで申請。米エクストラ級で申請すると米国の免許期間内しか許可されない。

(3)試験電波発射等はJH1VVW 1局分でよい。

(4)検査日は翌月の予定が立つ時点(月の半ばまで)の申請ならば、翌月検査になる。

(5)事務官と技官は高速バスで山中湖村に向かうとのこと。

(6)実地検査の当日は6人が現場にいなくてはなりません。

検査の順番待ちはひどくないようです。

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技官によるパワー実測中

落成検査合格 & 初運用の感想

JA1KJW:「キロワットの威力を感じるコンテストでした。特に7MHz帯でのSSBキロワットは凄いですね、はじめて7MHz帯でEUとSSBで 交信できて感動しました」 

JA1IFB:「 CQWW SSBの成果として、JA1KJW、JA1IFBが合計8時間運用して399局、5大陸(アフリカは交信できず)、51カントリー、24ゾーンで した。」 

JH1VVW:「 この設備をどれだけ使うかが今後の課題です。 アマチュア無線の楽しみ方は色々で楽しい。設備を整えて1KWの免許を取得して、これからですね」 

JA1XVY:「変更検査に しばし緊張しましたが、大変楽しい2日間でした」 

JF1GUQ:「申請書類の作成と提出、無線設備の機材購入とレイアウト、アクセサリー(SSTV/RTTYのインターフェース)の製作などを担当しました」 

と落成検査後の感想を語っていました。

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無線設備変更工事落成届

まとめ

手数料は50W以下 4,300円(2,900円)、50W以上 8,100円(5,500円)括弧の中は電子申請です。これらのいずれかで固定局を申請して免許状を得た後に1キロワットに変更して検査を受ける方法により6人が免許状を受け取りました。この後、JA1ZNG(QTCジャパンハムクラブ)と友人一人の追加申請が進行しています。ここにご紹介した事例は。山荘オーナーのご厚意により無線設備共用が実現したもので、シャックの環境も周囲にほとんど隣家がないという恵まれた環境にあり、まさに理想的なアマチュア無線局の運用が叶ったといえましょう。電波障害の対策も十分に施してありますので、コンテストなどで活発な運用が楽しめると、参加者一同、期待を膨らませているところです。

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無線局免許状(1.9MHz〜28MHz 1kW、50MHz5 100W)